守護霊?

第350話 ここでまさかの幽霊体験とか聞いていない

 星屑の図書館での出来事を話すと、今度はリヒトが憤慨する。


 さっきから「どうしてそんなに女性に好かれるんですか!」と、もう何も隠さずに言ってくる。


 俺は、言いたい。女性に好かれてなどいないと。

 男性の比率の方が高いだろうと。


 自分が嫌だと思うところが目につくのは仕方がない。けれど、しっかりと周りの比率を見てくれ。


 俺は、女性に好かれていない。

 ところが、雑な扱いをされている。


 まぁ、それを今言ったところで意味は無いからリヒトはスルー。

「へぇ」と、楽し気にしているアマリアの感想を聞こうではないか。


「竜魔法について、何か聞けるかもしれないね」

「アマリアは竜魔法について知りたかったんだったな」


 やっぱり、話さなければ良かった。

 もう、この後の展開が予想出来るもん。


「それじゃ、星屑の図書館に行こうか。約束は、守らないとね」


 …………アマリアが表情豊かになって嬉しいよ。

 だが、その笑顔は他に取っとけや。


 ※


 結局、俺はアマリアの圧に負け、星屑の図書館にいる。


 アルカとリヒトもついて来た。

 始終、リヒトは怒っているけど、そんな怒られても困るだけだからスルーを継続。


 それに、俺の場合は、俺自身じゃなくて、俺が持っているチート魔力や魔法がモテているだけだ。


 俺自身に興味を持っている奴なんていないのだから、そこまで怒るなよ。


「それじゃ、中に入ればいいのかな」

「そうだな。誰かに声をかければ、今どこにいるのかわかるだろう。もし、帰っていたら諦めるぞ」

「それを望んでいるのはわかった」


 アマリアはテチテチと歩き、中に入っていく。

 浮く時も魔力を少しは使うらしく、ロゼ姫の事も考えて歩いているらしい。


 それを聞いた俺は苦笑い。

 なんで俺にはそういう気遣いをしてくれなかったんだよ。


 なんか、本当に悲しいのだが? 

 みんな、俺の事嫌いなんじゃないか?


 いや、嫌われてはいないはず。

 じゃなかったら、今までの心配が嘘になるもんな。


 俺は、お前らの心配してくれた時の言葉と表情を信じるぞ。


 アマリアの後ろをついて行くけど、人はいない。

 閉館はしていないはずなのに、人の気配すら感じない。


 アマリアも不思議に思っているらしく、周りを見て首を傾げている。


「人の気配、ないね。まるで、別空間に飛ばされたみたい」

「怖い事を言うな。今だったら、そんな現実味のないことを言われても信じるぞ」

「確かにね。でも、今のは本当に冗談だよ。魔力は感じていないから巻き込まれてはいない。あともう少しで閉館だから、人がいないだけでしょ」


 閉館の時間、近かったんだ。


「…………あ」


 二階から人影。

 誰かいたらしいな、誰だろう。


 待っていると、現れたのは一人の男性。


 グレールに雰囲気が似ている。

 静かで、でもどこか冷たい空気だな。


 というか、本当にグレールに似ている。

 見た目も、瞳の色、髪質も。


 違うのは、服装だけ。

 星屑図書館の制服なのか。海をモチーフにしたジャケットに、スキニーズボン。革靴を履いている。


 空気が澄んでいて、近寄りがたい。


 俺達が動けないでいると、いきなり笑みを浮かべた。

 こっちに、近付いて来る。


『――――初めまして。僕の名前はグラース』


 グラース。

 似てる、名前まで……。


「────なぁ、お前、グレールを知っているか?」


 聞くと、ニッコリと笑って小さく頷いた。

 知り合いということか、兄弟……の、可能性があるな。


『グレールは、僕の兄さんだよ』


 やっぱり、兄弟でいいのか。

 なら、なんでこんな所にいるんだ? 普通にグレールと共に城で過ごせばいいのに。


「なぁ――――ん?」


 肩に手を置かれた。

 振り向くと、アルカが顔面蒼白で俺を見上げている。


 ど、どうしたんだ?

 なんで、そんなに怖がっている?


 しかも、俺の肩に置いている手も、震えているし。

 何か怖い経験でもしたか?


「おい、どうした」


 聞いてもアルカは口を開かない。

 気まずそうに顔を逸らし、アマリアを見た。


 視線を向けられたアマリアは、躊躇していたが、すぐに諦め口を開いた。


「…………ねぇ、知里」

「な、なに?」

「君、さっきから誰と話しているの?」


 ――――――――え。

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