第104話 女性が怒るとここまで怖いなんて思わなかった
何とかリヒトの怒りを抑え、今はベットで俺を真ん中にヒュース皇子とアルカに囲まれ座っている。
貝殻の椅子には、半泣きのリヒトとロゼ姫が俺達と見合わせる形で座っていた。
「いてて……」
「さっきのは痛そうだったな。まさか、拘束魔法をあそこまで巧みに操れるなんて思わなかった。ぜひ、私にも教えていただきたい」
「やめてくれ……。あれは女が覚えてはいけない魔法だ。覚えてしまったからこそ、俺の腕には複数の鎖の跡が出来ているんだぞ」
まだ鎖魔法の跡が残されて痛い。
さっきの鎖、炎で燃やそうとしても意味はなく、力任せに振りほどこうとしても、何重にも鎖を重ねられ、両手両足を掴まれてしまい振りほどけなかった。
それだけならいいんだが、あいつの怒りはそれでは終わらなかったのだ。
「俺って、そんなに最低なこと言った?」
リヒトは動けない俺に「最低」だの「女心がわかっていない」などと。
何度も何度も、さんざん言われてしまったのだ。
拘束魔法で動けなかったから耳を塞ぐ事も出来ないし、心にグサグサと、言葉のナイフが刺さったんだよ。
知っているか? おじさんの心は豆腐より脆いんだぞ? 若者にそんな誹謗中傷されてしまったら心がぽっきり折れてしまうんだぞ? 知っていたか?
おじさん、心に大ダメージ。
「落ち込んでいるところ、申し訳ありません」
お、ロゼ姫が手を上げ何かを話そうとしている。
もうそろそろ本題に入らないと思っているんかな。おじさんの傷ついた心など興味はないという事か。
わかったよ、早く本題に入ろう。
俺も早く心のダメージから気を逸らしたい。
「先ほどのは確実にチサトさんが悪いと思いますので、リヒトさんは悪くないです」
「おじさんの傷ついた心に塩を塗って楽しいかい?
「カガミヤ? なんだ、その口調。なんか、変だぞ?」
まさか、ロゼ姫から追撃されるとは思っていなかったから、さすがにビビりまくって変な口調になってしまった。
「はぁ……。しょうがねぇだろうが。俺は人の心中を察するのは、何よりも苦手んだよ。なんとなく落ち込んでいるのかとか、明らかに怒っているとかはさすがに分かるが、人の微妙な感情とかは無理なんだ、許せって……」
「リヒトさんは一体、この人のどこが好きなのでしょうか……」
顔を逸らして何やら毒を吐いたぞあの姫。
グレールはいつもの事なのか動じていないし、アルカとヒュース皇子は聞こえていないみたいだからキョトン顔を浮かべているし。
流石に隣に座っていたリヒトは聞こえたらしく、赤面で「しぃー!!」とか言っている。
今更恥ずかしがっても遅いだろう。
いくら俺でも、お前が俺の事を好きなのはわかっているぞ。だから、あえて期待持たせないような態度を取っていたんだろうが。
「まぁ、今回の事はもう水に流そうぜ、な?」
「それは貴方の台詞ではないかと思います」
「今の言葉も、姫さんの言葉ではないと思うんだが?」
「くっ」
お、苦虫を潰したような顔を浮かべている。
「あ、あの。私の事なら大丈夫なので、心配してくださりありがとうございます」
「でも、まだ悲しいのではないですか? 大丈夫ですよ、私がしっかりと守ってあげますからね?」
「え、守る?」
あ、あれ? ロゼ姫、リヒトの頬を包み込み、真顔で見つめている。
しかも、守ってあげるって、二人の間に何があったんだ?
「ごっほん。ロゼ姫、今日はもう解散したいと考えているのですが、いかがでしょう」
「…………そうね、今日はもう体を休めましょう。明日また模擬戦を行うのでしたら、今はしっかりと体を休めてください。今の、この部屋はチサトさん、アルカさんでお使いください。リヒトさんとヒュース皇子はまた別の部屋をご用意します」
男女でしっかりと分けてくれるらしい。よかった、よかった。
この後は飯を食って、体をゆっくりと休める事が出来た。
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