第307話 胸糞悪いと思うのもおかしな話なんだけどなぁ

 アマリアが管理者であるのはばれ、矛先が完全にそっちに行ったことを見計らい、俺は食事を楽しむ。


 俺が頼んだのは、ハンバーグセット。

 久しぶりの肉は絶品、めっちゃうめぇ。


「……ねぇ、僕が管理者であるのは、どうでもいいでしょ。今は、竜使いである知里の話を聞いた方がいいんじゃない?」

「あ、それもそうだな」


 ?!!?


「ブッ! ゴホッ、ゲホッ!!」


 視線がこっちにっ?! 

 早すぎないかさすがに!! 矛先が戻ってくるの!!


「大丈夫ですかカガミヤさん!!」

「だ、大丈夫だ。少しむせただけだから」


 リヒトから受け取った水で、変なところに入ったハンバーグを流し、なんとか咳は止まった。


「…………なぁ、お前さんは竜魔法をなんだと思っているんだ?」

「魔法の一種、以上」


 んな事聞かれても、それ以上でも以下でもねぇよ。


 俺は、Dragonflameダーク・フレイムをただの魔法の一種としか思っていない。


 ついでに言えば、スピリトとの相性が抜群に良く、使い勝手がいい。


「そうか。まぁ、竜使いについて知らない人は多い。そう思ってしまうのも仕方がないだろう」

「その、竜使いってなんだ? なんで、お前はそこまでそれを強調する?」


 さすがに、ここまで竜使いについて強調されていたら、聞かざるを得ない。


 問うと、カウは隣に座っているチィを見た。

 頭を撫でてあげると、照れくさそうに顔を逸らす。


 今の一連の流れ、必要か?


「こいつは、母親によって見た目が変わらなくなってしまったんだ」

「ん? あ、あぁ……」


 その話、竜使いに何か関係あるのか?

 無駄な話は聞きたくないんだが?


「オスクリタ海底にある癒し処に行ったことがあるか? そこには、占いも出来る魔法使いがいるらしく、占ってもらったんだ」


 癒し処の占い師と言ったら、もう一人しか思いつかないんだが、余計な事は言わんでおこう。


 適当に相槌をし、話を促した。


「チィの呪いを解くことが出来るのは、竜使いの者だと、言ってくれたんだ。だから、俺は竜使いを探し、呪いを解いてもらおうと色々調べた。その中で、竜使いに選ばれるのは数が少なく、五大属性魔法、氷、炎、風、地、雷の内一人だけ。選ばれた者は、竜を従え、どんな強者とも渡り合える──という言い伝えを見つけたんだ」


 そんな話、一切聞いたことないが……。


 アマリアを見ると、こいつも知らなかったらしく、感心したように「へぇ」と楽しげに笑っている。嬉しそうだな……。


「だが、今まで俺は、自分しか竜の魔法を使っている人を見なかった。やっと、俺以外の竜使いを見つけたと思ったのに……」


 哀れみの目を向けるな、知らんわ。


「まぁ、どんな奴でも、竜使いなのなら別にいい」


 失礼すぎないか?


「なぁ、呪いを解くのを──」

「無理ヤダやりたくない断る拒否」

「そこまでか?!?!」


 そこまで失礼なこと言われて、なんで頷かんといけないんだ。

 それに、無理だし出来ない。


「で、でも、占いでは…………」

「それはあくまで占いだろう。現実が必ずそうなるとは限らない。それに、その占いがあっていたとしても、俺とは限らん。他の竜使いが呪いを解く鍵を持っているかもしれねぇだろうが。俺に固着するな」


 突き放す言い方になっちまうが、こればっかりは仕方がない。

 顔を青くしようが、悲しげにされようが、俺は何も出来ない。


 変に期待を持たせないのが、俺のスタンスだ。


「カガミヤさん、さすがに言い過ぎですよ。もう少し話を聞いてあげてもいいじゃないですか」

「話を聞いたところで出来る事はないし、これ以上問題を抱えたくない。俺達が出来る事は限られている、今までの経験でそれを学んだはずだが?」

「でも…………」


 リヒトが顔を下げ何かを言おうとするが、何も言えない。

 俺達の抱えている物をやっと理解してくれたらしい。


 まぁ、タッグバトルに参加している時点で、もう目的からは脱線しているけどな。


 そこは、まぁ、気にしない。金のためだ。


「わかった。そう、だよな。いきなりそんなことを言われても、困るよな」

「あぁ、正直困る」

「悪かった。俺達はもう行くな。決勝は見るから、絶対に勝ってくれよ!」


 明るい笑顔。だが、無理をしているのはわかる。

 いい奴、なんだろうな。正直、胸糞悪い。


 だが、出来ないもんは出来ない。

 首を突っ込んでも意味はない。


 俺は、次の戦闘で勝ち、賞金を手に入れるんだ。


 飯をまた食おうとすると、カウを呼び止める声が聞こえた。


「ちょっと待ってくれない? もっと、竜使いについて教えてほしんだけど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る