第344話 どこから何が襲ってくるのかわからんな

「なぜお前が、こんな所にいる」

「い、いや、それはこっちの台詞なんだけど、ソフィア。なんでお前ら、ここにいる。アンキも…………」


 なんか、影から人の気配を感じたから、反射的に発砲したらしいソフィアが姿を現した。


 反射で発砲するなよ、俺が咄嗟に避けなければ危なかったぞ。


「気配を感じて追いかけてきただけだ」

「気配?」

「邪悪な気配。銀髪野郎と似ていた」

「銀髪野郎?」


 誰だ、こいつの言う銀髪野郎。


「アクアの事っすよ」

「え、アクアに似た気配?」


 それって、また管理者が来ているって事か?

 だが、さすがにこんな連続で大きく動くことって……。


 アクアがまだ残っているということか?

 わっかんねぇ…………。


「こっちでなにか見なかったか。それか、感じなかったか」

「足を掴まれた以外には特になかったが、それが関係あったりすんのかな」

「足を掴まれた?」


 ソフィアにさっきの出来事を話すと、眉間に皺を刻んじまった。


「それは、妙だな」

「あぁ、いみがわからん」

「何か足に仕掛けられてたりしないか? 布石を打たれている可能性がある」


 あー、確かに。

 前回、ウズルイフに魔法石を埋め込まれた時があったな。


 足を見てみるけど、特に変化はない。

 痛みもなかったし、掴まれた以外に特段にもない。


 手の跡が付いている訳でもないし、何だろうか。


「特に、何もないか?」

「あぁ、何も感じない」


 ソフィアが腕を組み俺の足元を見る。

 そんなに見られても、特に変化があるわけじゃないぞ。


「…………見えない布石を打たれている可能性があるな」

「そうなのか?」

「意味もなく、誰かがお前の足を掴んだとは考えにくいからな」


 そりゃ、そうだろうけど。


「アンキ、お前のナイフを貸せ」

「はいっす」


 何の疑いもなくナイフを渡すアンキ。

 え、なに。ソフィアがナイフを持つのって、なんとなく怖いんだけど。


「足、痛いだろうが我慢しろよ」

「え?」


 え、え?

 ナイフを、足首に添えられ――――


 ――――シュッ


「いってぇぇぇぇぇええええ!!!!!!」


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「血も、特に変化はないか。一応これはもらって行くぞ。体内に何か入れ込まれていた場合、血があれば大抵わかる」

「ふざけんな、本当に、ふざけんな…………」


 足首にナイフを添えられた直後、鋭い痛みが走った。

 深く切られて、血が流れ出る。


 それを瓶に入れ、ソフィアは回収。

 流れる血は無視。


「おい、痛いんだが? しかも、深く切られ過ぎて歩けないんだが? 動くと痛いんだが?」

「ピンク髪にでも治してもらえ、じゃーな」


 そのままソフィアはいなくなる。

 え、放置? 歩けないと言っているんだが?


 え、ガチで放置なの? え、えぇ……。


 アンキも哀れみの目を向けながら「ま、またっす~」と居なくなりやがった。

 ど、どうすればいいんだよ。


 唖然としていると、横のドアが開かれた。


「あの、なんか、大きな声が聞こえた気がしたんですが、どうかいたしましたか?」

「通り魔に襲われた」

「え、それって…………あ。足、酷い怪我じゃないですか! 今すぐ治します!」


 言いながらアシャーが俺の足首に手を添え、光を放つ。

 ほえぇ、こいつもアシスト魔法を使えるのか。

 色が緑だから、植物魔法あたりか?


 あっ、よく見ると、今は私服になっている。

 白いワイシャツに、海をモチーフにしたスカート。

 フリルの着いた袖が、アシャーの動きに合わせ揺れる。


 緑色の光が俺の怪我した部分を照らす。

 かゆくなってくるなぁ。


「――――んっ」

「どうしましたか?」

「い、いや…………」


 なんか、痺れるような感覚が…………。


「ちょっと、待ってくれないか」

「え、は、はい」


 治すのを止める。

 止血が出来た程度。まだ完全に塞がっていないから、今無理に歩こうとすれば傷が開きそう。


 だが、少し気になる感覚だったんだよな。

 痺れるような、電気が走ったような感覚。


 ――――やっぱり、何か布石を打たれている。

 そう、確信できた。


 でも、魔法石ではなさそう。

 何を仕掛けられた……。


 気持ち悪い。

 何を仕掛けられたのかわからないのが、ここまで気持ち悪いなんて……。


「カガミヤさん!! カガミヤさんはどこですか!?」


 表通りから俺を呼ぶ声。

 今のは、リヒトか?


「早く治してくれ!」

「え、は、はい!」


 すぐに治してもらい、表に出る。

 汗を流し必死に俺を探しているリヒトを見つけた。


「リヒト、どうした」

「っ、カガミヤさん! 大変です!! アマリア様が!!」


 ――――え、アマリア?

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