第364話 何が起きるのかわからないのはいつもの事だが怖いものは怖い

 二人の門番が扉を塞ぐように槍をクロスにして、俺達の進行を妨げている。


「…………」


 どうやって進むつもりだ? 

 まさか、このような事を予期して予め許可を取っていたとかか?


「許可はとっていないですよ~」


 とってないんかい。


「なら、中に入れる事は出来ない」


 やっぱり、そうだよな。

 まさか、力強くで中に入ろうとか思ってないよな?


 なぜか、俺の周りって、頭脳派に見えて力技でやろうとする奴らが多いし、やりかねない。


「なら、これならどうでしょうか~」


 言いながらアンジュは、肩越しに俺の方を振り向いた?


 え、ものすごく嫌な予感。


「後ろにいる方、名前がカガミヤチサトというらしいのですがぁ~。なんと、フォーマメントの王様を救った英雄、カケル=ルーナの後継者らしいんですよぉ~」


 待て待て待て????

 後継者? え、後継者?


 俺、後継者になったつもりないぞ???


 驚きすぎて何も言えないでいると、門番が俺の方に歩いてきた。


 待って、お願いだから待って!!

 俺、今魔法が使えないから反撃とか何も出来ないよ!?


 魔法が使えないのがばれたら絶対に死刑になるじゃん!! 余計なこと言ってんじゃねぇよ!!


「おい」

「はい…………」


 圧が、圧がこわっ…………くはないな。

 目線同じだし、見下ろされているわけでもないし。


 やっぱり、管理者との戦いを経験してきたのは、しっかり俺の経験となっているなぁ。


「本当にお前が、あのカケル=ルーナ様の後継者なのか?」


 顔を近づけてくる、くっさい。

 なんか、鼻息も荒いし、気持ち悪い。


 頷きも否定もしない俺がうざかったのか、門番は鼻を鳴らし顔を離した。


 やっと解放される、そう思いきやそんなことなかった。

 何故か手に持っていた槍を振り上げた……え?


「我々の王を救った英雄の後継者なのなら、これくらい簡単に避けられるよなぁ?」

「お約束かよ」


 大きく振り上げた槍を、俺めがけて振りかざす。でも、普通に遅い。


 体を横にし、一歩隣に移動。

 わざと、ギリギリ回避してみた。


 ドカンッと、石畳を割るほどの威力。

 俺が避けた事が予想外だったのか、目を大きく開き凝視。


 悔しそうに歯を食いしばり、槍をゆっくりと上げた。


「ほぉ~。これくらいは簡単に避けるらしいな」

「まぁな」


「なら」と、次は槍を横にし、左側に寄せた。

 薙ぎ払う構えだな。


「これならどうだ!」


 予想通り、槍を横一線に薙ぎ払う。


 今度は横に避ける訳にはいかないから、後ろに跳び回避。

 地面に足をつけ、再度門番を見ると、怒りで体を震わせていた。


 うわお、顔真っ赤、目も血走っててこっわ。


 ────って、なんで。

 俺、ただ避けただけなのに、なぜここまで怒られないといけないんだよ。

 避けないと俺、死ぬじゃん。


 なんて声をかければいいのか悩んでいると、アンジュが助け舟を出してくれた。


「これでわかった? 君の攻撃を魔法すら使わず、簡単に回避しているんだよ? カケル=ルーナ様の後継者と言っても過言ではないでしょ?」


 いやいや、何を言っているんだよ、過言だよ。

 これくらい誰でも避けられる、アルカですら避けられるぞ。


 なんか、褒められている気しないし、嬉しくない。


「王様を救ったカケル様の後継者を、これ以上乱暴に扱ってもよろしいのかしら」

「グッ…………」


 門番がアンジェロからの言葉に苦い顔を浮かべた。


 まさか、本当に今ので俺が後継者だと思ったわけじゃないよな?


「…………」


 扉の前で立ち止まっていた門番と、俺に槍を振りかざしてきた門番が顔を合わせ頷き合う。


 ま、まさか……。


「………通るのを許そう」

「ありがとうございますぅ~」


 アンジュがニコニコ顔で手招きして来た。


 …………フォーマメント、緩すぎない?


 ※


 中に入ると、王宮だった。

 いや、王宮なのは見た目からしてわかってはいたけど。


「ゴージャスだなぁ〜」

「すごいなぁ。オスクリタ海底の城もすごかったけど、色が違うだけでここまで変わるんだな!!」


 アルカがまたしても大興奮。

 まぁ、気持ちはわからなくもない。


 デザインだけで言うなら、オスクリタ海底の城内と同じ。

 ただ、壁はクリーム、装飾は赤。


 色が変わるだけで、めっちゃゴージャスに感じるんだな。

 色って、大事、覚えた。


 廊下には、メイドが優雅にワゴンを運んだり、鎧を着たアンヘル族が壁側を歩いている。


 前を歩く二人は表情を変えずに、すれ違う人に礼をし進んでいた。


 これから行く場所って、やっぱりアンヘル族の王の元だよな?


 どんな奴だろう。

 というか、王…………。王って、皇子の父親だよな?


 破天荒クラウド君の、父親……。


 何が待っているのかわからんくて、本当に怖いな……。

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