第61話 殺意がわいたのだが、どこにぶつけようか
リヒトが眠り始めて一週間、まだ目を覚まさない。
俺達はもうとっくに回復し、あとはリヒトが起きれば行動再開出来る状態。
大丈夫なのか? 魔力が底をついたから回復に時間がかかっているんだろうけど、ここまで昏睡状態はさすがに焦るぞ。
流石に死ぬのはやめてくれよ、命の危険とか勘弁してくれ。
ベッドで眠っているリヒトの隣に椅子を置き座っていると、隣からアルカがうざい顔を覗かせてきた。
ニヤニヤするのやめろ、キモイ。
「リヒトが心配か、カガミヤ」
「そんなんじゃねぇよ。ただ、このまま目を覚まさなければ胸糞悪いだけだ」
「ふーん」
うわ、めちゃくそ腹が立つ。
でも、アルカが余裕そうにしているという事は、十中八九大丈夫だな。
「魔力の回復で寝ているだけだから、多分もう少しで目を覚ますと思うぞ」
「誰も聞いてねぇよ」
「そうか」
いや、ニヤついているじゃねぇか、この野郎。
「んで、今日はどうするんだ? もう少しでリヒトも目を覚ますと思うし、依頼を聞きに行くか?」
「別にいいが、受付は大丈夫なのか?」
「今回は大丈夫だろう。掲示板に書いていたが、立て続けにギルドの受付嬢が問題を起こしているとかで、今回はアマリア様が自ら声をかけて受付をお願いしたらしい。だから、ある意味信用出来る」
…………確かにな。それはある意味信用出来る。
今回の事件はアマリアが起こした事だし………あ、それの直後にお願いされたのか、今回の受付嬢は……。
それは、本当に気の毒だな。
アルカも目を逸らして説明しているし、俺と同じ気持ちなのだろう。
まぁ、うん。安心して聞きに行けると考えよう。
※
ギルドに向かうと、一人の受付嬢が笑顔で冒険者と話していた。
あれが、新しい受付嬢か。
見た目が派手だな。銀髪に青色のグラデーションのツインテ。
ぱっちり二重で、見た目はまぁまぁ。男性冒険者も頬を染めてる。
手を振り冒険者を見送ると、後ろに居た俺達に気づき満面な笑みを向けてきた。
「こんにちは、冒険者ですか?」
「おう」
「あ、もしかして。今話題になっている黎明の探検者様達でしょうか!!」
「お、おう…………」
「わぁ!! 私、新しくギルドの受付をやらせていただいております。アマリア様の未来のお嫁さんです!!! よろしくお願いしますね!!」
ハキハキと最後まで言い切った受付嬢。
何故か自分をアマリアのお嫁さんとかほざいてるけど、絶対にありえないだろう。
あいつは絶対、女に興味が無い系男子だろう。
……………………最悪。今回の受付嬢は、妄想癖のあるヤンデレ系女子だったか。
関わりたくない系の変人だ。早く終わらせよう。
無駄な話をしないようにさっそく本題に入ろうとすると、アルカが横か余計な事を言いやがった。
「え、あの人彼女いたのか!?」
「いやだぁ、そんなぁ。彼女なんて!! そ、それはまだ先の話というか!! いや、もう彼女のような存在なんですけどぉぉぉおおお!!!!」
はぁぁぁぁああああ。最悪、最悪。
アマリア絶対に許さない。めんどくさいからってここに縛りつけやがったな。
いや、もしかして。こいつしか受付嬢をやってくれなかったのか?
もう、どっちでもいいや。さっさと終わらせる。
「んじゃ、依頼を──……」
「貴方の事はアマリア様から聞いております。今までお疲れさまでした」
「あ、あぁ。そんで、依頼を──……」
何とか本題に、本題に入りたっ――……
「本物、本物ですね!? アマリア様には負けますが、聞いていた通りのイケメン!! その死んでいるような瞳に気だるそうな装い。口調もマイペースで私のどストライクです!! あの、貴方の趣味はなんですか、好きな物は、特技とかありますか!? 彼女さんなどはいるのでしょうか!! あ、そうだ、先日管理者と戦ったと聞いたのですが、どのような流れでどのように生き永らえたのでしょうか!?」
……………………アマリアを殺そう。殺す、殺します。
「カ、カガミヤ? 今まで以上に目が死んでいるぞ。大丈夫か?」
「アルカ、俺の敵は管理者ではなく、この女だったのかもしれない。だから、こいつを殺して、アマリアを殺って、俺は生きる」
「ひとまず落ち着け! な!?」
めんどくさい物全てを破壊しようと思ったのだが、アルカが止めてきやがった。
別にいいだろう、俺は早くこの地獄から開放されたい。
――――いや、落ち着け俺。ここで取り乱しても仕方がない。早く本題に――……
「殺して下さると!? 本当はアマリア様が良かったのですが、貴方でも私は全然大丈夫ですよ!! どのように殺ってくださるのですか!? 絞殺、溺死、撲殺。あぁ、でも貴方の顔は最後まで見ていたいのでせめて目だけは最後に残して下さると嬉しいです!!!」
よし、わかった。
「そうだな、なら目だけを残して焼き殺してやるよ」
「おちつけぇぇぇぇぇぇぇええええ!!!!!!!」
アルカの叫び声と頭に走った衝撃で、右手に作られた炎の玉は俺が倒れるのと同時に消えた。
……………………絶対に俺は悪くない。
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