第331話 あえて怒らせることを事前宣言でしてくるってなに?

「人間が、不可能にしている?」

「そうだ。俺達人間は、考える事を無意識のうちに放棄する。出来るのにやらない、考えれば可能性があるのにも関わらず、やろうとしない。だから、この世界に不可能という言葉が出回る。実際は、俺達人間が考える事を放棄し、可能性を潰しているだけだ」


 一理あるか。

 研究員とかって、そんなことをよく言っているイメージ。


「だから、俺は不可能という言葉は信じない。少しでも出来る事があればやり、出来なければまた他の方法を探す。目的に近い形で場合もあるが、俺的に満足すれば問題はない」


 腕を組み、言い切りやがった。


「それが、これとう言うことか」

「そうだ。魔法が使えないことは、やはりこちらとしては不利になる。少しでも魔法というものが使えればと思い考え作ったんだ」

「結果は?」

「アンキの魔力を入れ、俺が放つ。出来るには出来たが、やはり、魔力をチャージしなければならない手間と、魔法を放つためには別の魔道具が必要。そう考えると、もろもろ手間が多くてな。少し使って、また他の方法を考えようという結果となった」


 満足はしなかったということか。

 だが確かに、魔力がなくても魔法を放つという目的は達成している。

 口で言っているように、近い形では終わっているな。


 不可能を可能にした男、か。

 へぇ、すげっ。


「だから、魔法にこだわらなくてもいいかと思い、他の方法で強くなることを考えたから、それはもういらん」

「その方法が、その拳銃と自慢の体術か?」

「そうだな。あとは、魔法の弱点や特徴などを調べているうちに楽しくなってな。今の形になった」


 うわぁ、そういう段取りがあったのか。

 長い道のりを歩いて、今の強さを手に入れたって感じ。

 これが、本物jの強者なんだろうなぁ~。


「説明はこれでいいか?」

「あぁ。もう使わないのなら、ありがたくもらう。魔導書も使わない」

「その方がいい。少しでも身軽に戦えるようにしろ」


 もらった魔法石をポケットに入れ、魔導書は端に置く。


flameフレイム


 ラグ無しで手に炎を灯し、準備完了。

 今回も、基本魔法の制限付き、頑張りますか。


「行くぞ」

「あぁ」


 姿勢を低くしたソフィア、すぐに俺はflameフレイムを放つ。


 …………駄目だ。今回放ったのは今までと同じ。

 熱くもなければ、色も普通。これではソフィアは簡単に避ける。


「ぬるい」


 案の定、ソフィアは横に駆け出し避ける。

 勢いは殺さず、迫って来た。


 もっと集中しなければならない。

 昨日の感覚を思い出せ。


「――flameフレイム


 また、右手に炎を灯す。

 だが、また同じ。普通のflameフレイムだ。


 意識が足りないのか? どう意識すればいいんだ?


「考え事か?」

「しまっ――……」


 ソフィアが銃口を額に向ける。

 頭を下げ回避した瞬間に発砲音。

 頭すれすれを弾が横切った。


 目線を下げ、ソフィアの足元。

 すぐに右手を地面につけ、姿勢を低くし回し蹴り。


 だが、後ろに跳び避けられる。

 瞬時に地面を蹴り、離れた距離を詰めてきた。


flameフレイム!!」


 薙ぎ払うように放つが、やはり普通のflameフレイム

 簡単に避けられる。


「くっそが!!」

「難しく考えるな」


 っ、やべ!!


 ソフィアが言いながら、左手で持っていた拳銃を右に回す。

 目の前まで来ると、薙ぎ払うように銃底で殴ってきた。


 腕で受け止めてしまい、痺れる。


「ぐっ!」


 っ、足を蹴り上げてきた。駄目だ、受け止められない。

 後ろに跳び回避。だが、これは――……


 ! やっぱり、銃口を、向けられた。


 ――――パンッ!!


 顔を横に傾け、頬を掠ったが避ける事は出来た。


 …………おいおい、難しく考えるな?

 そんなに俺、難しく考えているか?


「~~~~~つーか!! こんなに追撃されて!! どうやって考えろってんだよ!!」

「変な解釈をするな。考えるなと言っている」


 次々と繰り出される攻撃。

 銃底で殴ってきたり、蹴り上げてきたり。距離が少しでも離れれば銃撃。


 中距離も近距離も。

 どっちに転んでもすぐに対処されて意味はない。


 受け続けていても意味はないし、倒すことなど出来るわけがない。

 昨日は全然掠めることすらもできなかったし、今日は少しでも傷をつけたい。


 どうすればいいのか、どうすればflameフレイムを濃く出来るのか。

 考えるなと言われても、原因がわからなければ出すことなど出来るわけがない。


 考えないと、無理な話だっつーの!!


「っ、え、あ、あれ?」


 う、動きを止めた?

 ど、どうしたんだ?


「そうか、なんとなくわかって来た」

「え、なに?」

「お前は、怒らないと本気を出せないんだな」

「…………へ?」


 え、ど、どういうこと?

 怒らないと本気が出せない?

 そ、そんな事ないと思うんだが?


「なら、怒らせればいいか」

「怖いんだけど、な、なんだよ…………」


 俺、何をされるんだ?

 怒らせるということは、確実に俺が不愉快になるということじゃねぇか。


 なんだよ、勘弁してくれよ。


「アンキ、お前も入れ」

「はいっす~」


 ……………………え?


 シールドを開け、アンキが入ってくる。

 ニコニコ笑いながら入ってくる。なになに、なんで? 

 ま、まさか…………?


「これからは二対一だ。せいぜい頑張れ」


 ・・・・・・・・・・・・・・。


「~~~~~~~~~~~ふざけんな!!!!」

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