チート魔力はお金のために使うもの～守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい～

第55話 連携技ってなんか、いい意味でやらかしてくれるから結構好き

　全てを弾かれた。でも、時間は稼げたはず。

　ラムウの後ろには、剣を構えたアルカの姿。息を顰め、死角から仕掛けようとしている。

　気配すら消し静かにし、音を立てずに上に飛ぶ。

　剣が届く距離まで落ちると、横一線に振るった。

　――――――――ガキン！！！

「えっ」

「は？」

　アルカの地の剣が、防がれた？　

　いや、皮膚が固すぎて剣が通らなかったという方が正しい。

　まずい、アルカは今、空中！！　身動きが取れない！！

　アルカに気づいたラムウが口を開く、食われるぞ！！

「スピリト！！」

『お任せくださいご主人様！！』

　スピリトがアルカの前に出て、勢いよく炎を吹く。だが、同じ攻撃は通じない。

　すぐさま時空を歪め攻撃を逸らしちまった。

　今の攻撃はどこに！？　

「っ、俺の上かい！！　wavewater（ウェイヴ・ワーター）！！」

　全方位攻撃が出来る水属性の魔法。

　足元から発動された水を上へと舞い上がらせ、上から降り注ぐ炎を打ち消す。

「このまま波に呑まれやがれ！！！」

　出した波をそのまま、ラムウへと向かわせた。

　時空を歪めせたとしても、アルカが着地出来る時間さえ稼げれば――――…………

　っ、ラムウの黒い瞳と、目が合った…………？

「…………あ？」

　なんだ、避けた？　時空を歪ませなかっただと？

　それに、俺が追いかけるように操作している波を消そうとはせず、逃げ続けてる。

　――――――――ギャウァァァァァァアアアアア！！！

　球体を三つ出し、俺の波を吸わせた。

　広範囲攻撃は、時空を歪めて返す事は出来ないのか？

　アルカは無事地面に着地、俺の方に駆け寄ってくる。

　ついでにリヒトも、俺の後ろまでやってきた。

「カガミヤさん！！　私も参戦します！」

「男は大丈夫なのか？」

「自力で動けるくらいには治す事が出来たので、逃げていただきました」

「そうか、わかった」

　アルカに遅れてスピリトも俺の首筋にしがみついて来た。

　震えているな、状況が状況だ、仕方がない。

「それじゃ、今度は三人であいつを相手にするぞ。さっき、偶然あいつの隙を見つけたんだ」

「隙？」

「そう。あいつは広範囲攻撃に弱い。おそらく、時空を歪めても一気に移動させる事が出来ないんだろう。だから、さっきの俺の水属性魔法、wave water（ウェイヴ・ワーター）をワープさせる事をせず、わざわざ球体を出し吸い込ませた」

　広範囲なら、俺達に攻撃を返す事は出来ないはず。

「なるほどな。だが、広範囲攻撃は比較的攻撃力が低いのが特徴のはず。あいつの皮膚は岩の何十倍も固いぞ、おそらく倒せない」

　やっぱりそうだよな。

　少しずつ削るとしても魔力が尽きたら終わり。迅速にかつ、確実に相手を殺る方法を探らなければ……。

　爪を噛み考え込んでいると、アルカが一つの作戦を提案して来た。

「なぁ、俺が隙を作るから、カガミヤが最後決めてくれねぇか？」

「は？　何か作戦はあるのか？」

「ある。リヒト、chain（チェイン）を借りたい」

「え？　――――あ、なるほど。了解！！」

　リヒトはアルカの意図がわかったのか、まだ少し硬いが笑顔で頷いた。

　何をする気だ？

「んじゃ、任せたぞカガミヤ！！」

「え、ちょ！！　アルカ！！　せめて説明してから行けよ！！」

　何なんだよあいつ。

　隙も何も、タイミングとかがあるんだから俺を置いて行くなよ！！

「…………リヒト、あれは？」

「大丈夫ですよ、カガミヤさん。見ていれば分かります」

　そんな事言われても困るんだが。

　それに、一人で突っ込むのはいくら何でも無謀。簡単に殺されるぞ！

　ラムウは地面に着地し、俺達を見てくる。

　いや、今はアルカの方に視線を向けているな。自分に向かって来ているんだ、当然だ。

「リヒト、行くぞ」

「はい。任せたよ、アルカ」

　リヒトの杖が光り出し、魔力が込められる。

　今までに無いほどの力、今から大きな魔法を出す気か？　

　でも、さっきアルカはchain（チェイン）を貸してくれと言っていた。全然予想が出来ない。

　威嚇態勢を作るラムウ。周りに複数の球体を作り出し、狙いを走っているアルカに定める。

　俺も、何が起きても対処出来るようにしなければ。

「――――っ。こんなに魔力をため込むなんて。大技か？」

　隣のリヒトに視線が逸れた時、アルカに向けて球体が放たれた。

　やばい、早く魔法を出して援助を――……

「chain（チェイン）！！」

　リヒトの声が洞窟に反響する。同時に、ラムウを取り囲うように複数の鎖が四方から勢いよく放たれた。

　アルカに放たれた球体も鎖により霧散。鳥籠のような鎖の檻が作られ、ラムウの身動きを封じ込む。

「これは…………」

　リヒトが杖に魔力を送り続けてる。

　集中するように瞳を閉じ、両手で杖を強く握っていた。

　アルカは鎖を見ると口角を上げ、何を思ったのか。鎖に向かって上に跳ぶ。

　ラムウの視覚にばっちり映っているのに、なにを考えてんだ。

「ここからは持久戦だ、ラムウ。どっちの方が先にばてるか、勝負だ！！！」

　アルカが鎖に足を付けっ──？

「あ、え、は、え？」

　アルカを、捉える事が出来ない。

　見失った訳ではない、アルカは確実にラムウの周りを駆け回っている。鎖を足場にしたり、手で掴み軌道修正したりしながら。

　えぇ……、目で追うので精一杯なんだが？

　驚いていると、隣から疲れたような声。

「はぁ…………」

「っ、そういう事か」

　リヒトの顔色が悪い。

　あれは、アルカの体力も大事だが、リヒトの魔力や集中力も試させられる攻撃ということか。

　リヒトが途中で力尽きれば、アルカは足場を失い飛び回ることが出来ない。

　リヒトの消耗が激しい連携技か。アルカも相当体力削られそうだけど。

「…………もう少しだけ頑張ってくれ、アルカ、リヒト。――――アビリティ」

『はい』

「turbo flame（トュルボー・フレイム）をすぐに魔導書に添付してくれ。他にも使える魔法があれば頼む。急ぎだ」

『はい。チサト様の魔法を、魔導書に全て添付します』

　――――――――ん？　全部？