第421話 頼む、私情を挟まないでくれ

 ひとまず、話が長くなるから足単位したと伝えると、スペクターが「なら、俺はもう行く」と言われてしまったため、仕方なく俺は徹夜で話をすることとなった。


 なんで? 俺、めっちゃ頑張ったのに徹夜しないといけないの? 解せぬ……。


 まぁ、眠くないし、寝れる気しないから別にいいけど。

 でも、徹夜はなぁ……はぁ。


「アクアは、ちゃっかり寝てやがるし……」

「仕方がないよ。僕みたいに、寝なくても問題ないわけじゃないんだ」

「俺も同じなんだが?」

「でも、寝れないんでしょ? なら、時間を有効活用しようよ」


 くっそ、その方がいいなと思ってしまった俺をぶん殴りたい。


 部屋に戻ると、リヒト達が目を覚ます可能性があるから、また城の屋上に逆戻り。

 アクアは、壁に寄りかかり一人、寝ている。


 スペクターは、落ちないように建てられている塀に座り、崩壊したオスクリタ海底を見回していた。


 眠そうに欠伸を零しているけど、寝なくていいのか? つーか、さっきから欠伸零し過ぎじゃないか?


「んじゃ、早速で申し訳ないけど、本題に入ろうか」


 アマリアが仕切ってくれるのはありがたい。楽でいい。

 でも、一つ気になることがあるから、それだけは確認しておこうかな。


「それより先に、この二人に関して何もツッコミがないみたいだが、特に何も思っていないという事でいいのか?」


 普通に過ごしていたが、そう言えばここには元管理者が二人もいる。

 スペクターは何も言わないし、気配も空気も変わらない。欠伸を零し、今も景色を楽しんでいる。


 …………そう言えば、さっきまで聞いていた過去話に、スペクターが出てきていたな、イルドリ王の話に。

 聞いていた時からマイペースな奴だなぁと思ってはいたけど、実物見ると「ここまで!?」と、驚いてしまう。


「…………あぁ、俺に聞いてんのか?」

「お前以外に誰がいる…………」

「こいつら」

「話の内容を全く聞いていないのだけはわかった」


 アマリアとアクアを見ているけど、おい、てめぇ。

 確かに、話を聞くだけならアマリアとアクアも出来るけど、内容自体がこの二人に向けた物じゃねぇだろうが!!


「もう一回言え」


 なんで、俺の周りの人達は、こんなにも個性が強いんだ。

 いや、カケルの仲間だから濃いのか。どっちでもいいや。


(「笑ってんじゃねぇよ、周りの奴らがお前を見ていないからって」)

『ごめん、ごめん、面白くて!』


 はぁ、いいけどさぁ。


「この二人について、何も思っていないでいいのかと聞いている」

「ない」

「なら、本題に入る」


 これ以上、詳しく聞かなくてもいいや。時間の無駄。


「今、俺達が抱えている大きな事案が二つある。一つは、カケルについて、もう一つは、管理者について」

「ほう」

「それに伴って、スペクターにも協力をお願いしたいんだが、いいか?」

「それは断ってもいいのか? 良いんだな。聞いているという事は、そういう余地を相手に与えているということだよな? なら、俺はめんどくさいし、嫌だね。死にたくなる予感がビシビシ感じる」


 …………生半可な優しさは、無用という事だな、わかったわ。


「前言撤回だ。協力しろ」

「最初から言えや、めんどくさい会話はしたくないんだ」


 また、欠伸を零してやがる。

 こいつ、腹立つな。ソフィアとは絶対に会わせてはいけないタイプだ。


「あっ、でも、一つ聞く。エトワールとスペルは参加しているのか?」

「今回の協力案件にか? それなら、まぁ、多分……? カケルに関する事ならスペルの方も協力してくれるだろうし、エトワールは俺とアマリアからお願いすれば一発で協力するだろう」


 スペクターを探してくれていたしな。

 少しは協力してくれているという事でいいだろう。


「なら、やっぱりパスだ」

「なんでだよ。あいつらは元仲間なんだろう? なんで嫌なんだよ」

「俺は、あくまでカケルに拾われた身なんだ。カケルと共に行動できるのならいいが、他の奴と動く必要はねぇし、死にたくなるくらいにめんどくさいから」


 なんだそれ。

 カケルの指示には従うが、他の奴の指示には従いたくないというわがままか?


 忠実なのはいいが、正直マジでそういうタイプはめんどくさいから勘弁してほしい。グレールもしかり。


 話していると、アマリアが手を上げた。


「でも、君はカケル=ルーナの指示も聞いているようには見えなかったけど?」

「なんでも従う訳ねぇだろうが。カケルの言っていることがすべて正しい訳じゃねぇし、間違うことだってある。なんでも従うのが仲間じゃねぇ。助け合うのが仲間じゃねぇかよ」


 アマリアの言葉に、唾を吐くようにスペクターが返した。


 ――――へぇ、おもしろ。

 たしかに、そうだよな。


 リーダーだからと言って、そいつになんでも従わなければならないわけではない。

 誰だろうと、どんな立場であろうと、間違う事はある。踏み外してしまう時がある。


 そんな時に支えてあげられるのが、仲間。

 リーダーだからと言って何でもかんでも願いを叶えてあげるのではなく、意見をぶつけ合い皆が納得できる道を共に歩む。


 そう言えば、俺のチームはいつの間にかそんな感じだったな。

 俺に素直に従う奴、そう言えばいなかった……。

 それはそれで悲しいけど、まぁ、いいや。


「それは、素敵な考えを持っているんだね」

「うるせぇよ。あぁ、恥ずかしいこと言った。今すぐに死にてぇ」

「死なないで」


 アマリアの奴、無表情だけど、どこか楽しそうにしてんな。

 まぁ、俺も楽しんでんだけど。


「仲間の在り方とかはどうでもいいが、それで、なんでスペル達が協力してくrているとお前は参加したくないんだよ。カケルを解放するには重要なんだぞ?」


 仲間の事をそう思っているのならなおの事、なぜスペル達が協力していると言った時、お前は断ったんだよ。意味が分からん……。


「簡単な話だ。俺が、あいつらを嫌いだから」

「…………本当に簡単な理由だった」

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