第116話 無謀に見える作戦だが、一番現実的でもある
「カガミヤさん、どうするつもりですか?」
「魔力がもう半分くらいまで減っているような気がするから、あまり強力な魔法は使えないし。使うとしたら、倒れてもいいように必ず仕留められる一本でやらなければならない。リンクの空間魔法が結構魔力吸い取られるから、迂闊に使えん」
くそ、厄介なことになった。
もう説得なんていう物は出来ないだろう。
力でねじ伏せるしかないが、俺達全員魔力がだいぶ減ってしまっている。
もう、無駄には使えない。
「――――アビリティ」
『はい』
「何か、この場を切り抜けられる方法や魔法はない?」
『あります』
「やっぱりアビリティでもむずっ―――教えろ今すぐに!!」
半ば諦めで聞いてみたが、なんと、あると言うではないか!
これに対しては俺以外の人もびっくり、全員で俺の指輪を見つめた。
『ふふふっ。もう私は、誰にも負けない力を手に入れたの。魔力が莫大に上がっているのよ!! この世界は魔力量がすべて──弱者は強者である私にひれ伏しなさい!!!』
フェアズが何やら言っている時に、アビリティから作戦を聞いた。
聞いたのだが、それに対してみんな驚き。
「そんな事、出来るのか?」
『やらなければ、他に方法がありません。ですが、他の方法を考えろというのなら、主の命に従います』
「いや、時間がない。やる」
とはいっても、今の作戦には今気絶しているリンクの力が必須。起こすにはまたしても魔力が必要。
魔導書に込められている魔力は残り僅か。それを使い、リンクをたたき起こすか。
その間はグレール、アルカ、アマリアでフェアズを相手してくれるらしい。
リヒトは俺と共に作戦を実行しないといけないため、待機。
俺は、覚悟を決めなければならない。
そう、爆発する魔力を抑える覚悟を…………はぁ。
ため息を吐いても仕方がない。
これが一番現実的なわけだし、フェアズをアマリアに返す事も出来る。
みんなが満足できる未来の為、みんなが納得できる未来の為――――――報酬ががっぽりもらえる未来の為、俺はグレールと行った修行を思い出し、フェアズを元の姿に戻す。
アルカ達と目を合わせ、タイミングを図る。
全員が頷くと、フェアズも笑みを浮かべながら、俺達を見下ろし、地面にまでつく程長く伸びた鞭をビタンと地面にたたきつけた。
『何を企んでいるのかわからないけれど、今更無駄よ。私の魔力はここに居る誰よりも強い』
「それはどうだか。言っておくが、魔力が多ければ多いほど良いという訳ではないぞ。魔力は適度が一番調整しやすいし、扱いやすい」
多すぎても慣れなければ扱えないし、使いにくい。
最初は俺も、自身のチート魔力に悩まされ――今もだわ。
『負け犬の遠吠えかしら?』
「それでもいいよ。負け犬だろうとなかろうと、結果がすべてだ」
「それに関しては、同感ね」
空気が、変わる。
フェアズも、動き出すようだな。
それぞれが構えると、最初に動き出したのは、機動力のあるアルカ。次にグレールが走る。
二人が木を使い、空中にいるフェアズに向けて跳びあがった。
『無防備に私へ近づいて来るなど…………』
「無防備なわけないだろ!!!」
アルカの手にはいつもの剣が握られている。反対側から跳んでいるグレールも、同じく剣が握られていた。
どこ見て無防備と言ったのだろうか。
『無防備じゃない。武器なんて、どうせ無くなってしまうのだから』
言うと、フェアズが鞭を持っていない側の手を上げた。
すると、二人の背後から一本の蔓が伸びる。
「アルカ、グレール!! 背後!!」
――――ちっ、叫ぶが遅かった。
二人は手に握っていた剣が弾かれ地面に落ちる。
『これで、本当に無防備ね』
にんまりと口の端を上げ、鞭を持っている手を勢いよく振り上げた。
しなる鞭は、フェアズの動きに合わせ動き始める。
振り上げられる時、アルカが身軽な体を活かしふらりと躱す事が出来たが、上から叩き落される鞭までは避けられない。
フェアズがアルカをあざ笑うように見ると、鞭はアルカへと振り下ろされた。
「無防備……ねぇ…………」
アルカが無防備に立ち向かう訳がないだろう。
いや、時々後先考えないで突っ走る時があるが、今回はしっかりと頭で考えてやっているぞ。
「
アルカが言うと、地面から大きな拳が現れ鞭をはじき返した。
『なるほど、まだ魔力が残っていたのね。でも、もう限界かしら?』
下から見ていてもわかる。アルカはもう限界が近い。
昨日から気を張っていただろうし、仕方がない。
「俺はまだいける!! 馬鹿にするな!!」
はぁ……。だから、感情だけで突っ走るなって………。
不安はあるが、グレールが何かを企んでいる。任せてもいいだろう。
あいつの武器は自身の魔力で作っているから、正直弾かれてたとしても痛くもかゆくもない。
俺は二人の戦闘を見守りつつ、ズボンのポケットに入れたリンクに魔力を注ぎ、起こす。
急がないと、二人が危ない。
「二人の事は気にしなくていいよ。僕も助けに入るから」
「助かる、アマリア」
俺の不安を汲み取ったらしい。
アマリアが俺の前に出て、二人の行方を見ていた。
アマリア、信じるぞ……。
俺はリンクを手に乗せると、鼻提灯を出してぐっすり眠ってやがるこいつに魔力を注ぐ。
「リンク、お前の力が必要だ。起きろ」
右手をリンクに向けてかざすと、待っていましたというように体内にある魔力がどんどん吸い取られ始めた。
だが、一気に吸い取られているわけではないから、体への負担はあまりない。
二人を見上げると、意外にも互角に渡り合っている。
アルカは木を蹴り駆け回り、グレールが隙を突きフェアズに氷の剣を振りかざす。
アマリアは二人が見える場所を陣取り、周りで隙を伺っていた蔓を音魔法で引きちぎっていた。
こっちの優位には見えるが、何が起きるか分からない。
早く、早く起きてくれ。今のうちに――…………
『――――――ん』
「あっ」
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