第304話 もう、これは俺の運が悪いのか、それとも過大評価をし過ぎたのか

 俺の気合は、空へと消えてしまった。

 部屋に戻り、気持ちを維持するために通帳を拝借、見る。


 アルカとリヒトは緊張しているみたいだが、クラウドは壁に寄りかかり目を閉じている。けど、寝ているわけではなさそう。


 鼻提灯膨らませてないし、寝息が聞こえない。

 起きているのは確実だろうな。

 今は寝ていていいのにな、まぁいいけど。


 出場するはずの俺とクラウドが余裕で、出場しないはずのアルカとリヒトが緊張の面持ちって、なんか笑えるな。


「ねぇ、知里」

「なんだ」

「氷の竜使い、倒し方はなんとなくイメージは出来ているの?」


 あー、氷の竜使いか。

 イメージと言われてもなぁ……。


 無傷ならクラウドでも相手に出来るとは思うけど、もし浅い傷一つでも付いてしまったら、俺が前に出なければならなくなる。


 氷だし、俺の炎魔法は弱点。

 魔力量も、俺はチート級だし、問題ないはず。


 ただ、強力な魔法があくまで氷の竜ってだけで、他にも沢山の氷魔法を持っているはずだ。

 柔軟に対応しなければならない。


 不安は、全くと言っていいほど、ない。

 今までの戦闘がここで活かされるなんて思っていなかったなぁ。


「まっ、大丈夫だろう」

「それもそうか」


 引くのはやっ!?

 俺の事、過大評価し過ぎじゃね?


 ※


 次の日、朝の九時にフィールドに行くと、もう準備は出来ていた。


「それじゃ、頑張ってください!」

「まぁ、ほどほどに頑張るわ」


 クラウドも一緒にフィールドに行くと、昨日の氷魔法とペアの人が立っていた。


 黒いローブを見に纏っている男性と、子供。

 いや、本当に、子供。


 アマリアのような服を身に纏っている、銀髪の子供。

 外国の子供をイメージさせるな。


 年齢制限とかないんか、このタッグバトル。

 いや、アマリアみたいに、中身はおっさんかもしれないか。


 そんな事を考えていると、審判が真ん中に立ち、俺と相手に準備が出来たのか聞いて来た。


 頷くと、手を上に上げる。


「これより、準決勝。チサト、クラウドペアと、カウ、チィペアの試合を開始します」



 ――――ピィィィィィイイイイイ!!!



 試合開始の合図が鳴り響いた。

 瞬間、相手の一人、黒いローブの奴が動き出した。


「どっちがカウで、どっちがチィなんだ?」

「余裕かよ、知るか」


 黒いローブの男が右手を振り上げ、魔法を発動しようとしている中、クラウドは余裕そうにそんなことを聞いて来た。


glaceグラース


 っ、魔法を発動して来た。

 どんな魔法だ?


 ――――っ!!


「ちっ、下だ!!!!」


 俺の声でクラウドは上に跳び、俺も同時に跳ぶ。

 すると、氷の刃が地面から現れ、俺達を食らうように大きく開かれた。


 やばい、空中に跳んだのは間違いだったかも。


 直感は、的中。

 地面から現れた氷の刃が、俺達を追うように伸びる。


 くっそ!!!


「俺様に任せろ!」


 クラウドが光の刃を伸ばし、氷の牙を叩き割る。

 平らになった地面に着地、難は去った。


「お前の光の剣、そういう使い方もあるんだな」

「物は使いよう」


 物は言いよう、だろうが、それを言うなら。

 まぁ、いいけど別に。


 一回一回の魔法が強いらしい。

 それと、氷魔法使いがあの黒いローブの男ってことは、昨日の氷の竜はあいつが出したんだろうな。


 隣に立っている子供は動こうとしない。

 なんか、こわがっているし、後退している。


 あの餓鬼、なんだ?

 まさか、無理やり出場させられたとかか?


「――――glaceグラース


 っ、同じ魔法!!


 足元を警戒しているが、魔力を感じない。

 なら、どこから――……


「え、上から影が――どわぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 上から大量のつららがぁぁぁぁぁぁ!!!


「どわっ!! おい! クラウド、大丈夫かっ――――うお!?」


 くっそ!! クラウドを確認すら出来ない!

 これは、つららの雨をどうにかしないと!!


「ちっ――――Mitrailleuseflameミトラィユーズ・フレイム!」


 炎のガトリング砲を空中に発射。

 全てを破壊する事が出来た。


「おい、クラウド!! 大丈夫か――――あっ」

「…………うるせー」


 ………………………………最悪、本当に、最悪。

 クラウドの腕、血が出てやがる……。


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