第361話 俺だって好きで不運体質になったわけじゃないんだ!

「結局、この世界を平等にしたいというのがクロヌの想い。という形でいいのか?」

「そうだね。僕が軽く聞いて、僕なりの解釈をした結果だけど。でも、間違えていないと思うよ、ウズルイフからも似たような話しは聞いているし」


 ウズルイフからの話を聞いて、ものすごく不信感がわいたぞ。

 本当に大丈夫か、その情報。


「不安そうだね」

「ウズルイフの名前が出た瞬間、一気に信憑性がなくなったわ」

「安心しなよ。クロヌに関してだったら、ウズルイフは絶対に嘘を吐かないから」

「そう、なのか? そこは本当に信じてもいいのか?」

「何百年の付き合いだと思っているのさ、関わっていないとしてもわかるものはあるよ」


 あぁ、そうだった。

 こいつは、この見た目子供で数百年生きている化け物だったわ。

 本当に、視覚情報に騙される。


「知りたくない所が見えてきたり、知りたくないことを耳にしたり。色々な数百年だったよ」


 口調や声色は変わらないのに、空気感だけが変わった。

 なんて言えばいいんだろうか。悲しんでいる訳じゃないし、怒っている訳でもない。


 どんな感情を持って話しているんだ?


「まぁ、そんな感じ。あと話せるのは、ウズルイフについてかな。クロヌについては正直、何が正しくて、何が間違っているのかわからないんだよね。間違えた情報を言うと混乱を招くし、控えさせてほしい」

「わかった。なら、ウズルイフの情報をくれ。正直、そっちもものすごく助かるからな」


 アマリアが頷き、話しだっ――……


 ――――バタンッ!!


「しゃべるな!!!」


 アマリアの言葉を遮るように、扉が勢いよく開かれた。

 そこに立っていたのは、調べ物に行っていたはずのソフィア。


 な、なんか、ものすごく焦ってる。

 あんなに焦ったソフィア、今まで見た事がない……。どうしたんだ?


「話そうとするな」

「な、なんでだよ、ソフィア……」


 ソフィアが戻ってきたことで、アンキが立ち上がり隣まで移動した。


「ソフィアさん、調べ物は終わったんすか?」

「大体な。魔導書の方はまだ分からないこともあるが、それは使って行くうちにわかるだろう。それより、お前だ、黒髪」


 俺の名前、もしかして知らないのか?

 いや、今は名前はどうでもいいか。


「なんだよ……」

「お前がかけられた魔法。それは、呪いだ。そして、その呪いをかけたのは、アンヘル族だ」


 え、アンヘル族?

 なんで、アンヘル族?


「どこからそのアンヘル族という単語が出てきたの」

「ここから出てきた」


 言いながら隣に逸れたソフィアの後ろから、二人のアンヘル族が久しぶりに現れた。


「おー、久しぶりに見たな、アンジュにアンジェロ。今までどこで何をしていた?」


 ムスッと唇を尖らせているアンジェロと、ニコニコと笑みを浮かべているアンジュ。


 二人に問いかけると、アンジュが部屋の中に入り、俺の前まで移動して来た。


「オスクリタ海底を見回っていたんだよぉ~」

「ずっとか?」

「ずっとぉ~」


 …………掴めないなぁ、こいつ。

 まぁ、こいつらが今まで何をしていたかは、正直どうでもいい。


 なんで、こいつらとソフィアが出会ったんだ?


「色々説明をする。その前に、バラバラ野郎」


 最初、アマリアは自分が呼ばれていると気づかず、視線を送られ目を丸くしていた。


「えっと、僕の事かな」

「そうだ。これからは管理者について話すのはやめておけ」

「なんで?」

「黒髪が死ぬぞ」


 ――――――――はぃ?


 この場にいる全員の視線が俺に集まる。

 見んな見んな、怖いって。


「えっと、それはどういうことだ?」


 聞くと、俺の前まで来たアンジュが顔を寄せっ――――ちっかい!!!


「面白い呪いをかけられたみたいだねぇ~。魔力を吸い取られただけではなかったんだねぇ〜」


 面白くねぇーよ!!

 つーか、呪い? 呪いって、なんだよ。


「呪いというのも、また言い回しが難しいが……。黒髪にかけられた魔法を解除しなければ、迂闊に管理者についてはなせん」

「なんでだ?」

「その魔法は、調べても出てこず、人からも聞いたことがない特殊なもの。詳細は知らんが、今わかってんのは、口止めの魔法だということだ」


 口止め、魔法? 

 …………まさか。


「管理者に関する情報の中に、黒髪を殺すことが出来る、言わば起爆スイッチがあるはずだ。そのための、口止め魔法」

「口止めするためにそこまでするか?!」

「それくらい、知られたくねぇーんだろう」


 まぁ、そうだよな。

 そんな魔法が存在するなんて思わなかったぞ……。これは、本当に参った。 


「俺って、どこまで不運なんだよ……」

「付き合わされている僕達の身にもなってほしいよ」


 一番の被害者の前でよくそんな事が言えるな、アマリア君よ。

 不運体質である俺自身の気持ちも少しは考えやがれ、この野郎。

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