初めての報酬
第12話 質問されて答えられねぇ奴には質問を続けてやるのが効果的
リヒトの案内の元、無事にギルドへとたどり着いた。
そこには、アルカが一つの建物前で手を振っている。
のんきな奴。まったく、俺の苦労も知らんで。
今、頭痛が走っているんだよ、眩暈までしてきた気持ち悪い。
「お、遅いぞ!!! 何やってたんだ?」
「人込みに慣れていない俺を置いて行って、一人でギルドに辿り着いたアルカ君こんにちは」
「棘のある言い方しないでくれよ…………」
事実だろ、俺達を置いていきやがって。
「あの、大丈夫ですか?」
「ここは大丈夫と言いたいが無理だ、気持悪い。肩かしてくれ」
「あ、どどどどどどうぞ!!! あ、あの回復魔法しますか?」
え、回復? 頭痛を治す事って出来るの?
それならお願いしたんだけど……。
「あ、私の回復魔法、外傷にしか効果がなかったんでした……」
「……無理すんな」
「役立たずですいません…………」
落ち込んでいるリヒトの肩を借りる事は出来たが、ちっせぇから腰が痛くなりそう。眩暈でふらつくよりはましだけど。
つーか、アルカからの視線が気になる。
なんだよ、言いたい事があるんならはっきり言えや。
「何か、距離近くねぇか? それに、リヒト、顔赤くね?」
「え、なに。人の心配しておいて自分は熱あんの?」
「え?! そ、そそそそそそそんな事ないよ大丈夫!!!! 本当に大丈夫!!」
待て待て、キーーーーーーーーンって、嫌な音が頭に響くから耳元で叫ばないでくれ。
頭がガチで痛いんだって……。
「は、早く報酬をもらうぞ。それで一秒でも早く人のいない所に移動する。俺は本当にここに居たくない、人なんて嫌いだ、滅べばいい」
「お、おう…………」
改めてギルドを見てみる。
周りに建てられている建物より大きく高い木製の建物。
両開きの扉の上には、『ギルド』と簡潔に書かれている看板。
こんなに簡潔なのか。”なになにのギルド”とかじゃないのか。
アルカを先頭に、ギルドの中に入る。
中は思っていたより人は居るけど、指で数えられる程度だから外よりは幾分かマシ。
「へぇ、結構いい所だな」
中は木製の建物なだけあって温かみがあり、休憩するのにも適している。
カウンターにはウエイターみたいな服を着用している女性、目の前にいる冒険者と笑顔で接しているみたい。
カウンターがあるという事は、この広場が受付なんだろうな。
隣にも部屋が続いているみたいで、覗いてみるとテーブルや椅子が置かれていた。
おそらく、あそこは冒険者の休憩所なんだろう。温かみのある空間だ。
周りを見回している俺など気にせず、アルカは笑顔でカウンターに向かって行った。
「お疲れさまでした」と、受付嬢が先ほどまで話していた冒険者に手を振り送り出したところを見計らうように、アルカが笑顔で声をかけた。
「おーい、"
アルカの言葉に女性が目を開き、驚きの顔を浮かべ…………??
何でそんなに驚くの?
ギルドのスタッフさんって、ダンジョンの手配や報酬のやり取りをやるのが主な仕事だろ。
…………なーんか怪しいな。
少々傍観させてもらおうか、面白い事になりそう。
「え、貴方達が? 本当ですか? 嘘ではないですか? だって、貴方達が行ったダンジョンって…………」
「ん? あ、そうだ。今回のダンジョン、俺達よりランクの高いモンスターが現れたぞ。間違いが多すぎだろ」
「え、いや、あの……。な、なにが現れたんですか?」
「ワイバーンだ。確かSランクだよな」
「え、は、はい」
「もう何度も間違えられているんだけど、さすがに気を付けてくれよ。死んでもおかしくねぇんだぞ」
「は、はい。気を付けます」
「よし。ひとまず、報酬をくれ。今回はクリアしたんだ、もらう権利くらいあるだろ」
…………不自然だな、あの受付嬢。アルカは全く疑ってないが……。
人を疑うことを知らんのか?
今回はあいつの態度によって面白い事になっているけど。
このまま受付嬢の困った場面を見るのも良いが、今は何より報酬が欲しい。
アルカ一人だと上手くかわされそうだし、俺も行くか。体調も回復してきたし。
リヒトから離れ、アルカの隣まで移動すると、受付嬢が見あげてきた。
ここは、表情筋をフル活用した方が円滑に話が進むだろう。
よしっ、笑顔を意識して問いただしてやる。
「すいません、アルカの言う通りダンジョンを攻略させていただきました。報酬をいただけると嬉しいのですが、なぜすぐに渡してくれないのでしょうか」
これが営業スマイルだ。
アルカからの視線が痛いが気にしない。
「い、いや。渡そうとしていない訳ではないんですけど…………」
「なら、渡せない理由があるということでしょうか?」
「そういう訳では…………」
「では、早く報酬を出してください。命を懸け、自身達よりランクの高いダンジョンを攻略した俺達に報酬。さぁ、早く」
「それは…………」
んー、表情筋疲れたなぁ。
もう、早く話を終わらせるか。
「…………はぁ。なんでおめぇが答えられねぇか、俺が教えてやるよ。お前は、こいつらがダンジョンをクリアするなんて思っていなかった。BランクのこいつらにSランクのダンジョンに向かわせたのもわざと。ミスの訳が無い。んなミスが続いていたら、お前はここでは働けないだろう。そんでもって、お前が報酬を直ぐに出さない理由。――――無いんだろ、こいつらに渡す報酬が。だから、準備も出来ねぇし持ってくる事も出来ない。当然だなぁ、無いものはどう足掻いたところで、ないんだからよぉ」
俺の言葉に、女は顔を真っ青にし下を向く。
全て当たっていたらしいな。だが、こいつ一人でダンジョンの管理は無理なはず。
数多くのダンジョンがこの世界にはあるはずだし、他の人を相手にもする。
必ず上司や、関わりのある者が別にいるはずだ。
こいつの性格や態度、立場上命令されて動いている可能性が高いな。
「詳しく聞かせてもらおうか」
俯かせている女性の顎に手を伸ばし、無理やり上げさせる。
顔を近づけ、情報を要求。だけど、顔を青くし体を震えさせるだけで何も言ってはくれない。
歯をカチカチと鳴らし、なにかに怯えている。
俺と目すら合わせようとしない。
「なぁ、こいつらを危険な目に合わせて、報酬も与えず。お前は何がしたいわけ。誰かの言いなりになっているのか? お前が主犯か? 答えられないのか? その理由は? 早く、無知な俺に教えてくれよ。俺はこれでも今、怒ってる。早く答えてくれねぇと、何をするかわからんぞ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます