第114話 新たな魔法は正直土壇場でやりたくないけど仕方がない
「まさか、私の魔法を全て凍らせるなんて。許さないわ。私の力はこんなものではないのよ。もっと、もっと強いの。貴方達人間とは違うんだから!!」
右手を大きく振り上げたかと思うと、新たな蔓が地面や周りに立つ木から伸びフェアズの近くに集まり出す。
「あちらも凍らせますか?」
「凍らせたいが…………」
言うと、グレールがすぐさま凍らせるため剣を先ほどと同じように突き出した。
「わかりました。
先程までと同じように冷気が噴射。
フェアズに集まる蔓を凍らせっ――――
「こお、らない?」
まったく、凍っていない、だと?
「先ほどまでのは全く本気ではなかった。そういう事ですね」
「グレールの魔力が、フェアズに負けたという事か?」
「そういう事です。ここからは私、あまり役には立てないですね。知里様とリヒト様次第となるかと思います」
鉄紺色の瞳を俺達に向け、冷静に言ってくる。
こいつの言う通り、魔力量が今回の勝敗を決めるのなら、チート級の魔力を持っている俺が頑張らなければならねぇか。
「アルカは俺のカバー、スピリトも俺から離れないでくれ。リヒトは
「カガミヤはどうするんだ?」
「俺は新しい力を試しつつ、リヒトが
顔近くにいるリンクを見ると、偉そうに鼻を鳴らし腕を組んでいた。
「今回はお前の魔法にかかっているからな、俺との相性が良いものを選択したんだ」
『ふん! まさか、私に様々なものを”繋げる”、空間魔法を与えるなんて。属性は何になるのかしら…………』
「わからん、だが、出来たのなら別にいいだろう。お前は特別製の精霊なんだろ? お前だから出来たんだ。深く考えるな」
『そ、そうよ! 私は他の精霊達とは違い、希少の中の希少! このような事は出来て当然なのよ!!』
高笑いしているところ悪いが、俺達も準備をしなければならない。
フェアズの準備が整っちまう。
「――――――ん?」
「四方に、蔓の竜が…………」
大小様々だが、五つの竜が作り出された。
目らしき場所は全て、俺達へと向けられる。あれを一斉に襲わせるつもりか!?
「今更怯えても無駄よ、私は強い。私は、貴方達のような凡人とは違うのよ!!
生き物のように動き回る竜が、一斉に俺達に向けて放たれた!?
まずい!!
「ダークフレっ――――――」
「
俺が魔法を出すより早く、アマリアが自身の魔法を発動してくれた。
たすかっ――
────っ!? 耳鳴り!!
モスキート音に近い音が辺りに響き渡って、耳が痛い!!
これは、なんの魔法だよ!!!
「あっ…………」
アマリアの魔法と、フェアズの魔法がぶつかり合っている。
そうか、管理者同士だから魔力は互角、押し合いになっているのか!
「っ! ~~~~~~~!!!」
にしてもだよ!!!
この音、キツいって!!
「辛いとは思うけど、我慢して貰えると助かる。僕の属性は”音”だから、四方に影響するんだよね」
「それを早く言えよ!!」
そうだったのか、アマリアの属性は音。
空気を音で震わせ、相殺している感じか?
「邪魔をしないで!!!」
っ、フェアズの勢いが強くなった。押され始めている。
アマリアは表情一つ変えない、想定内なのか?
『主! 早く私を使い、この耳障りな音をどうにかしなさい!』
「うるせぇよ!! わかってるっつーの!!」
アマリアが抑えてくれている今しか、リンクの魔法を試せない。
やってやるよ。初めてだからちょっと不安はあるが、やるしかねぇ!!
「行け、リンク!」
『わかったわ、行ってくるわよ!!』
俺の声に合わせ、リンクが小さい体を利用し木々の間に入り姿を消した。
「アビリティ、ガトリング砲みたいに、
『あります』
魔導書が勝手にページを開いたかと思えば、すぐに止まった。
「────これか」
文字が光り、教えてくれる。
これを、リンクの準備が整ったら放てばいいのか。
チャンスをものにするため、アマリアとフェアズを見ていると、徐々にアマリアが押され始めていた。
「アマリア、大丈夫なんか」
「大丈夫ではないよ。音魔法は基本、全体への攻撃だから力が広がってしまうんだ。一つに集中できない分、威力が弱い。範囲攻撃を得意とする属性なんだよ」
全体攻撃は、雑魚相手なら有効だが、ボスとかだと威力が出せないからこちらが不利になる。ゲームあるあるだな。
って、やばい。
フェアズが作り出した竜に押され始め、アマリアも顔を歪め始めた。
おいおい、まだか、リンク。
魔法が強い分、力の制限があるから準備に手間取ってしまうのは仕方がないが、それにしても早くしてほしい。
アマリアが力尽きちまったら、さすがに危険だ。
「っ、まだ知里は動けない? フェアズの力が徐々に強くなっているから、限界近いよ」
「待ってくれ、もう少し、もう少しだから…………」
リンク、早くしてくれ。
「これ以上邪魔をするなら、アマリアでも殺すわ!!」
っ! しまった!!
アマリアの周りに複数の蔓、しかも普通の蔓ではなく刃のように鋭く尖っている。
あんなもん、化け物集団に所属しているアマリアでも、もろに食らっちまったら死んじまうだろ!
すかさず俺が魔法で蔓を燃やそう考えると、後ろから魔法を唱える声が聞こえた。
「
声と共に、土の剣が辺りに広がる蔓を切っていく。
これは、アルカの魔法だ。
「カガミヤ! アマリア様は俺が守る! 早くフェアズを何とかしてくれ!」
次々とアルカが蔓を切っていく、これなら大丈夫そうだな。
『チサト様、準備ができたようです』
「────了解」
アビリティの声、言葉と同時に魔力を高め新しい魔法を放つ準備。
俺の右手付近には、ブラックホールが出現していた。
「――――
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