第372話 悪い予感は本当に当たらなくていいんだよ

 なんか、よくわからないが任せろと言われたので、任せる事にしました。

 俺は俺でやるべきことをしよう。


『…………』

(「グラース? どうした?」)

『うーん。もしかしたら、アンヘル族って、幽体を見る事が出来るのかもしれないなって思って。確か、アンジュとアンジェロも僕の事見れていたもんね』

「マジか…………」


 だが、ウズルイフ達には見えない。

 気を付ければ、イルドリ王とグラースを使って作戦を相手に気づかれずに立てる事が出来るんじゃないか?


 そんな事を考えていると、イルドリ王が動き出した。

 今までとは比べ物にならないほどの速さで二人に突っ込む。


「チッ!!」


 あ、あれ。

 ウズルイフの動きが、急に鈍くなってきた……?


「限界らしいな」

「そうだな……。確かに、限界だ」


 限界?

 あ、欠伸……。まさか、魔力の枯渇?


「あっ…………」


 天候が巻き戻されていく。

 徐々に風は収まり、雨は止む。曇天が晴れ、太陽が顔を覗かせた。


「アンヘル族、か。ここまで厄介なもんだったんだな。くわぁ……。ねむ」

「限界だね。なら、倒せる奴を倒してから帰ろうか」


 このまま帰ってほしかったが、そんなことはなかったらしい。

 二人が狙うのは、アルカとアンジュ達。


 三人は体力も奪われているし、クロ一人でも倒せるかもな。

 イルドリ王がそれを阻止する動きを見せる。


「させるものか!!」

「一応、今の俺でも魔法は扱えるんだぜ? 疲れるけど。──sablierサブリイェ


 砂時計が現れ、逆さに。イルドリ王の動きを完全止めた。


「…………ねっむ」

「すぐに始末してくる」

「おう」


 クロが鉄の鷲を指示を出す。

 だが、俺の存在を完全に忘れているだろう。


 ――――グワァァァァァアアアア!!!


 二人の背後に、炎の竜を出現。

 同時に振り向くが、もう遅いぞ。


 成人二人を簡単に飲み込めるほどに大きくした炎の竜。

 ウズルイフが俺を見て、苦虫を潰したような顔を浮かべた。


「――――Dragonflameダーク・フレイム


 俺の魔力は、クロに投げつけた水晶に込められていたらしい。

 割れた事で、俺は元通り、チート級の魔力を扱うことが出来る。


「あー、殺せないね、これじゃ」

「そうだな。まぁ、いいわ」


 炎の竜が食らう前に、二人は姿を一瞬のうちに消した。


「ふぅ……。何だったんだ……」


 結果的に魔力が戻ってきたから良かったが、目的はなんだ、わからん。


「チサトとやら!!! 助かったぞ!!」

「こっちも助かった、イルドリ王」


 動きを最後に封じ込められたイルドリ王だが、今は元気そうだ。見た感じ怪我もない。


 やっぱり、戦闘になるとウズルイフは簡単に倒せそうだな。

 今回は、俺の魔力をウズルイフが使っていたみたいだし。


 やっぱり、この世界では魔力量が実力を左右するんだな。改めてわかったわ。


「カガミヤ!!」

「アルカ、怪我は大丈夫か。今回の一番の被害者はお前だぞ」

「俺は大丈夫だ。カガミヤも大丈夫か?」

「問題ない」


 アンジュとアンジェロも大丈夫そうだ。

 大きな傷もなさそうだし、今回はそこまで被害はない。


 被害がないのは嬉しいんだが、それはそれで怪しい。

 他の所で大きな被害が起きているんじゃないかと勘繰ってしまう。


『チサト』

(「おっ、なんだ? ――――え? なに驚いてんだ?」)


 なんか、グラースに名前を呼ばれたから振り返ると、驚愕の表情を向けられた。

 な、なんだ?


『僕の声、聞こえるの? 見えるの?』

(「え、さっきまで普通に話していたじゃねぇかよ。なに、今更驚いてんだよ」)

『いや、さっきまでは戦闘に集中していたから考えられなかったけど……。えっと、魔力戻ったんだよね?』


 何を改めて聞いているんだ?

 魔力が戻ったから炎の竜を出す事が出来たんだろう。


(「なんで?」)

『だって、たしか魔力がなくなったことで僕を見る事が出来たんだよね? だから、魔力が戻った今、見えなくなっていてもおかしくはないかなって……』


 あぁ、そう言えば、魔力がないから見えるようになったとかいう設定だったな。


(「まぁ、変わらず見えているし、いいんじゃないか? 一度憑依されているから、繋がりが出来たのかもしれねぇしな」)

『軽いねぇ。せっかく、僕みたいな幽霊から離れられるチャンスだったのに』

(「…………あ」)

『もう遅いです~』


 うわぁ、ここで見えない振りすれば、こいつから離れる事が出来たのか。それは盲点だった。

 というか、そんな設定忘れてたって、くっそ。


「イルドリ王!!」


 俺が舌打ちを零していると、空中から一人のアンヘル族が現れた。

 そう言えば、フォーマメントは大丈夫だったのだろうか。俺達の周りは嵐で酷い有様だが。


 でも、イルドリ王の前に降りたアンヘル族も見た感じ問題なさそう。

 アンジュ達みたいに力を持っているのかな? だから、自分の力でどうにかしたとか。


 それか、俺達の周り以外の被害はなかった、とか?

 どっちでもいいか、無事なのなら。


「どうした!!!」

「地上で大きな戦闘が行われているようです。一つのが崩壊一歩手前となっていますが、いかがいたしますか」


 ――――――――海底?

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