プルウィア

管理者の存在

第26話 マジで勘弁してくれ……。俺を巻き込むな

「おい、ヤンキー兄弟。何をしているんだ」


 問いかけても、二人は何も答えない。

 顔すら上げないか……。声が聞こえていないんだろうな。


 周りを見ても、昨日と特に変わらない。

 何かあったのかと予想したくても、手がかりすらないから不可能。


「…………ちっ、おい、本当に何があったんだ、答えろ!」


 一人のヤンキーの肩を揺さぶると、やっと顔をあげた。

 これは、どっちだ? 冷静の方か、弟か。出来れば冷静ヤンキーの方であってくれ。


 そんな事を考えていると、やっと俺が目に映ったらしく、ヤンキーは微かに目を開いた。


「お前らか…………」

「俺達だ。って、そんなことはどうでもいい。それより、お前らどうした。何があった」

「…………」


 沈黙、か……。質問しても答えない。

 ちっ、これでは話が何も進まない。どうすればいいんだよ………。


『スキル、透視を使用しますか』

「使用してどうするんだよ、アビリティ」


 呼んでもいないのに、アビリティはそんな事を聞いて来た。


 俺が透視というスキルを持っているのは知っている。

 だが、今それを使ったところで意味なんてないと思うのだが?


『スキル、透視を使えば、相手の心情を読むことが出来ます。ですが、長時間は体に影響を与えるため、短時間での使用をお勧めします』


 なるほどな。

 勝手に人の心情は読みたくないが、今回ばかりは仕方がない。


「頼む」

『了解。スキル、透視を発動します』


 アビリティが言うと、ヤンキーの周りに白い文字が浮上。

 えっと、なになに?



『なんで、管理者が現れたんだ。村長はどこに連れ去られてしまった。いつかは戻ってきてくれるのだろうか。俺達はこれから、どうすればいいんだ』



 っ、管理者? 村長は管理者に連れ去られたという事か?

 透視を解除し、アルカ達に情報共有。二人ともさすがに驚いていた。


「管理者、なんで…………」


 アルカが管理者の名前を出した瞬間、何故か体を大きく震わせ始めた。

 なんでそんなに怯えているんだ? 管理者とは一体何だ。


「そういえば、カガミヤさんは管理者の恐ろしさ、知らないんでしたね」

「おう、知らない。管理者とは一体なんだ」


 リヒトも怯えてはいるが、冷静に教えてくれる。


「管理者とは、今私達が生きているこの世界を管理している人達の事です。その人達は、何かあれば人を問答無用で捕まえ、脱獄不可能な牢屋へと連れて行ってしまうのです。そこでは休みなく働かされ、吐いても、倒れても。ずっと鞭で叩かれ働かされるみたいです。そして、もう体が動かなくなれば、容赦なく殺す。あそこは生き地獄。先がなく、捕まれば最後。魔法で抵抗しようとしても意味はなく、全て無駄。精霊すらも怯え、誰も近づかないらしいです」


 うわぁ、なんだよそれ。そんなこと、本当にしているのか?

 つーか、出来る人がいるのか?


「…………なぁ、ヤンキー。今日、受付嬢に通達があったんだ。村長になるようにと、代わりの受付嬢はもう準備されているらしい。これに関して、なにかあるか?」


 …………何も答えない。

 この二人は、もう駄目、なんだろうな。


「はぁ……、行くぞアルカ、リヒト」

「え、いいのか?」

「仕方がないだろうが、何を問いかけても意味がないんだから」


 こういうことは、時間が経てば少しだけでも回復する。

 今は気が動転してしまい、人の声に耳を傾ける余裕がないのだろう。


 ひとまず、今はいきなり通達を受けた受付嬢の方も気がかりだし、見に行こう。



 ――――なんだろうか。


 今回の出来事がスイッチとなり、事件に巻き込まれるような。

 今までとは比にならないくらいに大きな何かが巻き起こるような、嫌な予感が胸を占める。


 どうか、この予感は、外れますように――………

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