第52話 ありえないんだけどふざけるな

 魔法陣に属性基本魔法を放ち、出てきたタコパを倒す。

 これを何度も何度も繰り返していた。 


 みんな、息が絶え絶え。

 背中を合わせつつ、出てきているタコパをflameフレイムでなぎ払いやっつけた。


「カガミヤ、今ので何体倒したかって数えてたか?」

「途中で数えるのやめた。二十は軽く超えていると思っておけ」

「これ、攻略方法としてあっているのか?」

「わからん…………」


 リヒトも疲れ始めているのは仕方がないが、アルカまで息を切らしているのは相当。俺も、体力的にやばくなってきた。


 魔力量的にはまだ余裕があるが、油断はできない。そろそろ、ガチで他の方法考えないとまずいな。


 でも、他に何か方法があるのか? もしかして、魔法陣にも当たりはずれがあるとか? 


 …………さすがにないよな。

 そんな、運次第なダンジョンなんて、ないよな……?


「…………なぁ」

「何だ?」

「アルカは次の魔法陣、どれを崩したいとかあるか」

「え?」

「なんか、直感で決めてほしい」

「何かよくわからんが、そうだな…………」


 今までは俺が適当に近場の魔法陣に魔法を当てていたが、今回はアルカに託してみる。変わらず、タコパとの勝負になるだろうがな……。


 アルカは肩で息をしながら天井を見上げている。

 考えながら選んでいるけど、直感でいいんだぞ。俺の推測があっているなんて事、まず無いから。


「……………………ん?」

「ん? どうしたアルカ」

「あぁ。なんか、集中してみたんだが。あの魔法陣だけ魔力が強い気がする」

「魔力?」


 今までそんな事気にせず倒してきたが、もしかして…………。


 アルカが指さす魔法陣に近づくと、確かに他の魔法陣より微かながら強い魔力を感じるな。


 おいおい、今までの俺達の行動はなんだったのか。それとも、規定の数値に達した事により出現した魔法陣なのか。


「んじゃ、行くぞ」

「はい」

「おう」


 二人も準備は出来たらしい。んじゃ、やるか。


acquaアクア


 右手に水の玉を作り出す。

 今までより威力を強めにしたからか、水の玉は複数現れ、一つ一つが大きいのが出来ちまった。


「行け」


 魔法陣に向けて、acquaアクアを放つ。

 今度現れるのは、一体どんなモンスターだ。



 ――――――――フッ



「あれ、水玉が消えっ――……」

「っ、後ろだ!!!!」


 アルカの声に後ろを振り向くと、放った水が迫ってきていた?!


 アルカは後ろに下がり、リヒトの背中を押す。俺は体を捻り迫ってきていた水を操作しながら回避。


 水は壁に当たり"ビチャ"と音を鳴らし、地面を濡らし溶けるように無くなった。


「……微かに操作は出来た。つまり、操作権を剥奪された訳ではないということか」


 なら、どうやって俺達の背後に俺が放った魔法を?


「…………そう言えば……」


 このダンジョンは、無限ループ的な要素がある。

 時空を操るモンスターがいる可能性はないか? 


 いや、仮にいたとしても、それがBランクのダンジョンにいるのはおかしくないか?


 これは、俺の勝手な偏見なんだが、時空や時を操る魔法やモンスターって、相当の使い手だったり、ランクが高いとかなんじゃないのか?

 それが今、俺達がいるBランクのダンジョンに現れるなんて……。


 いや、それより。

 ここは、本当にBランクのダンジョンなのか? 


 疑問が浮上し、難しい顔を浮かべているとリヒトに呼ばれた。


「カガミヤさん、あの。上…………」

「上? …………なんだ、あれ」


 魔法陣から姿を現してきたのはモンスターではない、人の下半身だ。

 ずるずると、ホラー映画のように落ちてくる。服装からして、俺達と同じ冒険者。



 ――――――――ズル



「あ!」

「危ない!!!」


 上から人が落ちる!!!


 咄嗟に上から落ちてきた人を受け止め、膝の上に横にさせる。

 よく見ると、服はぼろぼろ。傷も深そうだし、ギリギリ息がある程度。早く治させねぇと死んじまう。


「リヒト、治すことは出来るか?」

「やってみます」


 隣に座ったリヒトが両手を前に出し、手のひらを傷口に向ける。

 淡く光り出し、傷を照らした。治ってくれよ、マジで。


「カガミヤ、来る」

「みたいだな」


 上から強いモンスターの気配。ワイバーン以上のものを感じる。


 本当にどうなっているんだ、こんなに強い魔力。

 鳥肌が立つ、体が震えて汗が滲み出てきた。


 気配からしてわかる、今の俺が勝てるかどうかわからない。


「っ、そうだ、アルカ、地図を寄越せ」

「お、おう」


 奪い取るように受け取った地図の下の方に、今回のダンジョンの詳細が書かれている。


 よくよく目を凝らし見てみると、Bランクという文字の下に、ありえない文字が隠されていた。


「このダンジョン、Bではなく、SSランク……?」

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