第32話 純粋って本当に怖いよ俺
『では、説明させていただきます』
「よろしく頼むよ」
ここから本題入りまーす。
『管理者に封印された前主は、私の後継者を探す為、転移魔法を発動。私がチサト様をこちらの世界に転移させました。魔力などは前主の物を付与しております』
「本当に前主だけの魔力なの? とんでも魔力だけど」
「僕の機械を壊すほどだし」と、小さな声で呟きやがった。
悪かったってば、許してよ。
『私は言われた通りにしました。ですが、何故か倍の能力を付与されており抑えるのが難しい状況。元々持っていた魔力が多く、それに加え前主の魔力が上乗せされた可能性があります』
「なるほどね」
おい、待て。
今の話、俺も聞いてないぞ。
つまり、俺は元々魔力が多かったが、それを知らなかったアビリティが言われた通りカケルのを上乗せし、さらに魔法やスキルも付与してチートにしてやった、で、いいのか?
「なんとなく理解出来てきたよ。それで、ギルドへの登録目的はなに?」
「それは俺が説明する。金です」
『違います。前主の封印を解く為、ダンジョン攻略が必要。ギルドに登録しなければ行動が制限されます』
いや、だから俺は第一の目的は金、第二の目的としてカケルの救出なんだってば。
俺が動くのは金がもらえるからだぞ。
ダンジョン攻略も、金が手に入るからやる気も出る訳で、もらえなかったらやりたくはない。
前主を助ける為とはいえ、俺にとっては会った事すらない赤の他人。
赤の他人の為に命をかけたいと思う程善良ではない。
何か報酬がなければ普通にやりたくないんだが?
「確かに、ギルド登録すれば優遇もされるし、いいと思うよ。こちらとしても、ここまで強い魔力を持っている者を野良にしておくのは勿体ない。だから、認めてあげる。追い返す理由がないしね」
「あ、どうも」
よ、良かった。
機械を壊したことへのペナルティとかもないみたいだし、無事に登録もできたし。マジで安心。
「それじゃ、僕は爆発した部屋の後始末申請と、君のギルド登録を認める資料作成しないといけないから行くね」
「あ、少し待ってほしんだけど」
「なに?」
腰を浮かせたアマリアの肩を掴み止めると、素直に止まってくれた。
「まだ、話がしたい」
俺の言葉に、アルカとリヒトが目を開く。
アマリアも少し驚いていたが、すぐに浮かした腰を元に戻してくれた。
話は聞いてくれるという事か。
「まず、この世界ってダンジョン攻略の数だけ上の立場に行けるという認識で合っているのか」
「そうだね。強さが目に見えてわかるから」
「それはギルド内だけ?」
「うん。ダンジョン攻略に行けるのはギルドの人間のみだから、当然なんだけど」
「あ、そうなんだ。俺は行けたけど」
いや、行けたというか、瞬間移動したって感じだな。
目を覚ますとダンジョンだったんだよなぁ。
「転移されてきた君なら、何があっても納得出来るよ」
「話が早くて助かる」
「細かく考えないようにしているだけだけどね」
「それが一番」
アルカとリヒトも、ここまでの柔軟性を持っていれば頭を悩ませなくていいのに。
「ねぇ、僕からも。これからの動きは決まっているの?」
これからの動き、か。
まったく考えていなかったが、どうしようかな。
「そうだな…………。アルカとリヒトに捨てられない限り、この二人について行ってダンジョン攻略しようかねぇ」
後ろの二人を見ると…………うん。捨てられる気配は今のところないな。
嬉しそうに俺を見ているし。眩しいよ、やめて。
「でも、あの二人は確か、村を改変する為にダンジョンを攻略していたんじゃないの?」
「え、そこも知っているの?」
「まぁね。んで、村長が変わった今、目的は無くなった。君達はこれからもダンジョン攻略を続けるつもりなの?」
アマリアが視線をアルカ達に向けて質問している。
俺も二人を見ると、めっちゃ焦っているのだけはひとまずわかったわ。
あれは、早く答えないとと思っているな。
顔を見合わせ口をパクパク動かしている。
落ち着け落ち着け。
「…………慌てなくていい。今は管理者としての会話はしていない。アマリアとして聞いている。ゆっくりでいいし、言葉足らずでも理解出来るようにする。だから、ゆっくり話してみて」
声質も落ち着く感じで、話し方もゆったり。言葉も相手を安心させるものを選択している。
こういう姿を見ると、本当に大人なんだよなぁ。
俺より年上なんだもんな、見た目餓鬼なのに。
「え、えっと…………。確かに、俺の目的はこの村の改変だったけど、カガミヤがこんな俺達でも仲間になっていいと言うのなら、力になりたい!!」
「わ、私も力になりたいです。この村を助けてくれたし、お礼が出来るなら何でもやりたい!!」
輝かしい、曇りのない瞳。
……………………純粋って、怖い。
でも、ありがたい。でも、怖い。
「良かったじゃん。君達三人ならいい所まで行けそうだね」
「……そうだな。まぁ、三人というか、四人だな」
「他に誰かいるの?」
「うん、出てこい、スピリト」
名前を呼ぶと、静かに顔の近くに姿を現した。
俺の髪に隠れるなよぉ、人見知りだったのか?
「…………精霊持ち?」
お、初めてアマリアが固まった。
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