第300話 新しい事が目の前に落ちていると、好奇心が勝ってしまうのは仕方がない

 フィールドに上がると、少年達はもう準備が終わっていた。


 二人が俺達を見据え、立っている。


「…………」


 気配が、今まで戦ってきた人達とは違う。

 研ぎ澄まされ、真っすぐ、前だけを見ている。


 でも、管理者程ではないな。

 管理者程の実力はないし、圧も感じない。

 あいつらが化け物なんだから、比べるのはおかしいだろうけど。


「準備は整いましたか?」


 審判に聞かれ、頷く。

 相手も頷いていた。


 確認後、審判は笛を口に咥え――……



 ――――――――ピィィィイイイイイイイ!!!



 開始の笛と共に、少年達が駆けだしてくる。


turboflameトュルボー・フレイム!」


 まず、炎の竜巻を相手の足元に作り出したが、すぐに回避された。


 二人は体がちいせぇから、身軽。

 今は魔導書もないし、魔法発動までに数秒の誤差で簡単に避けられちまう。


 そんな事をしていると、二人は俺達の目の前まで来た。


「「mistミスト!!」」


 腕をクロスし、炎の拳を発動しようとした時、相手の姿がすり抜けるように消えた。


 困惑していると、後ろから気配。

 振り向いている時間はない、後ろにいる。


Mitrailleuseflameミトラィユーズ・フレイム


 炎のガトリング砲を後ろに向けて放つ。

 肩越しに見ると、刀を振り上げていたらしく、悔し気に顔を歪め後ろへと跳び避けていた。


「早いな」

「みたいだな」


 おっ、クラウドがやっと動き出してくれたらしいな。

 相手が俺の方に向かってきたから仕方なく防いだが、ここからはクラウドに任せて問題なさそう。


「動きはわかった。ここからは任せろ」

「へいへい、任せたぞ」


 一歩前に出ると、今までの試合で動かなかったクラウドが動き出したからか、少年二人は警戒を高めた。


 刀を握り直し、構える。

 吐く息は白く、二人を隠すように霞が漂い始めた。


「二人の属性は、知っているよな?」

「霞と水。相性は良く、合わせ技も持っている。これで間違いねぇよな?」

「お、おう」


 適当に話を聞いていたり、戦闘を見ていないように見えたが、しっかりと聞いていたんだな。


 こいつ、侮れない。


 戦闘に集中し始めた二人、これ以上集中力を高められるとやばいな。

 任せるとは言ったが、俺も動けるようにはしておこう。


「すぐに終わらせてやるよ」


 下唇を舐め、クラウドが戦闘態勢を作る。

 黄緑色と藍色のオッドアイが、妖しく光り、少年二人を捉えた。


 殺気、鋭いな。

 二人が一瞬、たじろいじまった。


 その隙、こいつが逃すわけがない。


 予備動作なしの光の攻撃。

 右手を微かに動かしたかと思うと、伸びるのは目にもとまらぬ速さの光の刃。


 すぐさま体を捻り避けたみたいだが、クラウドがすぐに追撃。

 避けきれず、一人の少年が腕を切る。


 血が流れ、抑えているがお構いなし。

 殺す勢いで追撃を繰り返す。


 魔法を発動する時間もないし、双魔を繰り出す余裕もない。

 ちょっと、双魔を見たかったけど、こればかりは仕方がない。


 今のように、追撃を繰り返し相手に魔法を重ねる時間を与えなければ、双魔も発動出来ないという事はわかった。


 …………このままだと殺しそうだし、もうそろそろ止めた方がよさそうだな。

 魔法の準備でもしていよう。


 ・・・・・・・・・・・?


 あれ、微かに。

 本当に、微かにだけど。足元から魔力を感じ、る?


 下を見ると、霞……。

 俺の所は薄い、クラウドの所――――っ!?


 クラウドの足元、霞が濃い。

 魔法を発動していたのか?!


 今、俺が霞に気づいたとは相手も思っていないだろう。

 クラウドに釘付けになっているし。


 今すぐ動き出して、変に魔法にかかるとめんどくさい。

 これは下準備だろうし、すぐ何か発動とかもないだろう。


 危険な事は行いたくはない。

 それに、今回の相手は俺が知らない魔法を持っているし、技を発動して来ようとしている。


 この目で新しい物を見れるのはいいチャンス。

 面倒ごとになる前に終わらせたいが、好奇心もある。


 少し、様子を見ようか。

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