第332話 本当に勘弁してくれよ……

「はぁ、はぁ…………」

「早く動かねぇと死ぬぞ」

「ふざけんな――どわっ!!」


 発砲音が響くのと同時に、俺の右側に弾が走る。

 地面に足を付けたのと同時に、鉄球が迫りくる。


flameフレイム!!」


 放つが、やはり普通のflameフレイム

 なんの変哲もない、ただのflameフレイム


 だが、アンキが元々使っていた鉄球よりは小さいから普通のflameフレイムでも弾き返すことは可能。


 もう、五時間以上、ずっと模擬戦を行っているが、一度も出したいflameフレイムは出てくれない。


 何度も何度も繰り出しているのに、一度もだ。


 何が違うんだ、なんで出ない。

 つーか、なんで二対一なんだよ、ふざけんな。


 ソフィア一人でも傷一つ付けることが出来ないのに、アンキが加わっているんだぞ。

 もう、何も出来ない。避けるだけで精一杯。


 連携も、タッグバトルで戦ってわかってはいたが、レベルが高すぎる。

 攻撃を仕掛けたくても、隙がない。


「どうした、防いでいるだけでは敵を倒せないぞ」

「わぁってるよ!!!」


 蹴り上げてきたから腕で受け止め、flameフレイムを近距離で放つが、簡単に避けられる。


 横から鉄球が飛んでくる。

 姿勢を低くし、横に手を伸ばしまたしてもflameフレイムを放つ。


 簡単に避けられるんだけどさ……はぁ。

 魔力の無駄、魔法の無駄。


 でも、放たないとこの戦闘は俺の負けになる。

 放っても、傷一つ付けられてないから、どっちにしろ意味はないんだけど。


 アンキも、腕一つないくせに俊敏な動き出し、ソフィアは言わずもなが。

 本当に二人がレベル違いすぎて、チート魔力持っているはずの俺が押されている。


 チート主人公じゃなかったのかよ、ふざけんな!!


「――――っ!?」


 やべぇ、一定の距離、二人に挟まれている。

 後ろに避けようとしても、シールドまで押されていたらしく、避けられない。


 いつの間にここまで追い詰められていたのか!?


「終わりかもな」


 ソフィアの言葉を合図に、発砲音が響く。

 同時に、鉄球も放たれ逃げ道を封じ込められる。


 逃げ道がない。

 せめて、ダメージを少しでも軽減出来る方法を――……


 ――――ドクンッ


 まただ、また、心臓が大きく音を鳴らす。

 体が熱くなる。


 視界がスローモーションのように動く。

 弾も、鉄球も遅い。


 右手に、熱が集まる。

 魔力が、集まる。


 体に巡る血液、魔力が熱い。

 体全体が徐々に熱くなる。


 この感覚だ。

 これが、俺の求めている感覚。


「――――flameフレイム


 唱える。すると、今までとは違う。

 色が濃く、熱を感じる炎が現れた。


 炎は、地面を這うように、まず鉄球を弾き返す。

 同時に、炎が大きな獣の顔を作り、ソフィアの弾を食らう。


 二本に枝分かれしたflameフレイムは、勢いはそのままに二人へと襲い掛かった。


 ソフィアは簡単に横へと避け、アンキも上に飛び回避。

 だが、二人とも表情は硬く、驚いていた。


「――まだだ」


 flameフレイムは、まだ生きている。

 すぐに第二弾を放つ。


 同じように枝分かれをし、二人に襲い掛かる。


 アンキは、まだ足を付けていないから避けられないだろう。

 ソフィアは、どう避ける。


 そう思っていると、なぜかソフィアは自身よりアンキを優先する動きを見せた。


 銃口をアンキに向かっているflameフレイムに向ける。


 パンッと放つと、flameフレイムは少しだけ揺れた。だが、それだけ。避けられない。


 そう思ったのだが、アンキはソフィアの意図をくみ取ったらしい。

 一瞬の揺れ、その隙に鉄球を巻き取り、上から叩き落した。


 それにより、完全に俺が放ったflameフレイムは消える。

 だが、アンキを助けたということは、ソフィアは無防備。


 ――――ドカンッ


 簡単に、俺のflameフレイムはソフィアに当たる。


 爆風が吹き荒れ、視界が塞がれちまう。


「当たった…………」


 息が切れる、喉が痛い。


 もろに当たったみたいだが、ソフィアは大丈夫だろうか。

 やばい、全力で放っちまったから、怪我というだけでは済まされないんじゃないか?


 黒煙が、徐々に薄れてくる。

 すると、ゴホッゴホッと、咳の音。


 よかった、生きてはいるらしい。

 だが、無傷ではないだろう。どれだけ俺はやらかしちまったんだ?


 目を細め、隣まで来たアンキと共に見ていると、しっかり足を地面につけ立っているソフィアが見えた。


「……………………はぃ??」

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