第335話 カリスマ性って、一体何なんだろうな

 修行期間、俺とリヒトは毎日満身創痍で部屋に戻ることが当たり前となっていた。


 リヒトも、アマリアから修行を受けているらしいしな。

 アルカもグレールから受けているみたいだけど、全然平気そう。


 クラウドもアルカと共に同じ訓練を受けているらしいが、なぜかいつも満足そうなんだよなぁ。


 俺とリヒトは、地獄を見ているというのに……。


 今は部屋で体を休めているところ。

 手酷くやられちまった…………。


 最後は気絶させられ終了。

 はぁ、頭が痛い…………。


 ベッドに座り今日の戦闘を振り返っていると、リヒトが隣に座ってため息を吐いた。


「…………疲れてんな」

「私からお願いした事ですので、弱音を吐いてはいけないとわかってはいるのですが……」


 アマリアは今、ここにいない。

 というか、ここ最近は見ていない。


 空気を読んでこの部屋に近付いていないのかねぇ。


 まぁ、リヒトの修行相手だし、ここまで疲労しているわけだし。

 夜は、ゆっくり休ませてやろうという感じだろう。


 近くにいるだけで怖がるかもしれないしな。


「ちなみに、何をしてんだ? また、体力作りか?」

「それも行っています。ですが、今回私が行いたいのは、一つの魔法を身に付けたいことなんです」

「魔法? 身に付けたい? 新しい攻撃魔法を身に着けるって事か?」


 自分の好きな魔法を身につけることって、出来るのか?

 ――――そう言えば、魔法って皆、どうやって習得してんだ?


 俺は、元々持っている魔法を使っている。

 身に着けるとかはなかったから、そこら辺はわからんな。


「攻撃魔法は私には無理みたいです。だから、もう諦めました」

「あっ」


 遠い目を浮かべている。

 わ、悪かったって。そういうつもりで聞いたわけじゃないぞ。


 それに、お前には鎖魔法があるだろうが。

 あれは、正直まじで敵に回したくない。


 永遠と追いかけて来る鎖、捕まったら終わり。絶対に、逃げられない。

 あれは、もうアシスト魔法ではなく、攻撃魔法だと俺は考える。


「だから、攻撃魔法は完全に捨て、アシスト魔法にシフトチェンジしようと思ったんです」

「なるほど。確かに、回復魔法を持っているもんな。それをもっと精度を上げようとしているって事か? でも、身に着けるって…………」


 俺が質問を繰り返していると、リヒトが何故かクスリと笑った。


 え、なに? 

 今の会話で、何か笑う所あったか?


「いえ、あの。馬鹿にしたわけじゃなかったんです。ただ、カガミヤさん、本当に変わりましたね」

「ん? そ、そうか?」


 また、その話か。

 もう飽きたんだが……。


「空気、雰囲気、思考。なんか、具体的な言葉にすることは出来ませんが、何かが変わったんです。もちろん、いい方向へ」

「前にもそんなこと言っていたが、実感がねぇんだよなぁ。思考が少し変わったような気はするけど……」

「そうですね……。今回の話だと、人に興味を持つようになったと言えばわかりますか?」


 人に、興味を持つようになった?


 いや、今回の件は、リヒトが何の魔法を持っているか把握しないといけないとか、そんな感じだぞ。


 別に、俺は誰が何の魔法を使っていようが関係ない。


 使える魔法が増えるのなら、作戦を立てるのに入れ込まんといけないだけ。

 だから、聞いたんだが…………。


「今までのカガミヤさんは、誰が何の魔法を持っていようと関係ない感じだったではないですか」

「そう、だったか?」

「そうですよ。自分に関係ないと、聞きませんでした。あまり人とも関ろうとしませんでした。なのに、今は色んな方に囲まれています」

「それは、マジで辞めてほしい」


 俺は、好き好んで囲まれている訳じゃねぇ。

 なんか、こう、俺の意に反して囲まれているだけだ。


 つーか、俺じゃなくて、俺の持っているチート魔力に興味を持っている人が集まっているだけ。


 魔法に興味あったり、竜魔法に執着していたり。

 炎に興味を持っている奴もいたな。


 ははっ、なんでこんなことになってしまったのか。

 俺は、ひっそりと過ごしたいだけなのに。


 まぁ、乗り掛かった舟だ、最後までやってやるけどな、トホホ……。


「ふふっ。でも、カガミヤさんが人を集める力を持っているから、他の人達が集まるんですよ?」

「それはない。俺じゃなくて、俺の持っているチート魔力を求めているんだ。俺じゃなくても、あいつらなら集まる」


 光に集まる蛾のように、魔力に集まる人達。

 俺じゃなくてもいいんだよ、チート魔力を持っていれば、誰でも。


「そんなことないですよ」

「はぁ? なんで、そんなこと言い切れるんだよ」

「カガミヤさんにはカリスマ性があります。自然と人を集めてしまうんです」


 …………よくわからん。

 カリスマ性? 俺がか?


 わからんなぁ。

 金が大好きなおじさんというだけなのに。


「よくわからないって顔をしていますね」

「わからんからな」

「なら、それでいいと思います。私達がわかっていればいい事ですし」

「えぇ…………」


 なんか、満足したような顔を浮かべている。

 わ、わからん。本当にわからん。


 わからんが、まぁ、そこまで不快にはならなかったし、いいか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る