第324話 感情のままにやらかした

 炎に魔力を注ぐと、大きくなっちまう。

 大きくならないようにイメージしても、無理。


 やり方が違うのか?


sunetスネト


 アマリアがソフィアとやりあっているアクアに音魔法を発動。

 空気が震え、地面が抉れる。


 見えないが、真っすぐアクアへと向かっているのは分かる。


 あっ、すぐに気づかれ避けられちまった。

 壁が破壊され、粉砕。壁の破片が砂になり、地面に落ちる。


「って、あ、あれ?」

「どうしたんだ、カガミヤ」

「アマリアの今の魔法、たしか対象を手で触れないと発動できないんじゃなかったか?」


 sunetスネトは、音属性の基本魔法だったはず。

 相手に触れないと、意味は無かったはずなのに、中距離で放った、だと?


「っ、――――へぇ、天才ってやつ? 腹立つ…………」


 俺が急に苛立ち始めたからか、隣に立っていたアルカとリヒトがポカンとしている。


 今、俺の頭の中にアマリアの思考が送られた。

 imaginationイマジネイションを使って。


「今、アマリアは一つの魔法を極めようと思ったらしく、基本魔法を放った。それが、イメージ通りに一発で出来たらしい。こんの、天才様が……」

「さ、さすがアマリア様ですね……」

「アマリア様、本当に凄い……」


 今回、アマリアがイメージしたのは、飛距離を伸ばすこと。

 イメージだけで、成功させた。


 くっそ、むかつくぅぅぅううう……。


 魔力で電車の線路みたいなものを作り、魔法を走らせた。

 理屈はわかったし、やってみるか。


「えぇっと、線路を作る感じに……。威力も高めつつ…………」


 ……………………俺の仲間つえぇ。


 ソフィアは仲間じゃないとはいえ、俺が自分の魔法に集中していても特に問題ないっ――――わけではなかった!!


「ソフィア!!」

「俺の事は気にすんな、自分の魔法に集中しやがれ」


 いやいや、押されかけてんじゃねぇかよ。

 アマリアも音魔法で応戦するが、なぜかアクアにたどり着く前に何かが爆発して意味は無い。


 クラウドの動きも、もう読まれ始めて簡単に防がれている。

 結構な深手を負っているくせに、こんの、化け物!!

 

「アハハハハッ!!! 楽しいですね!! 楽しいですよこんな楽しい戦闘は久しぶりです! もっと、もっと殺りましょう!!!」


 大きな獣の爪は、ソフィアとクラウドを徐々に追い込んでいく。

 アマリアも苦い顔を浮かべつつも、音魔法で何とか動きを制限していた。


 アルカとリヒトも参戦しようとするが、二人のスピードが速すぎて魔法を放つことが出来ない。


「っ、まずい」


 ソフィアが壁に追い込まれ、逃げ道がなくなった。

 身動きが取れなくなる。


 クラウドが光の刃を放つが、とうとうアクアの獣の爪が頬を掠り、光の刃は短くなる。


 このままじゃ、ソフィアがやられる!!


「っ、ソフィア!!」


 ――――――――ドカンッ!


 ・・・・・・・・・・・・・。


 思わず、大きな声を出してしまった。

 魔力の操作も忘れ、意識が逸れた。


 わからない、わからないが……。


「…………っ?」

「っ、はぁ?」


 ソフィアの困惑と、俺の困惑が重なる。

 いや、重なるのは当然だ。


 えぇ、今の炎、俺が放ったの?

 地面を這うように放たれたぞ。


 しかも、アクアを吹っ飛ばすほどの威力…………え? マジで、え?


「何をやったんだ」

「俺にもさっぱり…………」


 右手に灯していたのは、基本魔法。まぐれか?


 右手を見下ろしていると、ガランと音が聞こえた。

 見ると、頭を打ち付けたらしいアクアが、流れる血を拭いながら立ちあがる。


 その表情は、困惑。

 何が起きたのか、アクアもわかっていないらしい。

 クラウドはなぜか目を輝かせて俺を見て来るけど、普通に無視。


「…………今の魔法、基本魔法、ですかぁ?」

「み、たいですよぉ~?」


 なんか、緊張する。

 無表情のアクアって、ここまで圧があるのかよ。

 普段ヘラヘラしているから、ギャップが……怖いって。


「へぇ、なるほど。面白いですねぇ」


 俺は、面白くないです。

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