第420話 こんな所で会うなんて思ってもいなかったんだが?
「どこが安心するんですかぁ?」
「そうだなぁ。僕に対して企んだり、嘘を吐かないところかな。まぁ、変に気遣って、言わなければならないことを言わない時もあるから、完全に安心するわけにはいかないけど」
なんんだその理由、鳥肌が立つんだが?
というか、アマリアに限らず、めんどくさい嘘は吐かないし、意味のない企みはしないよ。何度でも言うけど、めんどくさい。
そんなことを考える時間と労力が無駄だ。
金がもらえるなら別だけど。
「それには確かに納得するところはあるかもしれませんねぇ~」
「えぇ…………」
二人の感覚が本当にわからない。
まぁ、わからなくてよさそうだし、もう無視する。
久しぶりの煙草、おいしぃなぁ~。
短くなった煙草を最後に吸い、炎魔法で燃やし尽くす。
「んじゃ、部屋に戻るか。明日も色々大変だろうし、眠れないにしろ体は休ませた方がいいだろう」
「それもそうだね。アクアも眠いでしょ?」
「眠いですぅ~」
目をごしごしと掻いて、アクアは率先して下に降りる。
次にアマリアが行こうとしたけど、なんとなく気になることがあって引き留めた。
「どうしたの?」
「今後、どうなると思う?」
聞くと、振り向いた。
煙草を口から離し、音魔法の振動で捻り潰した。
「それは、どういう意味で聞いているの?」
「そのまんまの意味、そこまで深く考えるな」
深い意味で聞いたわけじゃない。
これからの道は、険しいと言うには生易しいほどの、でこぼこな道だろうと思って聞いただけだ。
いや、でこぼこも生易しいな。
崖と山が交互に目の前に広がるような道が広がっているんだろう。
お金を眺めてゆっくりダンジョン攻略なんて言う、初期設定はなくなった。
これからは、ダンジョン攻略して金を稼ぐより、管理者優先だ。それと、カケルの封印解除。
…………カケルの封印解除からかなぁ。
カケルが仲間として行動できれば、絶対にクロヌに勝てるだろう。
イルドリ王の願いである、捕らえることもできるかもしれない。
でも、そうなるとダンジョン攻略して、目的の精霊と魔法を手に入れなければならん。管理者はやっぱり後回しだな。
そんなことを考えていると、アマリアがやっと言葉がまとまったらしく、口を開いた。
「今後のことは、正直読めないから何も言えないかな」
「まぁ、そうなるか」
まとまったんじゃなくて、いい言葉が出てこなかったらしい。
今すぐに答えられるような質問じゃなかったもんな。仕方がない。
「悪いね」
「俺の質問が悪かっただけだ、気にするな」
アマリアの隣を通り抜け、俺もアクアに続き下に降りる。
アマリアは――あ、あれ? なんで来ない?
「よっと。おーい、アマリアー」
地面に足を付け、上を見る。けど、アマリアは来ない。
声をかけるも、返事はない。
なんか、こんな時って大抵上から落ちてくるのって死体になったアマリアとかなんだよな……。
いや、そんなことあるわけがない。
だって、気配も何も感じないし、アマリアとの繋がりは残っているわけだし、何かあればわかるはず。
でも、今までの経験が嫌な予想をさせてしまう。
隣にいるアクアが俺の顔を覗き込んできた。
「な、なんだ?」
「不安そうにしているので、つい~。でも、大丈夫だと思いますよぉ~? アマリア、強いですからぁ~」
ニコニコしながらアクアが上がっていく。
な、なんだったんだ? 俺、もしかして、アクアに励まされたのか?
不思議に思っていると、後ろから気配!?
振り向くと、目の前には黒い髪から覗き見える黒い目。
闇が広がり、ずっと見ていると吸い込まれそうになる。
というか、この風貌、空気、気配。
「ゆ、ゆうぅぅぅぅれぇぇぇぇぇええええ!?!?」
『え、僕?』
「お前じゃねぇよ!!」
グラースとコントやっている場合じゃねぇんだよ!
やばいやばいやばい!! 絶対に物理攻撃効かないじゃん! 俺、除霊とかできないんだけど!?
どうすればいいの?! どうすればいいの!?!?
「知里、落ちいついて、幽霊じゃないから」
後ろからアマリアが声をかけてきた。
怪我はないみたい。それには安心だけど、なにが起きているの? わからない……。
「うっせぇなぁ……。スペルとエトワールから逃げたら、今度はうるせぇ男の元に辿り着くのかよ。俺の人生不運すぎるだろう、死にたい」
幽霊の奥から来たのは、男。
藍色の髪を後ろにまとめているけど、ガシガシと掻いているからぼさぼさ。
前髪で左目は隠れているけど、右目の水色が俺を見る。
袴を着ているけど、胸元は開いていて胸筋が丸見え。細マッチョと呼ばれる、女性が一番食いつきそうな体つきをしているな。
さらしを巻いているのは、何か理由があるのか? お腹を冷やしたくないとか?
「――――んで、なんか、俺を探していたらしいじゃねぇか、カケルの後釜くんよぉ。スペルが来る前に話せ」
「スペル…………まさか、お前がスペルとエトワールが探している、カケルの冒険者の最後の仲間、スペクターか?」
聞くと、スペクターはため息を吐きながらも、小さく頷いた。
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