第342話 まさか、そんなすごいものが隠されていたなんて。俺よりチートじゃん。
「管理者を、簡単に?」
「そう。それくらい、リヒトには未知な力が秘められている」
いや、いやいや、いやいやいや。
え、嘘だろ? そこまで?
隣で聞いていたリヒトも驚きのあまり真っ白になっているぞ。
…………本当に、真っ白。
頭の中が真っ白なんじゃなくて、体が真っ白になってる。
人間、頭の処理が追い付かなくなると体まで真っ白になるんだな、物理的に。
リヒトを見ていると冷静になったわ。
「えっと、リヒトが凄いのはわかったが、魔力を均等ってなんだ?」
「魔力を均等じゃなくて、属性を均等ね」
あまり大きな違いないじゃねぇかよ、あえてつっこんでじゃねぇよ。
「今のリヒトは、属性がぐちゃぐちゃな状態なの。体の中で全ての属性がぐちゃぐちゃに混ざり合っている感じ。だけど、それを均等に振り分ける事が出来れば、属性基本魔法を出せるかもしれないんだよね」
なーるほど……?
「それはつまり、相手の弱点魔法を自由に放てるようになるっていう解釈でいいのか?」
「うん、そうだよ。基本魔法は威力が弱いからそこまでダメージを与えられないかもだけど、弱点を突けるだけでも有利になる。ただ、少し困ったことがあってね」
「困ったこと?」
アマリアが眉を下げ、まだ真っ白になっているリヒトを見た。
「リヒトはまだ年齢が若すぎる。無理させると、簡単に体を壊してしまう可能性があるんだ」
「さっきも言っていたな。大きな魔力、属性に耐えられるほどの身体にまだ成長していないんだろう?」
「そういうこと。だから、どこまですればいいのか、いまいちわからないんだよ」
体を壊したら本末転倒だしな。
確かに、それは迷うか。
「そんで、今は均等にすることを重点に置いているって事か。それなら体を壊すかもしれないという懸念は除外されるもんな」
「そういう事。均等にするだけだから、体への負担は少ないはず。ただ、そこから使いこなすとなると、また別の話なんだけどね。今はこれしか出来ない」
へぇ、そこまで考えているんだな。
でも、リヒトが言っていた話と少し違う気がするんだが、それは俺の記憶違いだろうか。
「…………何か、言いたげに僕を見ているね。なに」
「いや、リヒトは確か、アシスト魔法を身に付けたいとかなんとか言っていたような気がするんだが、それはどうなったんだ?」
質問すると、アマリアは「あぁ」と、なにか思い出したかのような声を出した。
「確かに、一番にそれを相談されたね」
「なら、今の修行がアシスト魔法に繋がっているということか? 属性を均等にすることが」
「まぁ、これが一番の悩みの種ではあるんだけど。最終的には繋がっているよ」
え、一番の悩み? それは一体、何のこと?
「均等にすることによって、魔法の幅が広がり、アシスト魔法を身に着けやすくなるんだよ。アシスト魔法は、修行事態で誰でも身に付けられる魔法だからね。精度はさすがに才能とかあるし、スペル位には確実になれないけど」
スペルは、世界一の占い師なんだもんな。
アマリアがそこまで言うって事は、話の流れ的に、才能がスペルを作り上げたんだな。
「一般的なアシスト魔法ならリヒトでも身につけられるよ。ただ、さっきから言っているように、まだ若い。どこまで体が莫大な属性に耐えられるか未知数。少しづつ負荷を与え、限度を知る必要があるんだよ。アシスト魔法って、複合魔法でもあるからね」
「複合魔法?」
「自分の中にある魔法を組み合わせる事を複合魔法というの。アシスト魔法は、基本魔法と、もう一つの魔法で作り出す事が出来る。属性によっては無理の場合もあるけどね」
へぇ、そうなんだ。
「属性によって無理なのって?」
「攻撃特化型の炎属性、地属性の者は、アシスト魔法は扱う事が出来ない。一番アシスト魔法を簡単に出す事が出来るのは、確か水属性のはずだよ」
魔法にはそんなもんもあるんだな、知らんかったわ。
なら、俺も頑張ればアシスト魔法を出す事が出来るのか。
今はそんな余裕がないからしないけど。
「リヒトは、複合魔法を何通りも出来る属性を持っているから、もっと強くさせてあげたい。けど――……」
「わかった。それで、限度を知るんだろう?」
「うん」
それは、アマリアの立場上、骨のいる相手だな。
「アマリアも大変なんだな」
「大変に見えるかい?」
「え?」
横に立つアマリアを見てみると――――楽しそうで何より。
リヒト、お前はもしかしたら、一番相手にしてはいけない人物を修行相手にしてしまったかもしれないな。
見てみろ、口角が上がって、目が怪しく歪んでいるこの顔を。
俺なら、絶対にアマリアの修行は受けたくない。
こんな所にいても俺にとばっちりが来るかもしれないし、もうそろそろ退散するかな。
「――――あっ、ちょっと待って」
「え、なに?」
やっべ、捕まっちまった。
なんだろう、何を言い出すだろう。
「もし時間があれば、星屑の図書館で、竜魔法について調べてほしんだ。僕が個人的に興味があるというのも理由の一つだけど、多分、君とアルカにも関係のある話だから」
アルカにも関係あるかは、現段階ではわからんだろう。
まぁ、俺には確かに関係あるから調べに行くけどさ。
手を振りわかったと合図を送ると、アマリアは目を離し真っ白になって固まっているリヒトにフヨフヨと近づいて行った。
頬をペチペチと叩き意識を取り戻させる。
ここからは、またさっきの修行の続きになるだろうな。
頑張れよー、若造よ。
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