第18話 隠された村の真相
俺がまだ餓鬼の時、兄と両親が沢山遊んでくれたんだ。
兄は体が弱くて、ベットで横になっている事が多かった。
それでも俺に心配かけないように優しく笑ってくれて、俺はその笑顔が好きだった。
母親とは一緒に買い物に行ったり、父親とは仕事の手伝いをして。凄く楽しくて、幸せだったんだ。
その時はまだ前村長がいて、今みたいに歪んではいなかったんだよ。
前村長は誰にでも笑いかけ、優しく接していた。
俺も何度か声をかけてもらい、話した事がある。
愛嬌があり、大きく、しっかりとした手で頭を撫でられるの好きだったんだ。
村のみんなも村長が大好きで、村長のために活気のある村へと、みんなで力を合わせここまで大きくさせたんだ。でも、やっぱり幸せは長く続かない。
前村長が病によって倒れてしまった。
いい歳だったのもあり、それはもうあっさりと逝ってしまったんだ。
その時は村のみんなが悲しみ、涙で溢れていた。
前村長の通夜の時、村の人達で村長について話していた。
楽しい思い出話などに花を咲かせ、俺の両親や兄も。
惜しむように周りの人と前村長について話している。そんな光景を俺は、外から見ていた。
深く関わっていなかったにしろ、優しく笑いかけてくれた人がいないとなると、心に大きな穴が空いたような感覚があった。
心臓が締め付けられるような感覚があり苦しくもあった。
その時、通夜に使っていた前村長の家の外から、大きな足音が聞こえ始め周りの人達は口を止める。
そこには、現村長がニマニマと。
気持ちの悪い笑顔を浮かべ立っていたんだ。
『やっと死んだか。これで、この村は俺のもんだ』
当時の俺は、その言葉の意味を理解出来なかった。
それからが地獄の始まり。両親は無理やり外に駆り出され、朝から晩まで働かされ。体が弱い兄は家で出来る仕事を無理やり頼まれ、胸を押さえながらも毎日やっていたんだ。
やらなくてもいいと思っていたが、やらなければお金はもらえず、生活が出来なくなると言われたらしく何も言えない。
まだ子供の俺も外で雑用をやらされた。皿洗いや村の掃除。
周りを見てみると、村の人達も同じ目に合わされているらしく、苦痛の表情を浮かべていたんだ。
でも、その表情を浮かべる事さえ許されず、笑顔で過ごさなければ減給。
何かを言えばただ働き。
だから、誰も何も言えず、ただ心のない笑顔だけが満ち溢れた村になってしまった。
そんな日常が続く訳もなく、兄は心労で病気が悪化。
動けなくなった兄を働かせることはせず、給料の半額分は支給されていた。
だが、今までの無茶が体に蓄積されており、瞬く間に亡くなってしまった。
両親は兄が死んでしまった事に心が病み、自殺。
残された俺はどうする事も出来ず、両親と同じ事をすればまた家族に会う事が出来るんじゃないかと思い、親の首に巻かれているロープを握った。
その時、間一髪で村の人に見つかり、止められて俺だけが生き残ってしまった。
何をすればいいのかわからないまま生活していると、ギルドの話を聞いたんだ。
この村にもギルドがあり、ダンジョン攻略し続ければ上の立場に立つ事ができると耳にした。
もしかしたら村を改変できると思い、俺は入団を決意したんだ。
ギルドでリヒトと出会い、二人でランク上げとかを頑張ったんだが、お互いに不慣れな事が多すぎてうまくいかなかった。
でも、ここで諦める訳にはいかないと。お互い支え合い、頑張れた。
村長と同じ立場に立つ事が出来たら、話くらいは聞いてくれると信じていたからだ。だが、現実はそう甘くない。
村を見回っている村長が俺を見つけて、声をかけてきたんだ。
『お前は、あのくそも役に立たなかった親と、体が弱くすぐに力尽きた兄の弟か。そんな甘ちゃんな奴らに囲まれ、育った奴がギルドに所属出来たとはなぁ。まぁいい、今後も俺の為に頑張ってくれや。俺の名前を世に知らしめる手伝いをしてもらおう」
肩に手を置かれた時、嫌悪と憎悪。体が勝手に動き、何も考える事なく拳を握る。
次の瞬間に村長は、頬を腫らし鼻血を垂らしながら地面で気絶していた。
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