第374話 新しい魔法がここで出す事になるとは思わなかった

 まさか、俺が魔力で負けたという事か?

 いや、そんな、まさか。せめて、互角にやり合ってもいいはず。何でこんな簡単に……。


「――――これが狙いかよ!!!」


 ウズルイフの本当の狙い。それは。アクアに俺を殺させる事。

 俺の魔力を奪ったのは、そもそも前座。俺が魔力を取り戻した時が勝負かよ。


「どういうことなんだカガミヤ!」

「ちっ……。ウズルイフが俺の魔力を使って大量の魔力を使い、イルドリ王と戦っていたんだ、さっきまで」


 つまり、事前にオスクリタ海底をアクアに襲わせ、俺達を戦闘へ持ち込ませ、魔力差で俺が負けるように仕向けた。


 こんな感じの筋書きだろう。

 くっそ、ここまではさすがに読んでいなかった。


「話している余裕、ありますかぁ〜?」

「ちぃ……。わぁってるよ!!」


 魔力を右手に一点集中。動きを止めた波が微かに動き始めた。

 アクアは楽し気に笑い、余裕の表情。自身の操っている波も正確に俺達の方へと向かわせた。


「くそが!! 動けよ!!!」

「――――え」


 アクアの困惑声。同時に、俺のwave waterウェイヴ・ワーターが動き出した。

 アクアの操っている波と俺の波、大きな音が響きながらぶつかる。


 水飛沫と共に強い風が吹き荒れる。

 イルドリ王…………安定し過ぎだろう。台風並みの風なのに、一切ぶれない。


 アンジュとアンジェロは吹っ飛ばされそうになっている、ついでにグラースも。

 って、いやいや、安定しているのなら、俺は魔法に集中しないと。


 少しでも気を抜けば一瞬のうちに持っていかれるぞ。


「へぇ、これは驚きましたぁ~。確か、魔力はないんじゃなかったでしたっけ?」

「まったくないわけじゃねぇよ、なめんな」

「まぁ。いいですぅ~」

「いいんかい」


 このままだと、確実に俺が押し負ける。

 早く相殺したい。


 いや、相殺したとしても、全ての水魔法を消すのは不可能だ。

 逃がしたくとも、ここは海底。水に囲まれているから、逃がすことが出来ない。


「――――チサト!!」

「は、はい!?」

「空は飛べないのか!?」

「無理ですねぇ!?」


 いきなりなに言ってんだこのアンヘル王が!!!! 手元が狂っちまうじゃねぇか!

 一瞬気が緩んで押されかけたぞ、すぐに集中力を戻して事なきを得たけど……。


「なんでいきなり飛べるかどうか聞いて来たんだよ」

「このままでは私が戦闘に参加出来ないからだ!」


 …………あ、あぁ、そういう事か。

 俺を抱えているもんな、戦闘に参加出来ないか。でも、困った。


 俺は空を飛べない。

 なにか、飛べる魔法があるだろうか。


『水魔法に一つ、飛行魔法があります』

「今すぐ教えてくれ!!」

『こちらです』


 アビリティが魔法一覧を開いて見せた。

 一つだけ文字が光っている、これか。


 今は水魔法を発動している。消して、すぐに飛行魔法を出す形になるな。

 炎魔法で相手をしなければならなくなる。


 今は魔力が俺の方が少ないし、さすがにきついが、イルドリ王が戦闘に参加できる面で考えると、そっちの方がいいか。


「飛べる魔法があるらしいな!!!」

「あぁ。だが、そっちを発動すると、アクアの攻撃をせき止めている波が消えちまうんだ。それだけじゃなくて、炎魔法しか出せなくなる」

「そうか!!! それなら発動してもらおう!!」

「…………はい」


 それならの意味は如何に……。まぁ、いいや。発動しまーす。


「《ala・water《アーラ・ワータ》!」


 発動すると、wavewaterウェイヴ・ワーターは消える。

 同時に、俺の背中には水の翼が作られた。


「離すぞ」

「お、おっす」


 ばっ、と離されっ!?

 待って待って!! 落ちる落ちる!!! どうやって翼を扱うの!?


『意識だけで出来ると思います』

「簡単に言いやがって!!!」


 くっそ!!! 鳥をイメージすればいいのか!? 鳥ぃぃぃいいい!!!!


 ――――バサッ


「ふぅぅぅう。飛べた――――あ」


 イルドリ王が見えない壁で波をせき止めている。

 余裕……ではないな、口角は上がっているけど、表情が硬い。


「へぇ。やっぱり、知里は面白いですねぇ~」

「なんで俺!? 今やり合っているのはイルドリ王なのに!?」

「知里の周りに、強い人が集まっているんですよぉ~? 知里が面白いからじゃないですかぁ~」

「今回のは絶対に違う!!」


 っ、アクアの目線が、俺達の後ろに回された?

 

「――――アンジュ!! 後ろだ!!!」


 アンジュの後ろから高波が襲い掛かろうとしている!!


「あっ――――」


 気づいた時には遅い、今から避けても間に合わない!!


flameフレイム!!」

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