第113話 日本語って難しいなと本気で思ったのは今回が初めてかもしれない
フェアズが魔法を唱えると、地面から複数の蔓が出現。俺達を拘束しようとしてきた。
「ちっ、めんどくせぇなぁ。
右手から炎の竜を出し、四方から迫りくる蔓を燃やし尽くす。
俺に合わせて炎の竜は動いてくれるから、簡単に燃やす事が出来た。
だが、数が多く、燃やしても燃やしても意味はない。
やっぱり、最初に言っていた通りグレールに頼んだ方がいいな。
イタチごっこだけはごめんだ。
後ろにいるグレールに目線を向けると、頷いた。
「では、行きますね」
「あぁ、任せたぞ」
「はい」
グレールが剣を構え、狙いを定める。
空気が変わる、集中力を高めているらしい。
「行きます」
グレールが動き出すのと同時に、炎の竜を消す。
燃え散った蔓は地面に落ちるが、まだ残っている蔓は俺達へと向けられる。
「
剣を前に突き出すと、白い冷気が勢いよく噴射。
周りを囲う蔓は次々と凍り付く。
「すごい…………」
「っ、リヒト! 油断するな!」
噴射されている冷気部分しか凍らない、四方から向けられている蔓を全て凍らせることが出来ていないんだぞ!
――――――ザシュッ
「あ、アルカ、ありがとう」
「おうよ!」
リヒトの後ろから迫ってきている蔓を、隣にいたアルカが切り裂いた。
ほっとしていると、アマリアが隣に……。
「知里、フェアズの動きを封じる魔法とか、ある?」
「鳥籠に閉じ込めるものならあるが、そういう物ではなくてか?」
「出来れば、身動き一つとれなくなるようなものが欲しい」
「今すぐはないな」
拘束魔法で俺が使えるのは、せいぜい鳥籠に封じる事のみ。
身動き封じの魔法は今すぐにはわからない。
「困ったなぁ」
「俺は出来ないが、拘束魔法を得意とする人なら知っているぞ」
「…………あぁ、そういえば、いたね」
アマリアも気づいたらしく、同時に後ろにいるリヒトを見る。
いきなり俺達が振り向いたことに驚いたリヒトが、何度か瞬きをし、自身を指さす。
「わ、私?」
「あぁ。今、拘束魔法を使えるのはリヒトしかいない。だから、任せたいんだが、やれそうか?」
「やれそうかと聞かれても……。私なんかが、管理者であるフェアズ様を捕らえるなんて………」
やっぱり、自信ないよな。
普通に出来るとは思うが、無理やりやらせても危険が倍増するだけ。
他の方法を試すしかないか。
アビリティに聞けば、何か使える魔法を教えてくれるかもしれないし。
そんな事を考えていると、アマリアがリヒトの前まで移動し、地面に足を付けた。
どうしたんだ?
「君、確かSランクのダンジョンにいたモンスター、ワイバーンを拘束魔法で動きを封じていた実績があるよね?」
「っ、え、は、はい。何で知っているんですか?」
「ダンジョンを管理している管理者から話を聞いていたの。村長の件があったから情報共有。まぁ、今はどうでもいいよ。そんな事より、君はワイバーンを拘束しただけでなく、アルカの足場を作ってあげるという連携技も習得しているみたいだけど、あってる?」
「は、はい…………」
「普通、拘束魔法をそこまで扱える冒険者はいないんだよ。ワイバーンを拘束した実績だけでもすごい。君は、自分が思っているより何倍も実力を持っている。管理者である僕が言っているんだよ、もう少し自分を信じてほしい」
アマリアが言うと、リヒトは目を開き左右非対称の瞳を見つめた。
そのあと、おずおずと俺の方を見てきた。………え、見てきた? 俺を?
「…………え、俺?」
「そこは何か声をかけてあげるのが、モテル男なんじゃないの? 知里」
「黙れ。……えぇーっと。何を俺に求めているのか知らんが、俺はお前に拘束魔法を頼みたいという気持ちはあるぞ。これは、実力を見て言っている事だ」
「でも、私は今まで何も役に立っていないんですよ? 実力も何も…………」
「無理やりはさせない、危ないからな。でも、リヒトが拘束魔法を使い、全力でフェアズの動きを止めてくれれば生存確率は大幅に上がる。アマリアの願いも叶えられるかもしれない。だから、一度、やってみないか?」
問いかけると、リヒトは顔を俯かせてしまった。
もう、時間がない。
グレールも強いが、相手は化け物。一人で相手させ続けるのは辛いだろう。
フェアズを見上げると、顔を真っ赤にし怒り狂っていた。
次の行動を起こしてきそうだな。
「リヒト、時間がないんだ。早く、やるかやらないかを決めてくれ。出来るか出来ないかは考えなくていいから!」
「っ。出来るか、出来ないかは考えなくても、いいんですか?」
「あ? いや、当たり前だろうが、出来るか出来ないかを考えたところでやってみないと最終的にはわからん。最初から俺が聞いているのは出来るかではなく、やるか、だろ。勝手な解釈をするな」
俺の意図が通じていなかっただけなのかこれ!!
というか、早く決めないと、グレールの魔力もそこが尽きるだろ!
「――――――やります」
「おっ、なんの言葉がお前に火を点けたのかわからんが、やるのなら助かるわ。失敗してもいいが、自分の言葉には責任持てよ?」
「はい!」
リヒトの覚悟は決まったみたいだ。
精霊二人の力を使って、必ずあいつをアマリアの元に返してやる。
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