第29話 いきなりのクライマックスに思考が追い付きません
出してきたのは、少年より大きなマウスピース…………?
いや、あんなドデカイマウスピースがあってたまるか。
あれは、そうかあれだ。
Sランクのワイバーン用のマウスピースだ。
おいおい、俺、そんな大きくなくてもいいぞ。
もう少し小さいのを求む。
「では、これに――……」
「あ、無理です」
「魔力を――え?」
咄嗟に拒否ると、アマリアはポカンと目を丸くし俺を見てきた。
なに驚いてやがる。
さすがにこれに息を吹きかけるなんて無理だって。有名なスポーツ選手でもこれは無理だろ。
これでどうやってクリアするんだよ。
顔を突っ込む事すら出来そうな程の大きさなんだが?
「えっと。これに魔力を注ぎ込んでほしいんだけど…………。なんで出来ないの?」
「君よりでかいマウスピースだよ? 子供より大きいマウスピース。これに息を吹きかける試験とかマジで不可能なんですが」
「なに言ってんの?」
ん? あれ? 聞こえなかったのか?
「だから、君より大きな――……」
「それは聞こえてる。そうじゃなくて、息を吹きかけるって、何を言ってるのって聞いているの」
え、違うの?
「え、だってこれ、肺活量計る機械なんじゃないの?」
「君は何しにここに来たの?」
「ギルドに登録し、金を貰う為」
「そこまで聞いていないけど。まぁ、それを知ってくれているのなら良かった。なら、ここで肺活量を計る訳ないという思考も一緒に働いてほしいんだけど」
「肺活量で魔力を計るんじゃないの?」
「違う」
「え?」
子供に呆れられた大人って、なんか悲しいんだけど。
でも、ならどうやってそれで魔力を計るの?
「この、僕より大きなマウスピース部分に、君の属性基本魔法を送り込むの。そうすれば後ろにある鍵が反応し、扉が開かれる」
「あー、なる程。そういう事か」
だからそんなに大きいのか。やっと納得したわ。
「これに魔力を注ぎ込めばいいんだな」
「そう」
「なら――……」
今すぐ注ぎ込み終わらせようと思った瞬間、アマリアが焦るように止めてきた。なんだよ。
「待ってよ。まだ電源入れてないんだから始めようとしないで、壊れる」
「あ、普通にごめん」
「別に、壊れなかったからいい」
終わりよければ全てよしタイプの子供か?
それはそれでこれから生きにくそうだな。
結構、過程を気にする大人とか沢山居るぞ。
「準備が整ったよ。そっちの準備も大丈夫だよね」
「おう」
「なら、電源を入れる。一応説明だけど、後ろにある扉。上の方に電球があるのがわかると思うけど、それが全部緑に光れば終わり。君が諦めるまで続けていいよ。もし駄目だった場合、次の受付は一年後。だから、すぐに諦めないで力の限り頑張って」
「了解」
「それじゃ、電源を入れた後、僕の方を絶対に見てね」
「お、おう…………」
何でだよ。まぁいいけど。
アマリアが機械に手を伸ばし、スイッチを入れた瞬間――……
────ブィィィイイイイイイ
!? さっきと同じ音!!
機械音以外何も聞こえねぇぇぇ!!
「…………あ?」
俺を見ているアマリアと目が合う。
右手を顔近くまで上げ、人差し指を立てている。
アマリアの口が動くと、立てる指も増える。
これは、カウントダウンか? このうるせえ中でやれという事かよ。
「どうぞ」というように手を添えてきやがった!
くそ、わかったよ。
早く終わらせて、こんな地獄から脱出してやる!!
「っ、
俺の全力魔力を受け取れぇぇぇぇぇええええええ!!!!
――――――――ゴン!!
「…………え?」
「……………………へ?」
あ、後ろから何かが壊れたような音に気を取られ、魔力を注ぐのをやめちまった。
いや、それより、今の音はなんだ?
何かが壊れるような音にも聞こえたし、破裂音のようにも聞こえた。
後ろを振り向くと──え?
「え、なんで扉が壊れてんの?」
なんか、扉が煙を出して壊れているんだけど?
外にいる元受付嬢が驚いた顔で扉を凝視。
うん、そんな顔になるよね、俺も同じ顔しているような気がするよ。
「えっと、これは?」
説明役のアマリアを見るけど、それより見たくない物が…………。
煙を出しているのは扉だけではなく、魔力を注ぎ込んだ機械からも煙。
一体、何が起きたの?
「ぼ、僕の…………」
やべ、子供が泣きそう。
おもちゃを求めて手を伸ばしているような光景。
や、やばい……。
「――――って、近づくのはあぶないぞ!!」
アマリアが手を伸ばしているけど、機械から煙と共に火花。これは、爆発するぞ!!
声をかけるが聞こえていない、これだと爆発に巻き込まれる!!
「ちっ!!」
走り、泣きそうな
刹那――……。
ドカー-----ン!!!!!!
「どわっ!!!!」
背後からの爆風により、俺とアマリアは外に投げ飛ばされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます