第19話 ブラック企業を経営する奴は寂れた場所で済むのがお似合いだ

「これが、この村に隠された真相だ」

「なるほどな」


 胸糞わりぃ話だな、吐き気がしてきた。


「俺は絶対にダンジョンを攻略して、この村を改変したいんだ」

「改変自体は攻略しなくても出来そうだけどな」

「え? それはどうやって…………」

「村長を殺そう」

「絶対駄目だからな!? 何言ってんの!?」


 当たり前のように言うと、何故かアルカが止めて来た。

 現状、俺より怒りが募っているのはアルカのはずなのに、なぜ止める。


 今の俺には、ブラック企業という言葉が過っている。

 ブラック企業を作った奴らは全員滅べばいい。


 俺は危険察知能力が元の世界でも備わっていたから避けられ、トラウマとかは植え付けられていないけど。


 ただ、どんなに働いても、残業しても給料は少ないと耳にした事があるから、俺にとっては許されない敵。だから、殺してもいいと判断する。


 まぁ、後始末とかがめんどくさいから、マジでは殺さんけどな。


「ひとまず、順番をしっかりとしなければ相手の言葉に負ける。権力はどんな言葉、魔法よりも強いからな。どんな言葉をこっちが言ったところで、相手が否定すればそれが適用される。魔法を繰り出せば、こっちが消される。だから、まず話を聞いてもらい、駄目なら――――まぁ、何とかなるだろ」


 すべてが作戦通りにはいかんだろうし、後はその場で何とか考えようか。


 ※


 村の奥の奥へと向かうと、どんどん人はいなくなる。

 建物も少なくなっていき、寂しい感じ。

 地面が乾き、枯れ木が立っていた。


「活気があると見せつけていた村の奥は、寂れてんな」


 ギルドから出てもう二十分以上経っている。

 まだ建物すら見えてこないのは、さすがに遠くないか? 疲れてきたんだが……。


「まだ着かないのか?」

「あともう少し、ほら。見えてきただろ」


 アルカの指さす方を見ると、確かに建物の屋根っぽいのが見えてきた。

 何もない所にポツンと建っているからわかりやすい。


 もう少し近づくと、建物の全体が見えてくる。

 けど、まぁ。村長の家だな、うん。


 木製の大きな家。屋根は藁ででき、出入り口に進む道には階段。


 なんか、ポツンと建っているから変な感じ。

 嫌われているのがめっちゃわかっちゃうじゃん。


「本当にここなのか?」

「間違いないぞ。前村長がここで何度か人を集めて宴会とかしていたんだ。建物は何もせず、そのまま引き継いだはず」


 へぇ、そうなのか。

 でも、おかしくないか?


「前村長は人気者だったんじゃないのか? こんな寂れた場所で生活?」

「普段は静かに過ごしたい人だったらしく、自らここに建てたんだと聞いた事がある」

「ふーん」


 まぁ、それは今回の件には関係ないからいいわ。


「今の村長は、こんな寂れた所気に入らんとほざいているらしいけど」

「だろーな。お前の話しか聞いていないが、プライドがオベリスクなんだと俺的の見解。こんな所で収まらんだろ」

「よくわからんが、多分合っていると思うぞ?」

「よくわかっとらんのに返答しようとすな」


 無事にたどり着いたみたいだし、そこは安心だ。

 中に人はいるんだろうか、外出中とかじゃねぇよな?


 くっそ、アポだけでも取ればよかったな。


「んじゃ、行くか」

「あ、お、おう!」


 アルカが隣で元気に返事をしたのを確認。迷いはなさそうだし、問題ないな。

 よし、早く報酬をもらうぞ。


 意気揚々と足を踏み出し、建物にちかづっ――……



 ――――カチッ



 …………ん? カチッ??

 一歩踏み出した足元から、なにやら怪しい音。


「あれ、なにこれ」


 下を恐る恐る見ると、俺が踏んでいる地面に、さっきまではなかったはずの魔法陣が浮き出ていた。


 円の中に丸太のような絵が描かれている魔法陣、これは?


 疑問に思っていると、アルカが目を見開き大きな声を上げた。


「っ、これは!!!」

「え、何かわかるのか?」

「トラップ魔法だ!!!」


 アルカの叫び声と共に、俺達を囲うように大量の丸太が迫ってきっ――……

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