第369話 まさかの提案に口が開いて閉まらなくなっちまった
めっちゃ筋肉質なんですが?
え? 筋肉質なんですが??
いやぁ、ノースリーブから覗く二の腕がたくましいですね?
「うちがなんで、長距離であるライフルを使っているか、わかる?」
まっすぐ俺達の前にいるアンジュとアンジェロを見て、聞いて来た。
二人は何も答えず、クロを見続ける。
「うちはね、元々接近戦の方が得意なんだよ。ただ、遠距離が出来る人がいなくてね。だから、うちに回ってきただけ」
近くにある、拳以上の大きさはある石を持ち上げる。
前に突き出したかと思うと、簡単に握りつぶした。
「一応、このくらいの石くらいだったら簡単につぶせる。人の頭くらいは簡単だね。それで、どうする? うちはやってもいいよ?」
無表情で聞いて来るクロ。
上空を見ると嵐の中、お互いの出方を探っているウズルイフとイルドリ王の姿。
イルドリ王の実力派正直わからないが、王を務めるくらいだ。
絶対に弱くはないし、ウズルイフの事は任せてもいいだろう。
クロには、三人で相手になろう。
アンジェロは、予想外な攻撃を持っていた。
アルカとアンジュも普通に強い。
クロ一人なら、三人で相手に出来るだろう。
「――――三人相手ならうち一人倒せるだろうとか、思ってる?」
「っ、どいうこうことだ」
心中を読まれた感じがせいて、思わず声が上ずってしまった。
「うちは、アクア程ではないにしろ、戦闘慣れはしているよ。処刑していたしね。だから、簡単に倒せるとは思わない方がいい」
「それを俺に言われても困るんだけど? 戦闘に参加しないし」
「それもそうだったね」
っ、くっそ。
風と雨が強くなってきた。
「――――早く終わらせないと、色々めんどくさいね」
クロが上空を見ると、急に眉を吊り上げアルカ達に目線を向けた。
「魔法が使えない冒険者は簡単に殺せる。今は、めんどくさい方から倒そうか」
確かに、今の俺は簡単に殺されるだろう。
「…………チッ」
何も出来ないのって、ここまで気持ち悪いのかよ。
いつもなら炎魔法で焼き払うのに。
魔力を込めたくても、何も感じない。
魔法を唱えても意味は無い。
何も出来ない、見ている鹿、出来ない。
くっそ、この役立たずがっ!!
『――――あの、小さい管理者だけを見ている訳にはいかないかもぉ~?』
(「なんだって――――っ!?」)
ウズルイフの近くに、二つの砂時計。
イルドリ王は音もなく動いていたらしくウズルイフに向かって飛ぶが、砂時計をひっくり返すと、元の場所に戻されている。
それでも、何か種があると思っているのか、イルドリ王は飛び続けていた。
途中、光の刃を放つが、それすらも砂時計を回し消滅。
ウズルイフは余裕の笑み、子供を相手に遊んでいるような表情だ。
「イルドリ王様~、がんばれぇ~」
「おう!!! 敵に応援を送る事ほど余裕があるのか!! 面白い!!」
さっきよりスピードが上がった。
それでもウズルイフは、余裕の笑みを消さない。
二つの砂時計を巧みに動かし、自分に攻撃が届かないようにしている。
でも、攻撃を仕掛けようとはしない。
ウズルイフの持っている時魔法は、相手の攻撃をさばくことはできるが、攻撃魔法は持っていないのか?
「――――っ、どわっ!?」
つ、土の塊が吹っ飛んできた!?
『わぁ、大丈夫?』
「死ぬ一歩手前だったわ」
『そうでもないように感じたけどねぇ~。余裕そうに避けてたよぉ~』
思わず声に出してしまったけど、今はどうでもいい。
おそらく、アルカが作ったであろう土人形の一部が俺の方へ吹っ飛んできていた。
クロの方を向くと、三人からの怒涛の攻めを余裕そうに全て交わしたり、受けて壊している。
アルカは土人形を出し、潰す動きを見せる。
隙を突き、アンジェロとアンジュが光の刃や、ハープで作り出した見えない刃で攻めていた。
それがすべて受け止められ、壊される。
しかも、魔法を使っているわけではなく、拳で。
「なにか、俺にも出来る事はないのかよ……」
とはいえ、魔力がないのは本当に困った。
何も出来ない。せめて、武器さえあれば……。
『…………ねぇ、あの時魔法、チート過ぎない? 魔力沢山使いそうなのに、なんであんなに長く出し続ける事が出来るんだろう』
グラースが上を向きながらそんなことを呟いている。
確かに、それも不思議だ。
ウズルイフの魔力は、そこまで多いわけではないはず。
なのに、さっき大きな砂時計を出し嵐が起きる時間まで早送り。からの、中くらいの砂時計を二つ出し、自在に操りイルドリ王の攻撃を全て巻き戻している。
絶対に、ウズルイフの魔力だけでは不可能だろう。
何か細工があるはずだ。
「どんな細工をしてやがる……」
ここからでは嵐で視界も悪いし、何もわからない。
近くまで行くことが出来ればいいのに……。
『ねぇ、僕が近くまで行って確認してこようか?』
――――――――え?
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