第334話 強くなることは嬉しいが、期待値を上げないでくれ

 ソフィアと共に修行を始めてから数週間。

 進化したflameフレイムは、最初に比べると出る確率は上がった。


 だが、自らの意思で出そうとすると、元のflameフレイムになっちまう。


 今はまだ確立が五分五分。

 出せる時もあれば、また出せなくなる。


 今日も――…………


flameフレイム!!」


 銃口を向けて来るソフィアに向けて薙ぎ払う。

 だが、普通のflameフレイム。簡単に避けられ、発砲。


 もう、ソフィアの動きにも慣れて来た。

 瞬時に対応、次への動きに移行。


 体が勝手に動くようになってきた。


「対応出来るようになってきたな」

「それはどーも!!!」


 話していてもすぐに対応可能になってきた。

 同時にいくつも出来るのはいい事だが、集中力が少しでも切れるとすぐにやられるから、マジできつい。


「まだまだ行くぞ」


 蹴り、打撃、発砲。

 流れるようにされるため、相手の動きを読み、体を動かさなければならない。


 読みたいんだが、ソフィアの場合、予備動作とかもないから本当に読みにくいんだよ。


 何回かアンキともやり合ったが、アンキの場合は、大きな予備動作からの鉄球だから、読みやすい。


 まぁ、読みやすいからと言って、勝てるとは言っていないけど。


 鉄球を投げてからの動作は俊敏だし、自分の穴をしっかり理解しているから、対応が早い。


 もう、穴が穴じゃないんだよなぁ。


 そんな感じで、戦闘には色々な意味で慣れてきた。


 あとは、進化したflameフレイムを自身でコントロールして出せるようになれば…………。


「あまい!」

「くっ! そっちこそ!!」


 蹴り上げられたため、腕で受け止め、下に向けている手のひらにflameフレイムを灯す。


 地を這うように意識、だが、今回出たのは普通のflameフレイム。くっそ!!!!


 あっ、目の前に銃口。


 ――――パンッ!!


 放たれた弾、距離が近すぎて避けられない――――わけはもうないんだよ!!


 反射で顔を逸らし回避、額を切ったが構わない。

 体を回転させ、回し蹴り。すぐに後ろに避けられる。


 今度こそ出やがれ!!


「――――flameフレイム!!」


 地を這うように進flameフレイムが発動。

 まだ地面に足を付けていないソフィアは、外套で炎を防ぐ。


 ドカンと、ぶつかった。


 黒煙が広がる。

 もろに当たったが、ソフィアがこれで終わりなわけがない。


 追い打ちだ!!!


flameフレイム!!」


 ~~~~~~クッソ!! また普通のflameフレイムかよ!!


 だが、黒煙で視界は妨げられているはずだし、魔力を感知出来ないソフィアからしたら、可能性は微弱だがある!


 ――――パンッ!!


 っ、黒煙の中から発砲音! 顔スレスレを掠る。


 同時に、黒煙をかき分けてソフィアが駆けだしてきた!


 顔を覆うようにクロスにしていた腕を下ろし、俺へと走る。

 姿勢が低い、発砲はないだろう。


 右手に炎を灯し、近づいてきたところで前へと出す。

 防ごうとソフィアは、横から薙ぎ払うように銃底で殴りつけてきた。


「――――!?」

「なっ!?」


 ぶつかる――――そう思った瞬間、flameフレイムから強い輝きが放たれた。


 な、なんだ!?


 直後――……


 ――――ドカンッ!!!


 想像していなかったほどの爆発!!

 体が後ろに投げ出された。


「ガハッ!」

「クッ!! 何が起きた……」


 完全に吹っ飛ばされた俺は、背中をシールドに打ち付けた。普通に痛い。

 何とか保ったソフィアも、困惑の表情。


 何が起きたかだって? 俺も知らん。


 地面に落ち、咳き込みながら立ちあがる。

 黒煙が舞う中、俺達が立っていた所を見ると、地面が少し焦げているだけで、他に変わったことは無い。


「な、なんだったんだ?」


 俺も困惑、何が起きた?

 わからずその場で座っていると、ソフィアが近づいて来た。


 まさか、この状況でもまだ続ける気か!?

 瞬時に立ちあがり、構える。


 だが、気配が攻めるものではない。

 普通に柔らかいというか、話し合いをしている時みたいな感じだ。


「おい」

「な、なんだ?」

「今のは、お前の意思ではないように見えるが、一応聞こう。今のはお前が自発的に起こした爆発か?」


 わかってんなら聞くなよ、めんどくせぇな。


「んなわけねぇだろうが。俺も何が起きたのかわからんかったわ」

「そうか」


 ソフィアも視線を落とし、考えている。

 さっきの爆発は俺じゃわからんし、ソフィアは何か思い当たる節があるのだろうか。


「なら、さっきは何を意識していた?」

「お前が姿勢を低くしていたから、発砲はないだろうと接近戦に持ち込もうとした。炎を灯していたのは、少しでもダメージを与えられたらいいなぁという、淡い期待だ」

「なるほどな。深く物事を考えていたわけではないという事だな」

「わ、悪かったな……」


 へーへー、そうですよ。

 俺は単細胞ですからね、難しく考えませんよーだ!!


 そんないい方しなくてもいいでしょうが、酷いな……。


「────面白い」

「…………ん?」


 な、なんか、空気が変わったような?


「お前は、本当に面白いな。追い込めば追い込むほど、お前は新しい扉を開く。その扉はどこまで続いているのか。確かめさせてもらうぞ」

「――――え」


 な、なんか、嫌な方向に話が向かっていませんか?

 ……………………狂気的な笑みを浮かべているのですが??


「行くぞ」

「…………はい」


 終った、俺。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る