第64話 目的地に到着した俺、絶対に死ぬ

 馬車が来たから乗り込み、目的地のグランド国に向かう。

 道中は何もなく草原が広がるだけ。


 なんか、都会を知っている俺からしたら、こんな何もない道は違和感しかないな。でも、やっぱり空気が綺麗だし、風が気持ちいい。


「少し、テンション上がるな」

「そうなのか? もしかして、カガミヤがいた元の場所って、馬車とかがないとかか?」

「そうだな。一般的な移動手段ではなかった。観光的な意味で乗っている奴とかがいたが、俺は正直興味なかったからこれが初めてだ」

「そうなんですね。馬車はワープと違い、辿り着くのは遅いですが、風や自然の音を楽しめて心地いいですよぉ」


 リヒトが笑顔で言ってきた。

 確かにそうかもしれないな。今まさに、自然を楽しんでいる。心が洗われるようだなぁ。


「カガミヤのいた場所ってどんな所だったんだ?」

「え? どんなって言われてもなぁ」


 俺が考えている間、二人が目を輝かせて見てくる。


 そんなに期待の込められた瞳を向けられてもなぁ。

 何て説明すればいいのかな、どんな説明してもわからないと思うんだが……。


「…………魔法やダンジョン。ギルドといった概念がない世界。としか言えないな。あとは多分、何を言っても理解が出来んぞ」

「いや、それだけでも驚きだ。まさか、魔法がないなんて」

「だよね。魔法なんて子供の頃から基本魔法ぐらいは誰でも使えたし、つかえ、る、はずだし……」


 何故、そこでリヒトは落ち込む。

 自分で言ったくせに、悲しむな。


 リヒトは属性基本魔法を使えないらしいからなぁ。それのせいで、前までいたチームに追放されたとアルカから聞いた。

 それを思い出したんだろうが、今思い出したところで意味は無いだろ。


 落ち込んでしまったリヒトの頭を撫でて、その後は普通に世間話をしていると一時間なんてあっという間。無事、目的地であるグランド国にたどり着くことができた。



 馬車を降り、グランド国に入ろうと出入り口に立ったが、さすが”国”と呼ばれているだけあって凄いなぁ。

 セーラ村の何倍だろうか。いや、何十倍かな。そのくらいは大きそうな街。中を覗いてみると、和気藹々として楽しそうな印象だ。


 んで、俺はまたしても人酔いを覚悟しなければならないという事を瞬時に理解出来た。理解、したくなかったなぁ。


「お? なぁ、あのお城みたいな建物はなんだ?」

「あれがおそらく、今回の依頼人が住んでいる城じゃないかな」

「大きいねぇ」


 まだ中に入っていない俺達でも見上げなければ見る事が出来ない程大きな城。

 壁画が白く、何階建てかもわからない。西洋ファンタジー世界に出てくるような立派な城が中心に建っている。


 ここで立ち尽くしていても意味はないし、アルカとリヒトは中に入りたくてムズムズしているし、覚悟を決めて入るか。


「それじゃ、中に入るぞ」

「「おー!!」」


 街の中に入るには一つの門を潜らないといけないんだけど、そこには守るようにガタイのいい男が二人、槍を片手に立っている。

 厳重に守られているな、さすがグランド国。よく知らんけど。


 アルカも門番に気づき、不安そうに俺を見上げてきた。 


「なぁ、通れると思う?」

「問題ないんじゃないか?」


 不安そうなアルカとリヒトを置いて、門を潜ろうとした。

 けど、まぁ予想通り。男二人が槍をクロスするように止めてきやがった。


「待て。なぜこの街に来たのか、目的を言え」

「ギルドから依頼」

「証はあるのか」

「これでもいいなら」


 依頼内容が書かれている紙を渡すと、門番二人が確認し始める。んで、納得したのか紙を返してくれた。


「許そう」

「どーも。おい、行けるようになったぞ。いつまでそこにいるつもりだ」


 まだ二人が元の場所から動こうとしていない。早く行かないと宿が取れなくなるぞ。


「カガミヤのコミュ力って、どこでどのように発揮されるのかわからない……」

「いや、コミュ力ではなく、物怖じしない性格と、合理的な思考が今のカガミヤさんを動かしているような気がする」


 おい、関係ない話で時間を使うな。


 ちなみに俺を動かしているのは、報酬です。金です。

 金が俺の全て、金があれば俺は生きていける。

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