第51話 こんなめんどくさいダンジョン普通ないだろ

 俺が放ったflameフレイムが真っすぐ魔法陣に向かい、当たった。

 なにか変化があるかなと思っていた俺からしたら拍子抜け。


 煙が立ち込め視界が遮られる。威力が強すぎたか?


「……何も、変わっていない?」

「変わってないな。威力を抑え過ぎたのか? でも、中々な力を込めたはずだが」


 これ以上威力を大きくするんだったら、flamaArrowフレイムアローになるか。でも、なんとなくそういう感じではない気がするんだよなぁ。


「なぁ、属性が関係あったりしねぇかな」

「属性?」

「おう。今、flameフレイムが当たった瞬間、水色に光った気がしたぞ」

「つまり?」

「水か氷属性の魔法を当ててみるとかはどうだ?」

「それ、氷だった場合積みじゃね?」

「だな」


 まぁ、ひとまず、やってみるか。

 魔導書を開き、水の基本魔法を探す。


「えっと、水の基本魔法は確か……。お、これだ。acquaアクア!!」


 flameフレイムと同じように右手に魔力を込めると、水の玉がふよふよと現れ始めた。


「んじゃ、これを放って破る事が出来れば解決だな。どうか、水属性でありますように。行け!!」


 五つほど出来上がった水の玉を操り、先ほどと同じように放った。すると、さっきは何の反応も見せなかった魔法陣が強い光を放った。


 な、なんだ!?


「っ、え?」


 いきなり光り出した魔法陣から突如として現れたのは、触手? きもっ!!!!


「きゃぁぁぁぁぁああああ」

「何だあれ! キモ!!!!!」

「気持ちはわかるぞアルカ、リヒト。よし、ひとまずこれをたおっ――――」


 あ、あれ? 隣から強い魔力?


「~~~~~~~~~~chainチェイン!!」


 甲高い怒りと困惑の声!? 


 これって、リヒトの声か? つーか、チェインって確か拘束魔法だよな? そんな魔法でどうするつもりだよ…………。


「気持ち悪いのよぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」


 杖を振り回し、薄紅色の髪を靡かせながらリヒトが叫ぶ。

 鎖は真っすぐ触手に向かって行ったかと思うと――――


「い、一本一本掴んだ…………だと?」


 一本も逃す事なく、鎖が触手を掴んだ。

 それだけでは飽き足らず、リヒトは触手に背を向け、頭の上まで上げた杖を強く握り直した。


 一体、何をする気だ?


「さっさと消えなさぁぁぁぁああい!!!」


 杖をリヒトが降り下げるのと同時に、鎖も連動するように触手を引っ張る――――って、何か出てきた!!!


「あれって、タコ?」

「あれは中級モンスター、タコパだ!!!」

「…………パーティーでもするような名前だな。まぁいいや、タコならタコらしく。タコ焼きの食材となれよな。flameフレイム



 ――――――――ギャァァァァァァアアアアアア!!!!!!!



 よし、焦げ焦げになったな。

 楽勝楽勝、半分以上リヒトの手柄だけど。


「これが、無限の道を作りだしていたモンスターなのか?」

「いや、タコパにはそんな力はないはずだ。単純な物理攻撃しかないはずだぞ。俺が知っている限りでは、だけど」


 なら、他にも仕掛けがあるという事か。

 ラスボスが絡んでいる可能性があるな。


「なんか、空間を捻じ曲げる力を持っているモンスターとかいないのか?」

「んー、そうだな。いるとは思うが、今思い出せと言われても…………」

「まぁ、そうだよな」


 アルカは腕を組み考えるが、パッと思いつくものがなかったらしい。

 他の仕掛けを見て、考えるしかないか。


「はぁ、はぁ…………」

「あ、お疲れ様、リヒト」

「取り乱しちゃった、恥ずかしい……」


 あぁ、うん。取り乱していたな、俺は楽が出来たから別にいいけど。

 今ので結構リヒトの魔力が減ったんじゃないか? 残りは俺達でどうにかするか。


「よし、また歩くぞ。もしかすると、どこかに魔法陣が現れるかもしれないし」

「だな。カガミヤ、また明かりを頼めるか?」

「大丈夫だ」


 また炎を灯し歩き出そうとしたが、なんか、天井に違和感が……。

 いや、何かが見えたというか勘が働いたというか。


 なんとなく上を見上げると…………


「見なければ良かった」

「このダンジョン、もしかして耐久系か? やっぱり休んでからの方が良かったかもしれないな……」


 天井見上げた俺達の顔は全員、一気に真っ青に。


 そりゃ、そうだろうよ。

 だって、天井には、さっきと同じ魔法陣が沢山並んでいるんだもんよ。


 あれって、属性が違うとかないよな? 全てバラバラとか、さすがに無理だぞ。


「カガミヤさん、目、死んでおります」

「何も言わないで」

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