第48話 ダンジョンにも種類があるんだな、新しい発見だ
「今日のダンジョンはどこに行く?」
「二つあるうち、どっちがいいかなぁ」
アルカとリヒトが二枚の地図とにらめっこしているため、俺は蚊帳の外、部屋の中で窓から外を眺めている。
今日もものすごく天気がいいな、鳥が自由に羽ばたいている。
ぼぉっとしていると、アルカが俺の肩をトントンと叩いて来た、なんだ?
「どっちがいいと思う?」
「…………あ、俺に聞いているの?」
「うん」
二人で話しているのかと思ったら、俺にも質問していたらしい。
「どっちも行くはないのか??」
「え?」
「どっちも行く。今日で二つのダンジョンを終らせる」
「…………え?」
「いや、え? じゃなくて、二つのダンジョンを終らせるぞ」
「え?」
なんだよ、お前ら。俺の話を聞いているのか?
二つ行くんだよ、今日で。
昨日は魔力の消費を考えずに使っていたから行かなかったけど、今回はそれも踏まえて一回目のダンジョン攻略。その後にすぐ、二つ目のダンジョン攻略。
スムーズにいけば出来るはず。
今は朝の十時だ、時間的にも楽勝だろ。
「一日で二つのダンジョンを攻略なんて聞いた事ないよ?」
「そりゃそうだろうな。でも、する。”今までがこうだったから、俺達もそうする”は違うだろ。俺達が出来る事をやり、俺達がやりたい事をする。自分の出来る範囲を狭め、過去の奴らと同じ事をする必要はない。俺達だから出来る事をして、それを未来に繋げればいい」
とか、それっぽく言ってみるけど。実際出来るかは謎なんだよなぁ。
法律的な意味で駄目なのなら従うしかない。罰金なんて、金を溝に捨てるようなものだしな。
「ま、まぁ。カガミヤがやるというのなら付き合うが、無理だけはするなよ?」
「わかっとるわ。魔力の使用削減練習も込めて今回はやってみる」
今日で終われば、次はまた違うダンジョンを希望。
このまま順調にダンジョン攻略をして行こう。
※
ワープで最初のダンジョンに到着。
ここは、砂漠かぁ? めちゃくそ熱い。
それと、目の前にそびえたつピラミットが高圧的に俺を見下ろしてくる。
あれが今回のダンジョン? ダンジョンにも色んな形があるんだなぁ。
「それじゃ、行こうぜカガミヤ」
「おう」
アルカは足早にピラミットの中に入っていく。
おいおい、置いて行くなって。
中に入ると、左右に広がる空間が一つ。地面は砂で埋め尽くされ、上には穴が開いているのか砂が一本の柱を作りだすように落ちていた。
奥や左右を見るけど、扉や抜け道らしきものはない。
この広場だけで完結しているのか、トラップを解き奥に進む形式なのか。
「珍しい作りをしているダンジョンだな。奥に行けばいいのか?」
アルカが不思議に思いながら奥へと歩き確認しているけど、奥になんて何も見えないぞ?
「もしかして、ここには雑魚モンスターはおらず、いきなりラスボスパターンか?」
「まさかぁ、Bランクでそんな事ありえる訳ないじゃないですかぁ」
「そうだよなぁ」
リヒトが笑顔で言っているし、そうなんだろう。
当たり前か、そんな事あるわけっ――――
――――――――ドシン
ん? ドシン??
後ろから、なにやら嫌な音と気配が…………。え、こんなお約束な展開って、ある?
恐る恐る後ろを振り向くと…………。
――――――――ガルゥゥゥゥゥァァァァァアアア!!!!!
「でたぁぁぁぁぁぁああ!!!!!」
「なにこれぇぇぇぇえええ!!!」
リヒトにもわからんのなら俺にもわからんぞ絶対に!!
「お? あれは、たしかムーンバースト。姿を自由自在に変化出来ると聞いた事がある」
アルカは知っているのか。
と、いう事は、今のドデカイヒキガエルのような姿も、自由に変化出来るという事か。意外と厄介だな。
「どうしますか、カガミヤさん」
「どうするも何も、いつも通り。相手の動きを止めたり、背後から攻撃が出来る様にするしかないんじゃないか」
「はい!!」
アルカも剣を構え、リヒトも杖を持ち直す。
腰にくくっていた魔導書を手に取り、俺も準備完了。
「さて、どうやって調理しますか」
見た目からして本当に気持ち悪いから早く終わらせたい。
形を変化出来るというのは、どこからどこまでなのか。
無限に様々な形になれるなんてことは、流石にないだろ。
それを確認するため、まず一発、お見舞いするか。
右手に炎を溜め、放てる準備。だが、それに気づいたムーンバーストは、大きな口を開け、声を荒らげてきやがった。
ギャァァァァァァアアア!!!!!!
「うっさい!!!」
耳が痛い、鼓膜が破れる!!
頭まで痛くなってきた、一体何なんだよ!!!
「っ! あれ、収まった?」
な、なんだぁあ??
「……カガミヤさん、あの。至る所から、モンスターの気配を感じませんか?」
「え、まさか……」
何だこの、嫌な感覚。
なんだよ、これ。なんか、面倒臭い事が起こりそうな予感…………。
――――――――バサバサバサ
っ! いたるところから黒い翼を広げ、俺達に蝙蝠が突進してくるだと!?
「ここにもいるのかよ!!」
あ、だからこのダンジョンにはこの一室しかないのか。
雑魚がラスボスの声に反応し、出てくるシステムらしい。
「ちっ、
横に薙ぎ払うように炎の玉を放つと、蝙蝠達はすぐに死ぬ。
強さは昨日のダンジョンと同じだな。つまり、蝙蝠は特に気にする必要はない。
「アルカはムーンバーストに集中してくれ、俺が蝙蝠とアルカの援護を行う。リヒトはムーンバーストを拘束してくれるか? アルカが気を引けば出来なくはないだろ」
「「了解」」
よし、すぐに終わらせてやるよ。
金になれよ、ムーンバースト!!!
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