第86話 きもいことを言われた気がするが気のせいと思ってシカトする

 あまりこいつと話したくないという気持ちが伝わってしまったのか、カケルは黙っている俺をジィっと見てきた。


 な、なんだ? まさかこいつ今、透視使っているんじゃないだろうな。俺の心情を読んでいるのか?

 それは絶対にやめてくれ、別に聞かれてもいいが、何となく嫌だ。


 一人で目を逸らし焦っていると、思ってもいない質問が飛んできて、言葉を詰まらせてしまった。


『管理者、全員を倒したいかい?』

「っ、は? 急になんだよ」


 管理者を倒したいか、だって? んなもん、当たり前だろうが。


 負けたまま引き下がるなんてごめんだね。俺は、負けず嫌いなんだ。

 絶対に最後は勝って、俺に金を払わせる。管理者全員の所持金全てを貰ってやる。


「俺は必ず管理者のアマリア以外はひとまず倒す。アマリアは正直、変に関わると返り討ちされそうだから様子見」

『なぜそこは自信を無くすんだ。俺の魔力と魔法を受け継いでいるだろう。アマリアって確か、ギルドを管理している、管理者の脳。戦闘員じゃないから倒せるはずだよ』


 あ、そうなんだ。管理者の脳と言われているんだ、知らなかった。

 確かに頭は良さそうだもんなぁ、餓鬼の見た目しか知らないけど。


『アマリアより、アクアとクロヌの方を警戒した方がいいと思う。クロは俺も勝てたから、お前さんが魔法に慣れればすぐに勝てると思う』

「クロヌ? クロって、アクアの腰巾着?」

『あぁ、まだクロヌに会ったことなかったか。そのうち会えると思うから気にしなくてもいいよ。あと、クロの事を今みたいに言わない方がいいよ。クロはあくまでアクアの監視役みたいだから、腰巾着と言うとぶちぎれる』


 あ、そうなのか。って、え? クロはアクアの監視役? でも、アクアを警戒しろと言っていた。


 クロは倒せるから、特に警戒はいらないと言っていただろう。

 普通、監視ならアクアより強い奴を監視に付けない? 


『管理者についてはアビリティにゆっくり聞くといいよ。今は管理者に本気で勝ちたいと思っているのかを聞きたい』

「ころっ――倒したい」

『色々素直なのは俺、好きだよ。やっぱり、アビリティに頼んでよかった。お前さんみたいな逸材を連れてきてくれた。俺の勘は当たっていたらしい』


 な、なんか、笑顔でそんなことを言っている。


 アビリティはカケルに口止めされていると言っていたから詳しくは聞けなかったけど、今なら聞けるか?

 こいつなら話してくれるような気がする。


「なぁ――」

『あ、アビリティに口止めしていたことを俺に聞こうとしても無駄だよ。知りたかったら、管理者を倒してからもう一度聞いて』

「…………せめて、お前を封印解除したらとかに条件を緩和してくれない?」

「無理☆」


 語尾に星を付けるな!! むかつく!! 


『まぁ、いいや。管理者を本気で倒したいと思っているのはわかったから、心から安心したよ』

「勝手に安心するな」


 なんだよこいつ、なんか手玉に取られている感じがして腹が立つ。


 ――――――トンッ


「…………あ?」

『期待している。俺の封印を解き、管理者を全て倒してくれると』


 俺の胸を拳で叩くと、触れている部分が淡く光り出す。

 大きくなる光は俺の視界を覆い、思わず目を閉じてしまった。


『見当を祈る。異世界から召喚された、次なる英雄よ――――――』


 最後に聞いた言葉で、俺の身体に浮遊感が襲い、意識が遠くなっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る