第68話 透視ってこんな感じなのかぁ

 表通りに行き、アルカが人に聞きギルドの場所に向かう。

 その間俺は、始終顔が青ざめていただろう。だって、気持悪いんだもん。


「あともう少しの辛抱だ、頑張れカガミヤ」

「あぁ、あともう少しで天国だよという意味で頑張ってってか。オアシスのために頑張るよ」

「シャレにならん事を言うな!!! ギルドだよ!! 天国に行くな!!」


 アルカの叫び声で耳を傷めたのと同時に、ギルドっぽい建物を発見。あれか?


「お、あれみたいだな。さすがグランド国にあるギルドだな、立派」


 目の前まで行くと本当に大きい。中に入らずとも受付がある。

 一人の女性が立っている。その隣にある扉は、おそらく銀行に続いているだろう。


 掲示板も綺麗なまま、色んな情報が貼られている。

 紙の端が破れているのはよく見るのに、ここまで綺麗なのもすごいな。


「もしかして、冒険者様ですか?」

「あ、あぁ」

「依頼確認でしょうか?」

「まぁ、そんなもんだ」

「かしこまりました。ライセンスをお借りしてもよろしいですか? ランクなどを確認させていただきます。そこから依頼を絞らせていただきますね」


 しっかりしてんなぁ。いや、これが一般的なギルドの案内人なのかな。今までのが変だったのか、なるほど理解した。


 でも、今回の俺達の目的は依頼発注ではない。


「俺達は違う依頼を遂行している途中だ、だから受ける訳ではなく…………」

「そうなんですか? でしたら、確認とは一体何でしょうか」

「えっと…………」


 アルカが助けを求めてくる。

 はぁ、まぁいいけど。


「俺達は偶然来ただけなんだが、なんとなく気になる案件が合ってな。少しでも情報が欲しくて来た」

「何でしょうか?」

「この街では、捨てられた場所があるみたいじゃないか。そこに送られるのは、原因不明の病にかかった者だけなんだろ? それの原因を知りたい」

「また、ですか…………」

「また?」


 ”また”という事は、今までも同じ質問をされてきたという事か。でも、今だ解決されていない。つまり、冒険者ではどうする事も出来ないって事か。


 やっぱり、今回のは俺達ではどうする事も出来ない案件って事でよくね?


「えぇ、またなんですよ。確かに依頼は来ています。でも、どの冒険者も、途中でこの依頼から逃げてしまうのです。SSランクの冒険者であろうと」


 SSランクの冒険者でも?


「SSランクの冒険者でも解決出来なかったのか?」

「以前まではAランクに設定されていた案件なんですが、Sランクの冒険者が攻略出来なかった事により、今ではSSランクに設定されているのです」


 なるほどな、結構ランク高い。


 アルカが補足で質問してくれるのは楽でいいな。

 説明俺、補足質問アルカ。これからもこの役割で行こうか。


「それはAランクになった俺達でも受けられるのか?」

「受ける事態は可能です。ですが、途中で投げ出される事が多くなった依頼ですので、もし攻略不可と判断なされた場合、罰金があります」

「罰金だと!?」


 あ、思わず大きな声を出してしまった。だが、そんなの今はどうでもいい。


 まさか、罰金が発生するなんて。そんな依頼を受けるのはどう考えてもおかしい、やめた方がいいだろう。


「えっと。仮にやめたとしたら罰金が付くみたいだが、逆に報酬はどうなんだ? それだけ難しいのなら、その分報酬は弾むんじゃないか?」


 アルカの奴、まさか俺が報酬次第で動くとか思ってんじゃないだろうな。

 残念だが、今回は動かんぞ。罰金があるのならなおさらだ。


「はい、通常の報酬の五倍と今はなっております」

「乗った」

「カガミヤって扱いやすいのか扱いにくいのかわからんよな」

「うるせぇわ」


 まんまと乗せられちまったな。

 だが、通常の五倍だろ? そんなもん、もらうに決まっとるだろ、なめとんのか。


「ですが、依頼を受けていると聞いておりますが?」

「その依頼が終わった後にでもやるわ」

「でしたら、その時にご依頼ください」

「今は駄目なのか?」

「規定がありますので」


 なるほど。まぁ、今の話ではそう簡単にとられる事もないだろ。

 護衛依頼がどんだけの時間がかかるかわからんが、終わってからでも十分に間に合うはず。


「なら、今の依頼が終わり次第こよう――――ん?」

「どうしたんだカガミヤ」

「…………いや、何でもない」


 受付の奥に続く出入り口に人影がある。

 なんか、盗み聞きしているみたいで嫌だな。怪しい奴ではないような気はするんだが…………。


 あ、そういえば俺、スキルで透視を持っていなかったか? 

 たしか、壁の奥を見る事が出来たはず。


(アビリティ、透視を使いたいんだが、出来るか?)

(『はい。スキル、透視を発動します』)


 あ、壁の奥を見る事が出来た。

 これが透視か、カジノとかで使えそうだな。今度、アルカにカジノの場所を教えてもらおう。


 奥にいるのは、藍色の髪を後ろで一つにまとめている青年か。

 結構気高い服装をしているし、上位の人間っぽい。でも、そうなのなら、なんでそんなにこそこそする必要がある。上位の人間なのならもっと堂々としていればいいだろ。


(…………――――っ!?)


 目が、あった? 気づかれたのか? 

 俺がスキルで透視しているのはわからないはず。目が合うのはおかしい。


 偶然? でも、今も目が合い続けている、目が離せない。

 


 っ、いきなり走り出した!?



「待て!!!」

「きゃ!! あの、困ります!!」

「なっ、カガミヤ!?」


 受付を乗り越え奥の方に走るが、逃げ足が速いはらしいな。もう、どこにいるかわからん。

 周りの気配を意識しても、アビリティに聞いても結果は同じ。


 くそ、なんなんだ、今のは…………。


「カガミヤ!! 早くこっちに戻って来いって!! 受付の人が困っているぞ!!」

「…………あぁ」


 ち、今は戻るしかないか。

 まぁ、今後まったく会わないはないだろ。どこかしらでは顔を見合わせる事になるに決まってる。


 …………あいつの目、金色だったが、濁っているように見えた。

 まるで、昔の俺のよう。


 なんににも諦め、でも死にたくなくて。消えたくなくて。

 何かに縋りたい気持ちを押し殺し、自分で何でもしてやるというような。


 周りに期待するのを諦めた、そんな瞳だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る