第375話 普通に考えればわかる事だった

 炎の基本魔法。

 アンジュ達に迫る高波とは比べ物にならない程小さい。


「そんな魔法で――――おや?」


 放ったflameフレイムが高波に当たる。

 すると、視界を埋め尽くすほどの水しぶきが舞い上がった。


 よしっ、上手く爆発してくれた!

 と、いうか、新flameフレイムが無事に出てくれて助かった!


「ふぅ、ソフィアと修行していて良かった……」


 新の方は爆発しないものかと思ってたけど、そうでも無いんだな。


 flameフレイムより小さい物だったら包み込み、大きいものだったら爆発するようになっているのか?


 どっちにしろ、助かった。


「ありがとうございますぅ~」

「油断するな!!」


 お礼はどうでもいい! 後で金をくれ!

 それより、アクアが楽しそうに笑っているし、すぐに次が来るぞ!!


「面白いですねぇ~。なら、これはいかがでしょう!! trombe・waterトロンベ・ワーター


 イルドリ王には高波攻撃、俺達には――――水の竜巻!?

 しかも、一個、二個じゃねぇぞ!? 十以上はある。


 俺のturboflameトュルボー・フレイムで相殺は出来るか?


 いや、flameフレイムで爆発? 

 でも、数で押されている。一つ一つ相手にしていたらきりがない。


「姉さんの光の刃は使えない?」

「発動に時間がかかるのよ!!」


 そういや、特大の刃をあいつは出せるんだっけ。時間がかかる……。


「どのくらい時間がかかる?」

「い、一分あれば……」

「そんくらいなら稼げる、turboflameトュルボー・フレイム!!」


 オスクリタ海底を埋め尽くす水から炎の竜巻を出現。それだけでもう自然の摂理とか関係なくなってるけど、今はどうでもいい。

 同じ数を作り出し、せき止める!!


 ――――ドカンッ!!


 空気を震わせるほどの威力……、少しだが押されている。


 「やっぱり厳しいかぁ……あ?」


 っ、イルドリ王と目が合った。


「――――貴様相手なのなら!! 私も本気を出そう!!」


 な、なんだ?

 イルドリ王が肩に羽織っていた服を脱いだ。


「――――へっ?」


 羽織で隠していたであろう背中には、空を飛ぶための翼と、もう一つ。そこまで大きくはないが、黒い翼が現れた。


「何をする気なんです?」

「待っていれば分かるぞ!!」


 言うと、イルドリ王の黒い翼は大きくなり、白い翼と同じ大きさに。


 何をする気だ?


 …………え、待って。

 白い翼より大きくなってる。まだ、まだ大きくなるのか?


 もう、イルドリ王の身体なんて簡単に包み込めるくらい大きくなってるけど?!


「――――ちょっと、危険かもしれないですねぇ」


 え、アクアがそんなこと言うなんて……。ん? 高波を消した?


「発動してほしいけど、私が負けたら今度こそ管理者が危険だと言われましたぁ。さすがに、負けられませーん。hand・waterハンド・ワーター


 下から大量の水の手!?


 って、俺の方も油断すると押されるんだよ!! あっちもこっちも!!


「準備で出来たわよ!!」


 後ろを振り向くと、フォーマメントで見た大きな半月がアンジェロの頭上に出来上がっていた。


「放て!!」

「命令しないでちょうだい!!」


 ごめんな!?

 でも、放ってくれてありがとう!!


 俺の竜巻と共に水の竜巻をすべて切った。

 普通の水に戻り、落ちる。


 次は無数の手――あれ?


「イルドリ王、なんでもあり?」


 大きくした両翼を左右に広げ、そこから無数の羽が放たれ水の手を弾いていた。


 マジで、なんでもありじゃねぇかよ。


「へぇ、面白い、面白いね!! 本当に面白い!! これはどうかな!! spear・waterスピア・ワーター!!」


 次に作り出したのは、複数の、水の槍?

 十くらいか? アクアの周りに作られる。

 ……あっ、水の手が消えた。


 イルドリ王も翼を広げたままアクアを見据え、狙いを水の槍に定めた。


「いっけぇぇぇぇえ!!」


 アクアが大きく右手を振りかぶる。

 同時に、イルドリ王もさっきと同じように羽を飛ばし迎え撃つ――だが。


「なんだと!?」


 槍の勢いが強すぎて、羽が打ち消されちまった!


Mitrailleuseflameミトラィユーズ・フレイム


 炎のガトリング砲を発射、水の槍を弾き飛ばす。

 イルドリ王が間髪入れずに、アクアへと羽を飛ばした。


 腕で顔を覆うが、黒いローブが破れ、アクアの肌を傷つける。

 頬、額、手、腕から血が流れてんな。


 追い打ちをかけるとしようか。

 早くリヒト達の所にも行きたいし、アクアを帰らせたい。


 新flameフレイムで――……


「っ!」


 え、アクアの藍色の瞳が、俺を見た…………?


 腕の隙間から、覗くように。しかも、普通に見たのではなく、なにか。殺気とは違うモノが込められているような……。


「――――Dragon・waterダーク・ワーター


 えっ、ダーク、ワーター? それって、竜魔法……?


「うそ、うそうそうそうそうそ!!!」


 オスクリタ海底を埋め尽くす水を使い、アクアの隣に、今まで見た事がないほど大きな竜が現れた。

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