第31話 本人をよそに話を進めないでください

「僕はこの世界を仕切っている管理者であるうちの一人。主にギルドの管理をしている、アマリア。ギルド登録は必ず僕に知らせる事。ダンジョンで命を落とした時も同様、ギルドの事で何かあれば必ず僕に報告が義務、お約束、だよ」


 床に下ろすと、腕を組み偉そうに説明をしてくれたアマリア。

 まさか、管理者の一人だったなんて……。


 この少年が本当に噂のようなことをしているのか?

 いや、そもそも少年という年齢なのか?


「なるほど。んで、君はいくつなの?」

「それは何を聞いているの? 魔力量?」

「年齢」

「年齢…………あー」


 え、指折り数え始めた?

 やっぱり、結構な年齢なのか。


 いくつだ? 

 まさか、三桁越えとかする感じか?


「…………見た目年齢的には、三十八かな」

「何その言い方。それに。見た目年齢は普通に餓鬼だぞ」


 今のお前の年齢は小学生だぞ、三十八の訳ないだろう。


「今の姿が本来の姿じゃないからね」

「偽っているって事か?」

「子供の姿の方が色々話しやすいでしょ?」

「はいはい」


 いやぁ、なんか、もっとすごい年齢を想像していたから、呆気に取られてしまったよ。

 三十八歳ねぇ~、三桁か四桁くらいが来いよ。


「まぁ、年齢に関してはどうでもいいわ。それより、色々聞きたい事があるんだが、いいか?」

「別にいいけど……」


 ん? アマリアが何故か周りを見て顎に手を当ててしまった。

 何を考えているんだ? 


 同じく周りを見回してみると、あれ。何となく、視線が集まってる?

 耳打ちしている人までいるし、なんだろう。

 

「…………あ」


 そういえば、管理者ってこの世界では有名人なんだっけ。

 みんなの恐怖の対象で、誰でも知っている存在。


 目立たない訳がなかった。


「…………目立たない場所無いの?」

「ある」

「そこに行こう」

「わかった」


 アマリアに聞くと、簡単に答えてくれてすぐに歩き出した。

 良かった、これでこの煩わしい視線から開放される。


 アマリアの後ろをついていき、外を歩いていると、どんどん見覚えのある景色に移り変わる。


 村の奥へいき、寂れた場所に。目の前には、ポツンと経っている小屋。

 この小屋は、前の村長が住んでいた小屋で、今はヤンキー二人の住処となっていたはず。


 え、今は駄目じゃないか? 

 だって、ここにはもう意気消沈しているヤンキー二人が…………。


 遠慮なくアマリアがドアを開いてしまった。

 中には――――あれ、誰もいない?


「ヤンキー二人が、いない?」

「あの二人の事なら気にしなくていいよ。僕が回収した」

「え、回収?」

「管理者としてではないよ。僕自身が動いての事。今は、違う所を寝床にしている」


 へぇ、そうなんだ。


 …………管理者。噂通りだったら危険なんだろうけど、目の前にいるアマリアはどうしても危険人物とは思えない。


 纏っている空気も、周りの人と変わらないし、普通。

 警戒しなければならない人物には思えないな。


「適当に座っていいよ」

「わかった」


 アマリアは村長が座っていた部屋の中心に座る。

 俺も絨毯がある所に座りたいから隣に。


 アルカとリヒトは遠慮気味に部屋の隅に腰を下ろした。

 元受付嬢とは、ここに向かう前にもうわかれている。


「それで、何が知りたいんだっけ」

「まず、やっぱり気になるからもう一度聞かせてほしいんだ、おめぇの見た目。それは魔法? それとも元々成長しない体とか?」

「魔法だよ」


 やっぱり魔法か。

 それ以外考えられないけど。


「逆に僕から質問。答えるばかりではこちらにメリットがないからね」

「あ、はい」


 そこはちゃっかりしてんなぁ。

 質問は別にいいが、答えられることはないと思うぞ。


「何が知りたいんだ?」

「君の魔力は今、どうやって抑えられているの?」

「わからん」


 やっぱり、答えられない質問だった。


 アマリアから呆れた目――いや、違う。

 なんだ、こいつの目、気持ち悪い。


 蛇のようなねちっこい視線、まるで俺を見定めているような感じで鳥肌が立つ。


 くっそ、早くここから逃げ出したい。


『――――ここからは私が説明します』

「うおっ!? お、おう。ま、かせた?」


 視線から逃げるように目を逸らしていると、アビリティが突然出てきた。

 ある意味、助かったな。ねちっこい視線が、俺から逸れた。


「…………君は?」

『私は前主によって命令され、チサト様を主に従える事となりましたアビリティです」

「前主はもしかして、今封印されている人かな」

『はい』

「…………そう」


 ん? 今、アマリア、微かにだけど、動揺しなかったか?

 肩がピクッと動いたような気がしたんだけど、気のせい?


『…………なにか』

「いや、ちょっと驚いただけ。それより、こっちには話すアビリティの情報なんて入ってきていないんだけど?」

『貴方は、私について報告しますか?』

「した方がいいんだけど」

『やめていただけると嬉しいです』

「…………わかった。今回だけは目を瞑ろう」

『ありがとうございます』


 アビリティとアマリアがなんか話しているけど、俺、話に入れない。

 …………当の本人、置いてけぼりで話を進めないでください。

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