第368話 隠していた理由がそれか?

「むっ!! これはなんだ!!」

「見ればわかるだろう? 砂時計だ」

「それは見ればわかるぞ!! どのような効果があるのかを聞いている!!」

「見てからのお楽しみだ」


 ウズルイフが言うと、砂時計を逆さになる。

 すると、片方に溜まっていた砂が、もう片方に落ち始めた。


 あの魔法は、一体…………。


 ――――ゴロゴロ


「な、なんだ?」


 い、いきなり雲行きが怪しく……というか、はぃ!?


「な、何だあれ。なぁ、カガミヤ!! あ、あれ、雲が……」

「あぁ、あれは普通の雲じゃない。あんな早く動く雲なんて、自然ではありえないだろう」


 上を向くと、白い雲が横に自然の力ではありえない速さで流れ始めた。


 な、なんだよ、あれ……。

 風も強くなってきたし、雷まで落ち始めた。


 辺りは暗くなり――――雨まで!?


「――――そう言えば、近々台風が来ると耳にしていたな」

「天空に住んでいるだけあって、天候は意識しているらしいなぁ」


 台風? まさか、台風を引き起こしたという事か?

 いや、それにしてはイルドリ王の言い方がおかしい。


 近々台風が来る――ウズルイフの魔法は、時。

 まさか、時を進めて台風を今日、起こさせたのか?


 今日、フォーマメントを選んだのは、この台風を利用するためか!!

 だが、こんな大規模な魔法。ウズルイフの魔力で出せるのか?


 ウズルイフの魔力はそこまで多くはなかったはず。

 それなのに、ここまで大きな魔法をこんな序盤で放つなんて………。


「面白い魔法を持っているらしいな!!」

「王様に褒められるなんてなぁ~。嬉しい限りだ」


 イルドリ王は、ウズルイフの頭上にある砂時計を見た。


「それを壊せば、簡単に時間を戻す事が出来るんじゃないか?!!!」

「そうなんだよなぁ。この魔法、強力なのはいいが、弱点が晒されるからすぐに壊されんだよ。本当に、残念な魔法だぞ」


 …………わざとらしいなぁ。

 ククッと、喉を鳴らし俺達をあざ笑う。


「なら、壊させてもらおうか!!」

「やってみろやぁ」


 イルドリ王は、右手に光の刃を作り砂時計を見据えた。


「なぁ、大丈夫なのか? 何か企んでいるような気がするんだが……」


 腹部を抑えながら、アルカが不安そうに聞いて来た。

 そんな事、俺に聞かれてもなぁ。


「さぁな。だが、イルドリ王は、アンヘル族の王。何か仕掛けられたとしても、すぐ対処するだろ」


 それより、ウズルイフの魔法。

 絶対に何かトリックがあるはず。


 何か、トリックを見つける事が出来れば、絶対に打開策は生まれる。


「ねぇ、うちの事、忘れてない?」


 後ろから声!?

 アルカと振り向くと、向けられているのは銃口。


 しまった、ウズルイフに気を取られ過ぎた!!


 ――――パンッ!!


 発砲音が響いたと同時に、アルカが剣を振りかざす。

 俺に放たれた弾を切った。


「――――さすがに驚いた。あんた、そこまでの動き出来たっけ? セーラ村で会った時とはまるっきり違うんだけど」

「俺だって、成長していないわけじゃねぇんだよ!! カガミヤと一緒にダンジョンも攻略して来たし、管理者とも戦ってきた。それに、修行だって積み重ねている。前までの俺と一緒にするな!!」


 剣を構え、俺の前に立つアルカ。

 ここで何も出来ないのは俺のみ。なんか、悲しい。


「そうなんだ。確かに、前までとは違うみたいだね。でも、だから、なに? うちと互角に殺り合うなんて無理だと思うけど?」

「そんなの。やってみないとわからないだろうが!」

「わかる。あんたは弱い。うちの方が、強い」


 クロは、距離がそこまで離れていないのにライフルを構える。

 アルカは、発砲される前に地面を蹴り駆けだした。


 すぐに距離を詰める。でも、クロは焦らない。

 アルカの剣が届く距離まで近付くと、大きく振り上げクロに向けて叩き落した。


 ――――ガキンッ!!


「くっ!!」

「遠距離射撃が得意な人は、接近戦は苦手だとでも思ってた? 残念、うちはどっちも出来る口だよ」


 ライフルで受け止めたクロは、小さな体でアルカの一撃を受け止め、腕だけで押し返した。


 跳ね返されたアルカだったが、地面に足を突き姿勢を正す。

 剣を構え直し、クロを見据えた。


 押し返したクロは、立ちあがりライフルを地面に落とした。


「接近戦の方が得意というのなら、うちも接近戦に切り替えようかな」


 言うと、クロは何を思ったのか。

 今まで頑なに脱ごうとしなかった黒いローブを握る。瞬間、バッと剥いだ。


 すると現れたのは――――筋肉質な体!?

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