第117話 やるしか道はないのなら、もう流れと勢いに任せるしかない

 下から唸り声、見るとリンクが眼を擦りながら体を起こしていた。


『ふわぁぁぁああ。んにゃ、何が起きたのかしら…………』

「起きたところ悪いが、今すぐに働いてくれ」

『え、え?』


 よし、まだ困惑はしているが、リンクを起こすことは出来た。

 アマリアを見ると目が合い、頷いてくれる。


 次は、後ろで準備をしているリヒトの番。


『あ、あの。何を考えているのかしら。まだ戦闘は終わっていないの?』

「不安がっているところ悪いな。今回は、お前の魔法が必要だ。俺とフェアズの魔力を繋げる事は可能か?」

『え、繋げる? さすがに難しいわよ? やり方すらわからないわ』

「簡単だ。リヒトが鎖で俺とフェアズを繋げるから、鎖に直接お前の異空間魔法を注いでくれれば出来るだろう」

『???』


 わかっていないな、もっと詳細に話すと言っても、どう言葉にすれは……。


imaginationイマジネイション


 アマリアが目線をフェアズ達から離さず、左手を俺達に向けてきた。

 魔法を唱えると、リンクの額が淡く光る。


「何をしたんだ?」

「言葉でわからないのなら、頭に直接イメージを見せた方がいいかなと思ったんだ」

「そんな事も出来るのか…………」


 リンクを見ると、アマリアが見せた映像のおかげで、今回やってほしいことがわかったらしい。

 俺を見上げ、不安そうに服を掴んでくる。


「不安なのはわかるが、今回はやるしかないんだ。やる、やらないではなく、出来る出来ないでもなく。もう、やるしか俺達に残された道はない。リンク、失敗してもいい、本気で出来る事をやってくれ」


 眉を下げ、瞳を震わせを俺を見る。

 不安そうだが、自尊心が高いリンクだからか、震える体とは裏腹に力強く頷いてくれた。


 俺達を見て、アマリアがアルカとグレールの頭に直接、俺達の準備が整ったことを伝えてくれたみたい。


 アルカは一瞬戸惑ってしまい隙が生まれてしまったが、グレールは冷静にアルカのミスもカバー。

 脇に抱え、地面に降り立った。


『あら、終わりかしら?』


 俺達をあざ笑うフェアズ。


 終わり? 

 そんなわけないだろう。ここからが俺達の反撃開始だ。


「リヒト、準備は出来たか?」

「大丈夫です。もう、やるしかないとわかっているので」


 杖を握っている手に力が込められる。

 さっきの拘束魔法でだいぶ魔力を消費しているはずなのに、それでも強気な表情。


 やっぱり、こいつは強いな。


 俺の隣に立ち、フェアズを見上げるリヒト。

 フェアズは、先ほどの拘束魔法が頭の中に残っているのか、リヒトが動き出した事に一瞬肩を震わせた。


 捕まると何も出来なくなるし、もがいても無駄だからな。


『何をする気かわからないけれど、今の私には拘束魔法は無駄よ』

「それもそうだな。ただの拘束魔法なら、意味はないだろう」

『なら、何をする気なのかしら』

「なんだろうな、受けてみればわかるんじゃないか?」


 俺の言葉で笑みを消し、煩わしいと目を細め見下ろしてきた。


『やっぱり、貴方を野放しにするわけにはいかないわね。今すぐ、私が殺してあげるわ』

「その前に、お前。俺の事が大好きなのはいいが、他の所にも目線を向けた方がいいぞ」

『なっ――』


 あいつの背後には、アルカが作った土人形が両手を上げ襲い掛かろうとしていた。


 すぐにフェアズは気づいたみたいで、鞭で薙ぎ払い土人形を真っ二つに。

 だが、そこで安堵するのはまだ早い。


 次に待っているのは、グレールの氷魔法。

 アルカが土人形を出したのは、手の中にグレールを隠すため。


 土人形が崩れ落ちる中、グレールが姿を現し地面に落ちていく土の塊を足場に、氷の剣を作りながらフェアズへと向かって行った。


 グレールが自身の剣の届く距離まで行くと、横一線に振り払う。

 だが、空中を自由に移動できるフェアズからしたら、簡単に避けられる。


『簡単なトラップね』


 地面に落ちるグレールをあざ笑い、フェアズはとどめを刺そうと蔓を操作し始めた。

 だが、今後の展開を知っているグレールからしたら、今のフェアズの行動は滑稽。笑みを返した。


 なぜ笑っているのか分からず、蔓を操るために上げた左手を止める。

 瞬間、隙を逃さぬように、フェアズの手に鎖が巻かれた。


『っ、なっ!?』


 動揺の声を漏らし、すぐ俺の横にいるリヒトを見てきた。


 くくくっ、無様だな、フェアズよ。


「準備は、整った」


 ここからは俺の出番、これで終わらせてやるよ。


「フェアズ、お前の身体にある強い魔力、この俺がもらってやるよ」


 リヒトが出している鎖を俺も握ると、リンクが覚悟を決めたように目を閉じ、力を増幅させ始めた。


 リンクの身体が神々しく輝き出すと、連動するように鎖も同じ輝きを醸し出す。


『な、なによこれ!!』


 逃れようと藻掻くも、結果は先程と一緒。簡単に振り払う事が出来ず、腕に鎖が食い込む。


「リンク、頼むぞ」

『はい。管理者フェアズと主の魔力を繋ぐわよ!!!』


 っ、来た。

 体に、強い魔力が流れてくる。


『魔力を繋げるですって!? そんな事、出来る訳がっ――――』

「出来るんだよ。おめぇの魔力は、もう俺のもんだ。自由に使わせてもらうぞ。スピリト、お前の大好物の魔力、今日だけはたんまり食っていいぞ?」

『ありがとうございます、ご主人様ぁぁぁああ!!!』


 スピリトは大喜び、当たり前か。

 こんだけ美味そうな魔力が大量に送られるのだから。


「んじゃ、魔法を放ちますか。――――――flameフレイム

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