第325話 こんな命がかかっているところを修行の場にするんじゃねぇよ
「あははっ、面白い、面白いです、知里。貴方はやはり、今殺すのは惜しいです。ここには、私を楽しませてくださいます方が三人もいますぅ~。嬉しいなぁ、嬉しいですよぉ~。嬉しい……の、ですがぁ…………」
頬を染め、興奮したようなアクアだったが、何故か急に顔を俯かせ声を抑える。
なにか、ものすごく嫌な予感。
それは、ソフィアも感じたらしく、俺の隣まで移動し、拳を強く握った。
クラウドも俺の隣まで移動し、手元を見て来る。
アルカとリヒト、アマリアも同じく俺の近くに来る。
なんで、俺は囲まれているのだろうか。
なんで、守られているのだろうか。
一人は、狙いがもろに炎魔法だという事はわかるが。
これって、なんか、ヒロイン的立ち位置ってこんなんなんだろうなぁという感覚になってしまっ──……
「「――――下だ!!」」
俺とソフィアの声が重なった直後、踏みしめていた地面が盛り上がり始めた。
すぐに上に飛び回避すると、無数の水の手が現れ始める。
「
アクアの口から初めて、魔法を聞いた。
今回のこの無数の手は、アクアの魔法か。
まずい、咄嗟とはいえ、上に飛んじまった。
それはソフィアも一緒。
狙われている。
手だから、目とかがあるわけないのだが、狙っているのはわかる。
早く、魔法を繰り出さねぇとやられる!!
「基本魔法で何とかしろ!!」
「今そんなこと言っている場合じゃねぇだろうが!!」
あっ、ソフィアが外套から二丁の拳銃を取り出し、下から迫りくる無数の手に銃口を向けた。
おいおい、まさかだが、その二丁の拳銃だけで十以上はある水の手を打つつもりか!? 無茶だろ!!
――――バンバン バシャン!!
「──えっ」
放たれた弾、一寸のずれもなく俺達に放たれて来た水の手を破裂させてだと?
「呆けてねぇで、早く放ちやがれ!!」
っ!? そんなこと言われても!!
「くっそ!! なるようになれやぁぁぁぁ!!
右手に炎を灯す。
焦っているからなのか、炎が自然と大きくなっちまう。これだと、自分にも被害が出る。
せめて、水の手だけでも消せる程度の魔力を――……
アクア、少し辛そう。魔力のコントロールがきついのか?
魔力を抑えている状態……とかか?
つまり、威力だけで勝てる可能性がある!
迫り送る水の手、炎。
意識、集中。
さっきの感覚、咄嗟だったから覚えていないが、手は覚えている。
気持ちが昂る、危機を感じているのに、不思議と気持ちは落ち着く。
「――――
再度魔法を唱え、炎を灯し直す。
色が違う、今まで出していた
パチパチと音を鳴らし、炎が小さいまま魔力が収縮され、熱くなる。
「──行け」
もう少しで襲われる――直前、炎を放つ。
向ってきた水の手は全て、当たる前に熱で蒸発、じゅわっと音を鳴らし地面に落ちた。
無事に着地が出来た。
「どうなった!?」
蒸発した水蒸気で視界が覆われ確認が出来ない。
ソフィアもクラウドも、アルカやリヒトも目を細め、事態を把握するよう努める。
「…………すべて、蒸発、した?」
アクアが唖然としている。
でも、やっぱりどこか楽しそうで……いや、普通に楽しそう。
笑っているし、気持ち悪い。
「なら、これはどうでしょうか。
唱えると、水の鷹がアクアの腕に作られる。
本物の鷹のように大きく、目が鋭い。
アクアの腕に爪を立て、共に俺達を見据えてきた。
「鷹は、相手に出来ますかぁ~?」
「同じく蒸発させてやるよ!!」
お互い魔法を放つ。
炎と水のぶつかり合い。
――――ドカン
俺の
水蒸気で視界がまたしても封じられる。
顔を手で隠すが、気配だけは集中しなければならん。
俺が勝っているという確信は持てていないからな。
「どうなっ――――っ!」
水蒸気をかき分け、俺へ向かってくる鷹。
気づいた時には眼前、避けるのは不可能。
もう駄目だと思いながらも、どこか冷静な自分がいる。
視界に映る景色がスローモーションのようにゆっくりと動く。
迫りくる鷹、勝ち誇ったように笑うアクア、隣では助けようと手を伸ばすソフィア。
頭は動いていない、意識がどこに向いているのかわからない。
だが、体は勝手に動く。
右手を前に出し、鷹へと向けた。
「――――
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