第93話 まさか元恋人なんて…………

 アマリアが受付嬢を制してくれたおかげで、俺は無事にセーラ村に滞在していた時、一時的に世話になっていた部屋にたどり着くことが出来た。

 

 中は何も変わらんな。シンプルな椅子にベッド。落ち着くわぁ。


 椅子に腰を掛けると、アマリアとリヒト、アルカも椅子に座る。

 最初に口を開いたのは俺ではなく、意外にもアマリアだった。


「さて、ここに来た理由、僕でしょ?」

「そうそう。最終目的は違うがな」

「フェアズかな」


 は? やっぱりこいつ、俺達の事を監視してんだろ。ここまで的確に当ててくるなんて……。

 高性能マイクとカメラがどこかに仕込まれているのか? だが、毎日風呂入っても体に違和感ないし。


 あ、服? 戦闘服は洗濯しているがいつも一緒。

 わぁ、戦闘服か? 戦闘服に何か細工がされているのか?


 ローブをまさぐっていると、アマリアが普通に続きを話し出した。


「監視はさせてもらっているけど、体に何か細工とかはしてないよ。単純に遠くから見ているだけ」

「それはそれで嫌なんだが?」


 私生活とか覗かれているって事か? 

 最悪なんだけど、どこで見られているのかわからないから対策のしようがない。


「一つ約束しろ。絶対にプライベートを覗くな。俺が一人でいる時とかなおさら」

「見ないよ。それより、フェアズについて聞きたい事があるんじゃないの?」

「そうだな。俺のプライべーッ――――」

「見ないってば。今までも見ていないから大丈夫だよ。君が冒険者としての行動をしている時だけだから、早く本題に入らせて」

「はい」


 これ以上しつこくすると、本気でぶちぎれそうだから何も言えない。

 やっぱり、アマリアが一番怖いかも。


「まず、再確認になるんだが、フェアズは死んではいないよな?」

「死んでいないよ。危険な状態ではあったけど」

「そうか」


 よし、確定だ、あいつは生きている。

 なら、次のステップに行こう。


「なら、フェアズの魔法を教えてほしい。あそこから逃げきったのって、おそらく魔法で緊急脱出したんでしょ。方法を教えて」

「それは不可能」

「えぇ……。それは駄目なの?」

「駄目。僕はまだ死にたくない」

「あぁ…………」


 アマリアが目を逸らして言っている。

 口調がいつでも冷静だから嘘なのか本当なのかいまいち疑う所はあるけど、目線とかでわかるな。

 こいつの場合は、これからは目線を見て話そう。人の目を見て話すの苦手だけど。


「なら、今どこにいるかとかは答えられる?」

「居場所という居場所があいつにはないから、正直僕にもわからない。勘で言うしかないよ」

「勘か……」


 …………本当に勘なのかぁ? 疑わしいなぁ。


「見ているだけじゃ答えはわからないよ。僕には透視も効かない、残念だったね」

「ちっ。透視を使おうと思ったのに……。そうだなぁ……。あとは、あいつの弱点とかは?」

「答えると思う?」


 普通なら答えないよなぁ。ダイレクトに聞きすぎたか。


「答えないとは思うけど、ひとまず聞いてみようと思ってな。最初の言い方的に、俺がこれからやらなければならない事とかわかってるんだろ? なにか俺に役立つ話せる情報とかないの?」

「素直すぎるのも考え物だね。もしかして、君は駆け引きとか苦手? そんなことないと思うんだけど…………」

「アマリアとは素直に話した方が吉と、俺の直感が言っている」


 アマリアには素直に言わないとするりするりとかわされそうだしな。


「答えられる事ねぇ。んー……。フェアズと僕が元恋人同士……とか?」


 ……………………?


 理解が出来ずアルカとリヒトと目を合わせ頭をリセットしていると、やっとアマリアの言葉を頭の中で理解出来た。


「「「――――――はぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!?!?」」」


 フェアズとアマリアが元恋人!? 嘘だろ!? 

 というか、恋人とかそういう関係に興味あるの!?


「あと伝えられるのは…………」

「いやいやいや、今のは正直関係ないような気がっ―――」


 いや、元恋人? 

 元という事は、今は別れているという事か。


 二人の関係、ちょっと気になる。

 そんで、アマリアが協力してくれたら、今回の件、すぐに方が付きそう。


「何か企んでいるみたいだけど、僕は協力しないからね、絶対に」

「やっぱりお前、俺の心中読んでいるだろう」

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