第27話 やっと報酬をもらえると思ったらまさかの最終難関が待ち受けていた

 ギルドに戻ると、受付嬢は真剣な表情で手紙を見ていた。


「――――あっ」


 おっ、帰ってきた俺達に気づいたらしい。


「めっちゃ真剣に見ていたらしいが、何か目ぼしい物でも書いてあったのか」

「まぁ、はい。村長になるために必要なスキルや知識は教えていただけるみたいです。他にも優遇があり、悪く無い条件だなと思ってしまいました」


 条件が悪く無いのは確かにいいな。

 報酬はいくらなんだろうか、村長となるといくらもらえるんだろうか。


「ちょっと見せてくれねぇか?」

「あ、はい」


 受付嬢から手紙を受け取り中を読んでみると……。


 村長になる為のスキルや知識は、他の村の村長が教えてくれるみたいだな。そのためにもう手を回している。

 報酬もたんまりもらえるみたい、羨ましい。


 ちらっと受付嬢を見てみるが、特に表情は変わらない。

 なんか、変、だな。


「……なぁ」

「はい」

「なんでそんなに冷静でいられるんだ? 普通に顔を青くすると思っていたぞ」


 俺が少し問い詰めただけであんなに怯えていたこいつが、村長になるという事をここまで冷静に受け止められるなんておかしい。


「あ、いえ。私、前村長に色々教えていただいていたのです。次の村長は私だと言われていたので……」

「え? なんで?」

「私が前村長の親戚だからかと思います。ですが、私はまだ村をまとめられるほどの技量はなかったため、断っていたのです。それにより、あんな奴が村長になってしまいましたが…………」


 ”あんな奴”呼ばわり……。


 そういうって事は、地盤は出来ているのか? 

 こいつを村長にするように言った奴は、知っていたのだろうか。


「これは過大評価だとはわかっていますし、これから大変なのもわかっています。ですが、あんな奴が村長を出来るのなら、私も頑張ればできます! いえ、やります! もう、何も行動を起こさないで諦めるのはやめましたので!」


 あ、拳を作り気合を入れている。

 これなら心配はないな、肩の荷が下りた感じだ。


 俺のやるべきことは、ここで終わり。

 長かったぜぇ~。


「あ、そうだ。私の最後の仕事をしなければなりません」

「なんだ?」

「貴方達に報酬をお渡しします」

「喜んで!!」


 ここで俺が悩んでいても仕方がないし、ちゃっちゃともらえるもんはもらおうか!!!


 ……………………アルカとリヒトからの冷たい目線など、気にしない。


 ・

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 ・

 ・


 報酬を貰う為、俺は今人込みを歩いている。


 くそ、報酬が待っているとはいえ、この人込み、キッツいなぁ。

 人込みは苦手なんだよ、何度言えばわかるんだ。


 重い足取りで進んでいると、リヒトが顔を覗き込んできた。


「あの、カガミヤさん、本当に大丈夫ですか?」

「お前には今の俺が大丈夫に映るのか? お前の目は節穴か? 眼科に行く事をお勧めするよ」

「…………心配しただけなのに」

「心配するなら金をくれ」


 はぁ、金さえもらえれば少しは回復するというのに……。


「冗談を口にはしていますが、顔色が本当に悪いですよ? どこかで休みますか?」

「……………………あ、マジで心配してる系?」

「え、当たり前じゃないですか」


 そうだ、こいつはそういう奴だった。

 本気で人の心配をする優しい奴だったわ。


「あ、そう。…………大丈夫だから、安心しろ」

「でも…………」

「さっきのは冗談だから。ほら、前の二人に置いて行かれるぞ」


 リヒトが心配をしている間に、前を歩いていた二人が俺達の歩みなど気にせずスタスタ進んでいる。


 あいつらに人の心はないんか?


「仮にはぐれてしまっても、連絡とる手段はあるので大丈夫ですよ」

「そういう問題じゃねぇだろ」

「カガミヤさんは無理せず、自分のペースで歩いてください。私が支えますので!!!」

「…………うん、ありがとう。でも、手を握る必要はある?」


 なんかわからんが、さりげなく手を握られている俺。


 これがデートとかだったらキュンとするのだろうか。

 俺にはそんな感情芽生えなかったが、枯れている訳じゃないよな……。


「あ、ありますよ!! もしカガミヤさんが躓いてしまったら、私が全力で支えるんですから」

「その心配は必要ないと思うけど、まぁいいや」


 こんなに心配症だったのかぁ。

 まぁ、満足そうな顔を浮かべながら歩いているし、特にいいか。


 前を向き直すと、アルカと目が合った。なんだ?


「どうしたの?」

「いや、なんでもない」


 ん? 聞いたら顔を逸らされた。


 …………もしかして、アルカってリヒトが好きなのか? 

 俺といるのが面白くないとでも思っているのか。


 おい、恋愛系はマジで巻き込まれたくないんだが…………。


 昔、ストーカーやストーカーやストーカーの被害にあったりしてマジで大変だったんだよ。


 身に覚えがないのに、”俺の彼女に手を出しやがって”とか言われて殴られそうにもなったな。

 全力で逃亡からの警察に助けを求めて事なきを得たが、マジで死ぬかと思った。


「…………俺を巻き込まないでくれ」

「ん?」

「早く行こうか」

「う、うん」


 って、手を握っている現状、やばくないか?

 俺、変な事に巻きこまれたりしないよな……?


「はぁぁぁぁぁああああ…………」


 ・

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 ・

 ・


「あの二人は付き合っているのでしょうか」

「いや、まだ付き合ってはいないぞ」

「”まだ”とは」

「リヒトは好きみたいだからな、応援してやろうと思って」

「いいのですか? だって、あの人とはまだ出会って日が浅いでしょう?」

「カガミヤなら大丈夫。俺、人を見る目には自信があるからな!! あいつはリヒトを大事にしてくれる」

「今までの言動を聞いていると信じがたいのですが…………」

「いいんだよ。言動が正義だったとしても、行動が伴っていなかったら意味はない。なら、言動がクズでも行動に芯があり、言った事を必ずやってくれる。そういう人の方が信じられないか?」


 目を輝かせ、嬉しそうに元受付嬢に顔を向けるアルカ。

 最初は戸惑っていた元受付嬢だったが、すぐに優しい顔になり、口元に笑みを浮かべた。 


「そうですね」


 ※


「辿り着きましたよ、ここです」

「ここって…………」


 目の前には木製の建物。

 平屋で、三段の階段を上った先には両開きの扉。ここはなんの建物だ?


「ここは、簡単に説明しますと。ギルド所属の人達が通う、報酬を受け取れる場所です」

「よし、早く中に入るぞ」

「一瞬にして顔色が良くなった……。カガミヤ、お前本当に現金な奴だな」

「黙れ」


 アルカが呆れているが、俺は本当に頑張っただろ。


 普通ならダンジョンをクリアするだけでもらえるはずの報酬を、なぜか村長を懲らしめるところから始まったのだから、喜んでもいいだろ。


「では、中に入りましょう。会員証を出してください」

「…………え?」

「え?」


 …………え? 会員証? 俺、そんなの持っていないんだが!?

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