第49話 このままスムーズに攻略できるといいなぁ

 簡単に作戦を確認した後、アルカはすぐさま片手剣を振り上げ、ムーンバーストへと走って行った。


 俺は周りに複数の炎の玉を作り、アルカに近づこうとした蝙蝠達を打ち落す。

 リヒトは集中するようにムーンバーストから目を離さず、タイミングを計っていた。


 ムーンバーストは近付いて来るアルカに目線を落とし、口を大きく開く。


「行け」


 複数作り出した炎の玉、flameフレイムを操り大きく開こうとした口に放つ。その時、気配を感じたムーンバーストが口を閉じた。


 皮膚はけっこく固いらしく、flameフレイムはぶつかった瞬間に爆発したが無傷。

 威力はそこまで出してねぇし、想像していたからいいわ。


 気を逸らしているうちに、アルカはもう攻撃態勢を作っている。


 真上まで跳んだアルカが、剣を叩きつけようと頭の上まで上げる。

 気配を感じたムーンバーストは足に力を込め、後ろに跳び避けようとしたが、もう遅い。


chainチェイン


 リヒトが杖を下から上に振り上げると、ムーンバーストの足元から銀色に輝く複数の鎖が現れ、ムーンバーストに絡まり身動きを封じた。


 ────ギャァァァアアアアアアア!!


 叫び声に近い声をあげたところで意味はない。


「終わりだな」


 本を閉じたのと同時に、アルカは攻撃射程内に入る。


groundspadaグランド・スパーダ!!!』


 振り落とされた剣の刃が伸び、ムーンバーストは真っ二つ。

 戦闘終了だ。


「よっしゃ!!! 真っ二つ!」

「お疲れ様だよ、アルカ!」


 アルカとリヒトがハイタッチをし、喜びあっている。


 今回は無駄に魔力、時間を使わず直ぐに倒すことが出来た。それに関しては喜ばしいことではあるんだが……。


 ムーンバースト、弱すぎじゃね? 

 全てが作戦通りで拍子抜けというか……。それか、俺達が強すぎたのか。


 まぁ、結果が良ければ全てよし、深く考えなくてもいいな。

 この調子で二つ目のダンジョン攻略も効率よく行こうか。


 二人に近づくと、リヒトが俺の方へと駆け寄ってきた。


「カガミヤさん、少しも休まずに次へ行くつもりですか?」

「体力も魔力もまだまだ残っているから行きたいんだが、休むか?」

「俺は余裕だぞ」


 今回、一番体を動かしたはずのアルカが余裕な笑顔。

 さすが体力お化け、俺はお前が怖いよ。


「俺も大丈夫だから、あとはリヒト次第だ。休むか?」

「…………そんな事言われたら、このまま行く選択肢しかないじゃないですか」

「え、優しく言ったつもりだったんだけど。高圧的だったか?」

「そういう事ではないですよ」


 リヒトが言いたい言葉を理解してあげられん、何が言いたいのだろうか。


「私もまだ余裕があるから休まなくても大丈夫です。それでは、このまま行きましょうか」

「いや、宝を置いた後に行く。もう一つのダンジョンでも宝を貰わないといけないからな」

「ぶれないな、カガミヤって…………」

「言ってろ」


 俺は金の為に今まで行動してきているんだから、そこがぶれる事は何があってもない。


「んじゃ、戻るぞ」

「「はーい」」


 ※


 ギルドに報告、宝を置き次のダンジョンへ。


 ワープした先は森の中、周りは俺達を取り囲むように大きな樹木が立っている。

 上を向くが青空が木々に隠され薄暗い、不気味だなぁ。


 そんな中、先が見えない恐怖の洞窟が俺達の目の前に現れる。

 おそらく、これがダンジョンの入り口なんだろう。


「これって、洞窟?」

「だと思うよ。中、結構暗いから、俺が照らすわ」

「頼んだぞカガミヤ。危険だと思うし、離れないように気を付けるぞ」

「そうだな。何が来るかわからんし、Bランクとはいえ、気を引き締めた方が良さそうだ」


 三人で顔を見合わせ頷き合い、洞窟に目を向ける。


 んー、マジで暗くて何も見えない。

 今の段階で炎を出さないと普通に序盤で転ぶな。


 右手に炎を灯し、威力を制御しつつ洞窟の中に足を踏み入れた。


 中に入ると、そこは何の変哲もないただの洞窟。ピチョンという音が聞こえるから、上から水滴が落ちてきているという事だろう。


 うなじとかに当たるとめちゃくそビビりそうだ。

 大声を上げないように気を付けないと――――


「きゃああぁぁぁぁぁああ!!!!」

「っ、どうしたリヒト」

「う、ううううう、うなじに何かが落ちてきたぁ!!」


 涙目で俺に抱き着いて来るリヒト。

 いや、ここまでのお約束って…………。はぁ……。


「おい、リヒト落ち着け。単純に上から雫が落ちてきただけだ」

「ほ、本当? 本当の本当?」

「本当だって。つーか、こんなところで嘘ついても俺にメリットはない。わかったならさっさと離れてくれ、歩きにくい」

「…………もう知らない!!!」

「いって!! なんで?!」


 なんか知らんけど、リヒトに背中を叩かれたんだが。

 なんで怒っているの? 怒りたいのはどっちかというと俺じゃないのか? 

 いや、別に怒りは込み上げてきていないけどさ。


「…………よくわからんが、もうそろそろで雑魚が出てきてもおかしくないだろうし、気を引き締めるぞ」

「おー!!!」


 アルカの元気な声が、俺達のいる洞窟に響き、リヒトも周りを警戒するように気を取り直した。

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