第54話 こんな土壇場で新しい事を試す事になるなんて
これは現代のゲームで言うと、高難易度ランク。上級者向けだから、何か制約があっても不思議ではない。だが、まさか緊急脱出が出来ないなんてありえないだろ、ふざけるな。
なら、俺達が出来る事は二つ。
こいつを倒すか、死ぬ。
さっき離した魔導書が俺の頭上から降ってくる。
同時にスピリトも俺の前に来て腰に手を当てている。なんか、怒っているな。
『もっと私を使ってくださいご主人様!!』
「あー。そういえば今まで、俺からスピリトに何かお願いした事ってあまりなかったな」
『そうですよ!! 私も何かお役に立ちたいです!!」
「あ、はい。なら、お願い出来る? 何が出来るかわからないから、俺に合わせてくれると助かる」
『わかりました、ご主人様』
めっちゃ気合い入れてる。
喜んでいるならいいか。
「アルカはどのくらい動ける?」
「まだまだいけるぞ!!」
鼻息荒く宣言してくれた。
アルカも気合入っているし、俺も気合を入れ直すか。
…………いや、直すも何も、最初から気合なんてものは持ち合わせてなかったわ。
えぇっと、さっきの感じだと、跳び魔法は時空を捻じ曲げられ、あらぬ方向へと飛んでいくらしいから、迂闊に放つことが出来ない。
近距離戦に持ち込んだ方がいいかもな。
くそっ、俺も近距離出来るようになっとけばよかった。
一応、買った手袋は付けているけど、使ったことない。
だが、今回試しに使うのはリスクがある。
いや、今回のダンジョンでリスクとかを考えてしまえば身動きが取れなくなる。
試したことはないが、やるしか道はない。
確か、武器屋の女はこの手袋をはめている時、属性魔法を拳にまとわせる事が出来るとか言っていたな。それで直接殴るという事でいいんだよな……?
属性魔法という事は炎か水。
水だと威力が弱そう。炎の方が攻撃力は高そうだし、タイミングを探しやってみるか。
下手に新しい事をやろうとすれば確実に負けるし、絶対にタイミングを間違える訳にはいかない。
「アルカ、今回はお前主体で俺とリヒトは援護に回る。出来るか?」
「わかったぞ!」
「よし、それならっ――――」
っ、ラムウが突進を仕掛けてきやがった。俺とアルカの間を横切り後ろへ。
風で煽られる、体がでかい分周りへの影響が凄いな……。
「アルカ! 行くぞ!」
「おう!!」
魔導書を開きながらラムウを見てしゅうちゅっ――――え?
「……ん? なんだあれ、ブラックホールみたいな黒いボール」
五つのブラックホールのような球体が、ラムウの周りに現れた。
なんだ、あれ。
っ、球体五つが俺に向けて放たれっ──吸引力があるのか!? 体が引き寄せられる!!
「っ、
地面に向けて放ち、爆風を起こす。それに紛れながら横に走る。
爆風が勢いよく一か所に吸い寄せられてるな。
「ほんと、厄介なモンスターだな」
放たれた球体に爆風が吸い込まれる。
あ、あれ、五つあったはずの球体が一つになった?
今の
――――いや、違う!
一つの球体が大きくなっている。合体したのか!?
「そんなの、反則だろ!!!!」
また俺に向けて放ちやがった。
くそ、どの魔法を使えばっ――……
「
「っ!」
アルカの地の剣が球体を切り裂いただと? 物理で切る事が出来るのか?
「大丈夫か、カガミヤ!」
「問題ない、あんがとよ」
ラムウの高い鳴き声。何かやらかす前にこっちからしかけねぇと!
「アビリティ!」
『はい』
「現状直ぐに使える魔法を発動してくれ!」
『取得している魔法を確認。――――確認完了』
頭に直接流れてくる魔法呪文。よしっ!
「
魔導書に添付していないから発動に時間がかかるが、アビリティが選んだ魔法だ。信じるぞ。
ラムウが鋭い牙を見せ噛み付いて来ようとした時、あいつの足元から炎の渦が現れた。
「――――燃え上がれ!!!」
右手を上げるのと同時、ラムウの足元から炎の竜巻が燃え上がる。
ラムウを竜巻が包み込み、身動きを封じた。中からはラムウの叫び声。
――――効果ありだな。
「今は身動きが出来ねぇし、問題ないはず。このまま死んでくれ、
炎の弓を作り、弦を限界まで引き、放つ。
風を切り、真っすぐ炎の竜巻に包み込まれているラムウへと向かった。
――――――――ギャァァァァァァァァァアアアアア!!!!
「っ、クソ!!!!」
炎の竜巻と放った弓が、ラムウの咆哮で弾かれた。くっそ!!!
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