第341話 隠れた才能が怖すぎた件

 アマリアの気配に集中していると、城の裏に辿り着いた。


 城の裏って確か、俺が最大火力をグレールに見せた時に使った、透明の筒がある所だよな。


 まさか、それを使っていたりするのかな。

 それとも、目につかない広い場所を求めてそこにしたのか。


 よくわからんけど、アマリアの事だし、無駄な事はしないだろう。


 そんな事を考えながら歩いていると、魔力を感じ始めた。

 でも、戦闘を行っている気配はない。


 アシスト魔法を身に着けているんだっけ?

 何をしているんだろう。


「――――おっ」


 見えた見えた。んー?


 リヒトが手に持っているのって、白い花の入った鉢……だよ、な?

 淡い光が放たれ、手元を照らしている。


 近くには、アマリアがバインダーを持って立っている。

 正確に言えば、浮いている、だけど。


「――――あれ?」

「? どうしましたか、アマリア様――――あ」


 二人が俺に気づいた。


「お、お疲れ様です、カガミヤさん。どうしたんですか?」

「今日は早めに修行が終わったから見に来たんだ」

「え、気になって来てくれたんですか!」

「まぁな。さっき、アルカの方も見に行ったんだが、頑張ってたぞ――――どうした?」


 なんか、俺がアルカの話を出すと、リヒトが落ちこんじまった。

 さっき、一瞬テンション上がったように見えたのに、今の一瞬で何があった。


 おっ、ふよふよとアマリアが寄ってきた。


「ソフィアが早めに修行を終らせるなんて考えにくいけど、体調悪かったりするの」


 さっきも同じ質問されたな。

 そう思うのも無理はないからいいけど。


「途中、予期もせず俺が気絶させられたらしい。だから、今日はこれで終わり」

「めっちゃ他人事のように言うじゃん。まぁ、とりあえず、わかった」


「わかんないけど」と、最後に付けたすな。

 まぁ、これ以上質問されてもめんどくせぇから、それこそ、まぁ、いいんだけどな。


「それより、お前らは何をしていたんだ?」

「あぁ、魔力の属性を均等にしようと思ってね。今は、整え中だよ」

「…………魔力の属性? 均等? 整え中? ど、どういうことだ?」


 当たり前のように言われたが、よくわからん。


 いや、魔力はもちろん知っている、属性もわかる。それを、均等?

 リヒトの魔力はどうなっているんだ?


「リヒトの魔力、少し調べてみたんだよね」

「そんなこと出来るのか?」

「管理者特権」

「深くは聞くなと、わかった」


 なんか、やってはいけない方法で調べたらしい。

 これ以上は聞かないでおこう。


「それでなんだけど。リヒト、意味が分からない魔力を持っていてね。ものすごく面白いの」

「…………え?」


 アマリアが、あの、アマリアが……。

 つ、常に表情筋が死んでいるあのアマリアが、わら、ってる?


 リヒトを見ると、いまだ落ち込んでいる。

 本当にあの一瞬で何があったんだよ。


「面白いって、何が面白いんだ」

「それはね」


 あ、表情が一瞬にして戻った。

 話すのは、笑いながらだと無理らしい。


「リヒトの基本属性がわからなかったんだよね」

「え、水じゃないのか? たしか、水属性のシールド持っていたはずだぞ。なぁ、リヒト」


 呼ぶと、やっと立ち直ってくれたらしく「はい」と頷いた。


「うん。水属性が少し、他の属性より抜けていたね。でも、それだけじゃないんだよ」

「それだけじゃない?」

「他にも属性を感知した。炎、風、植物、鋼、などなど」


 え、そんなに属性を持っているの?

 そんな事あり得るのか? だって、確か一人の身体には一つの属性が一般的なんじゃなかったか?


 俺は、勇者であるカケルの属性を引き継いでいるから二つ持っているだけで。


「だから、面白いんだよね。それと、これで一つ分かったことがあるんだ」

「なんだ?」

「リヒトが基本属性魔法を放てない理由」


 あぁ、そういえば、リヒトは基本属性魔法を放つことが出来ないんだっけ。


 …………俺も、わかったかも。


「沢山属性があり過ぎてって感じか? 切り分けられていないから、放てない」

「そういう事。それに、リヒト自身、まだまだ若い。体が持っている魔力と属性に見合ってないから、壊れないようにセーブをしているんだと思うんだよね。無意識に」


 リヒトは、確かにまだまだ若いもんなぁ。


「ちなみに、セーブが外れるとどうなるんだ?」

「魔力の暴走、自身の体を蝕みながらも魔法は発動し続ける。強制睡眠も来ないから、体が完全に壊れるまで止まらない破壊神となるかな」

「管理者位やばいじゃん」


 うわぁ、絶対にリヒトを暴走させないようにしよう。

 でも、今まで暴走のぼの字もなかったし、大丈夫か。


「いや」

「え」


 なんか、アマリアが難しい顔を浮かべている。どうしたんだ?


 なんか、嫌な感じ。

 空気が、嫌だ。


「もし、リヒトが暴走したら、管理者なんて簡単に、潰せるよ」

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