第66話 色々マジでめんどくさい

「根本と言っても、病気を治す事は出来るのか? リヒトの魔法で可能なのか?」

「私のは外傷だけで、病気とかは治せないです」

「これで根本をどうにかする方法は無くなったな、なむさん」

「考えろよ!!!!」

「人酔いでグロッキーな俺にそれを言う?」

「今はだいぶ回復しただろ」

「…………おえー」

「嘘つくな」


 流石に諦めねぇか、ちっ。

 俺は医者じゃないんだけど、どうやって診ろというんだ。


「根本を理解するのにも大変なんだぞ。その病気は今の医療で治せるのか、どのような病か。それは感染症なのか、どのように発症したのか。わからない事だらけだ。そんな中で素人である俺達が何かしたところで無駄。変に期待させるのも残酷だろう」

「カガミヤならわかる気がするんだが…………」

「買いかぶり過ぎだ」


 俺はただの会社員。医者の資格とかを持っていないただの一般人だ。

 無理に決まっているだろう。


 はぁ、だが、こいつらは一度やると言ったら何を言っても聞かない。

 行動した方が早いかもしれねぇし、何か考えるか。


「おい、餓鬼。早く終わらせるため、お前の母親に合わせろ。どうせ何も出来ないだろうから期待はするな」


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 餓鬼は意気揚々と裏路地を歩み進めているけど、俺は両足に何か錘が付いているような、足が上がりにくく辛い。


「カガミヤさん、めんどくさいのはわかりますが、もっと早く歩けないですか? 遅すぎです」

「仕方がないだろ。俺の両足に錘が付いているのだから」

「まったくもう…………」


 いや、ため息吐きたいのはむしろ俺なんだけど。なんで飽きられてんの? 

 人助けをするのが当たり前だと思うな、人間なんて人を見捨てる生き物だぞ。

 見た目だけよく見せている奴なんてよくいる、善人なんて幻想だ。


 …………ここに居たか、善人二人。


 あ、餓鬼が不安げに俺の方をチラチラと見てくる。

 そんな顔で見られても、俺は今無理やり引っ張られている状態と変わらんのだよ。不安を俺に向けられても困る。


 …………あまり、親と仲のいい家族と関わりたくないんだけとも言えるけど。


「…………」


 親を大事にする子供、子供を大事にする親。

 そんなのが当たり前なんて、誰が決めた。

 そんなのは当たり前ではない、誰でも無条件で愛される訳ではない。


 あぁ、やばいな。胸が痛い、息苦しい。


 ここは裏路地だから人通りは無い。人酔いでは無いだろうな。

 まさか、ここまで過去に影響されるなんて、俺も弱いな。強くなる気はないけど。


 ただ、早く、忘れたい。


「はぁ……っ…………」

「カガミヤさん? 胸抑えて……痛いんですか?」

「え、大丈夫か? もしかして、渋っていたのは体の調子が悪いからだったのか?」


 二人が立ち止まった事で、餓鬼も一緒に立ち止まる。

 これは、説明しない方がいいな。質問されても困るし。


「いや、なんでもない。早く終わらせて明日に備えるぞ。どうせ、見たところでどうする事も出来ないからすぐに終わるだろ」


 重い足取りのまま、立ち止まっている二人の間を通り餓鬼の近くまで歩く。


「さっさと案内しろ」


 餓鬼の背中を押すと、眉を下げ不安な表情を浮かべながらも歩き出した。


 ………表情、隠す練習でもしようかな。いや、今までも表情分かりにくいとか言われていたし。

 これ以上表情筋が動かなくなるのはまずいのか、やめよう。

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