第94話 管理者の実態はわかってきたけど、ここの性格まで絡んでいるとさすがにお手上げだ

 アマリアとフェアズの関係を聞くと、リヒトから強い視線。

 顔を逸らしても意味はなく、諦めて詳細を話し出してくれた。


 向けられていない俺でも、期待の眼差しは感じていたからね。

 直に向けられているアマリアは、もう突き刺さっていただろうなぁ。


 大きなため息を吐いていたアマリアの心中、お察しします。


「別に、期待しているようなものはないよ。人間だった時に出会って、管理者になってから振られた。僕はまだ好きだから諦めていないけどね」

「のろけはどうでもいいけど、人間だった頃というと、いつ?」

「三百年以上前」


 桁がもはや化け物。


「それってつまり、三百年以上も一人の女性を愛し続けたという事ですか?」

「そうだね、僕にはフェアズしかいないよ。他の女性と交際は考えられない」


 リヒトの質問にアマリアが平然と答えると、歓喜の声を上げ俺を見てきた。


 な、何か伝えようとしているような目線だな。

 これは、何か答えようとするとめんどくさいから完全無視を決め込むが吉。


 目線が痛いなぁ、早く話題を変えよう。


「んー、人間の時は交際どこまで進んでいたの?」

「それはどういう意味で聞いてるの?」

「年齢指定無い方で聞いてる」

「それなら同居までかな」

「ふーん」


 おい、なに赤面してんだよリヒトとアルカは。

 さすがに年齢指定アリの方は聞けねぇよ。聞くとしてももっとダイレクトに聞くわ。

 遠回しな聞き方した方がなんとなく気まずいだろう。


「結婚とかはしなかったのか?」

「……………………そこまでの、経済的余裕がなかったんだよ」

「うわぁ…………」


 経済的余裕がなかった。つまり、お金がなかった。

 今の俺なら自害するレベルかもしれない。


 、アマリアも俺と同じ気持ちという事だよな。

 金がない生活、何を楽しみにすればいいんだよ。俺は生きていけない。


「世界滅亡みたいな顔を浮かべているけど、そこまで困窮してたわけじゃないよ。普通の生活はしていたし、一日三食は食べれてた。ただ、無駄なお金を使えなかっただけ」

「結婚は、無駄なお金になるんですか…………」

「結婚はしなくても生きてはいけるけど、食事はないと生きていけないでしょ? その二つを天秤にかけただけだよ」


 リヒトはそういう所ばかり質問するなぁ。


 俺が顔を向けると、なぜか目が合ってしまった。

 すぐに逸らすと、リヒトがショックを受け落ち込んだ。


 い、いやぁ、ここで変に期待させるわけにもいかないだろ。

 俺は犯罪者になる気はないし、諦めるんだな。


 …………ん? なんか、ぼそぼそ、リヒトが何かを呟いてる?

 えっとぉ、なになに?


「カガミヤさんも、結婚とかでお金は、使いそうにないですね…………」


 …………その前に相手を作る予定はないから安心しろ。

 お金を使ってもいいと思えるような相手に巡り合えない限り、俺はずっと独り身だ。


「ほっといてもいいの? 君に好意を持っているように見えるけど」

「変に期待させる訳にはいかないからな、このまま無視を続ける」

「へぇ、優しいね。人の本質をしっかりと理解して行動出来ている。知里は何があっても自分の道を間違えないような気がするよ」

「よくわからんが、今はどうでもいい。今は俺よりお前らの事だ。フェアズが少しでもお前に好意を持っているのならそこを利用したい。名前を借りるくらいならいいだろ?」

「それは構わないよ。ただ、好意はないと思うよ? 最近は声を掛け合うようにはなったけど、いつでも機嫌悪いしね」


 アマリアは自分に向けられている感情に鈍そうだから、今の言葉はあまり頼りにならないな。


 フェアズとはあまり話をしたくないけど、やっぱり本人と話さないと交渉は出来ないし、動いてくれないと、グレールが避けたいと言っていた方法をしなければならなくなる。

 出来れば、俺もやりたくない。だから、絶対に協力してもらう。


「アマリアは今でも付き合いたいと思っているんだよなぁ?」

「出来るならね。管理者だからといって、恋愛をするなと言われていないし」


 恋愛が絡むと、人の本心は見えやすくなる。

 フェアズはアマリアと同じく俺の事を監視しているのかわからんが、もし監視しているのであれば、どうすればあぶりだす事が出来るだろうか。


 今回出てきたのは、感染症の件もあったからの可能性があるだろうし、俺がダンジョン攻略しているからといって毎回出てきてくれるとは限らない。


 土地に危険があれば、さすがに出てきてくれるのだろうか。


「なぁ、ギルドの管理って、冒険者の管理も任されているのか?」

「ん? まぁ、そうだね。ギルド内に登録されている冒険者の管理は僕がしているよ。それがどうしたの?」

「アマリアは人の管理もしているんだよな?」

「あぁ、そういう事? これはその人の性格的なものがあると思うよ。僕は人を無駄に殺したくないの、だから管理しているだけ。正直、管理者の仕事をするだけなのなら、登録している冒険者はどうなってもいいんだよね」


 これはアマリアの性格が出ているのか。

 フェアズは管理者としての務めしか果たしていないから、人がどうなろうと知ったことではない。


 管理者に付いて分かってきたけど、管理者一人一人の性格まではさすがにわからない。

 フェアズの説得は、アマリアの名前を使いながらやるか。


 今のアマリアには、管理者について聞くだけ聞いて、ヒュース皇子達と情報共有するか。

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