第412話 協力願い

 冒険者としてセーラ村を歩いていた青年は、仲間と共にギルドに向かっていた。


「今回も簡単にダンジョンを攻略出来たな」

「そうですね! カケル様のおかげです!!」


 冒険者の中心を歩いていたのは、リーダーであるカケル=ルーナ。

 彼の言葉に返したのは、三角帽子をかぶっている銀髪女性、ブライト・エトワール。


「ふん、あんな下級モンスターしか出ないダンジョンをクリアしたところで何も嬉しくはないわ」

「くわぁ……。どうでもいいから、早く報酬貰って寝かせろよ」


 腕を組み偉そうにしているのは、占い師のようなマントとマスクを身に着けている女性、スペル。

 隣で欠伸を零し文句を言っている男性は、スペクター。


 性格がバラバラな四人は、ワイワイ話しながらギルドに向かっていた。

 そんな彼らの前に、白い翼を広げる双子が現れ行く道を封じた。


「あぁ?」


 不機嫌そうな声を出したのは、涙を拭っているスペクター。

 カケル達も立ち止まり、目の前に立つ双子、アンジュとアンジェロを見た。


「少し、時間を頂いてもいいかしら」

「話したい事があるんですよねぇ~」


 いきなりそんなことを言われても、カケル達は何が何だかわからない。

 だが、いつも予想外な出来事に冷静に対応している冒険者達だ。

 今回も、誰も取り乱す事はせず、カケルに一任した。


「……話、ねぇ~。どのような感じかだけ、教えてくれるかい?」

「貴方達は、アンヘル族という種族を聞いたことはあるかしら。今回の話は、アンヘル族の今後に関わるものなの」


 問いかけたのは、アンジュ。

 カケルは、腕を組み考えるが、知らないらしい。

 周りの人を見回すが、誰も口を開かない。


「すまない、アンヘル族といった種族は、聞いたことがない」

「そこまで地上に降りていないので、それも無理はありません」


 アンジュがアンジェロに目伏せをする。

 ここからは、アンジェロに説明を任せるらしく、後ろに下がった。


「アンヘル族は、空にフォーマメントという世界があり、そこで過ごしているのですよぉ~」

「そうなんだな。そんな、フォーマメント? で、過ごしているアンヘル族が、地上で暮す俺達にお願いとはなんだ?」

「ここで話すのは、人の目があります。どこか、個室はありませんかぁ~?」


 周り見て、アンジェロはカケルに提案する。

 今度は、カケルが後ろにいるエトワールを見た。


「エトワール、何かいい所はあるか?」

「んー、そうですねぇ~」


 三角帽子を触りながら悩んでいると、ふと、カケルの指輪に目を向けた。


「アビリティの方が沢山の情報を持っていると思いますよぉ~」

「おっ、そうか?」


 今度は、カケルの指にはめられている指輪を見る。

 だが、なぜかその時にスペルが手を上げた。


「それなら私が調べます」

「お、おう?」


 カケルの目線が逸れた。瞬間、アビリティが反応。指輪の石が光り出す。


『ここの近くでは、個室のご用意があるお店がありません。ギルドで部屋をお借りした方がよろしいかと』

「あんたに用はないの。引っ込んでいてくれないかしら」

『最初に呼ばれたのは私です。貴方が引っ込んでいてください』


 なぜか、アビリティとスペルの言い争いが始まってしまった。

 エトワールは「あちゃぁ、これでもかぁ」と、頭を抱え、カケルもため息を吐いた。


「…………時間がない。今回はギルドの部屋を借りるぞ。今回の報酬ももらわないといけないしな」

「…………はい」


 スペルは渋々と言った感じに了承。

 アビリティを睨み、後ろに下がった。


「騒がしくしてすまんな。案内する」

「こちらこそ、無理を言ってしまいすいません~。よろしくお願いしますぅ~」


 そのまま二人は、カケル達について行った。


 ※


 ギルドの受付に説明して、奥の部屋を借りたカケル達とアンジュ達。

 だが、スペクターは「めんどくさい」と言って、別行動。

 流石に一人では不安があり、スペルも仕方がないというようについて行った。


 今、部屋にいるのはエトワールとカケル、アンジュとアンジェロの四人。

 中心のテーブルを囲い、椅子に座る。


 全員が座ったことを見計らい、カケルがアンジェロを見た。


「では、詳細を話してもらおうか」

「よろしくお願いしますねぇ~」


 アンジェロは、アンヘル族という存在、今回の事件について話した。

 それで、今フォーマメントが危険な状態で、このままではアンヘル族の世界がなくなってしまう。


 せめて、王をどうにか出来ないか。

 人間ならこんな時どうするのか。それを問いかけた。


 エトワールは眉を下げ、「可哀想、だけど……」と、カケルを見る。

 流石に今、話を聞いただけではどうする事も出来ないんじゃないかと、エトワールは思っていた。


 だが、カケルは話を聞いてから無言。何も話さず、顎に手を当て考え込む。

 願いを込め、アンジェロ達がカケルを見ていると、数分後、やっと口を開いてくれた。


「わかった。まだ、どうにか出来るとは言い切れないが、まずフォーマメントを見せてはくれないか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る