第10話 これが巻き込まれ主人公の慣れの果てか

 はぁぁぁぁぁああ、嫌がっていても仕方がない。

 今は、現状を改めてまとめよう。


 えっと、俺は今、アビリティという説明係と、炎の精霊を手に入れた。

 始終、アルカとリヒトは驚きで口を開け、何も言えず固まっている。


 俺も思考が回らず現在、固まっている。


 何もせず魔法をゲットし、特別なアビリティは前主の命令で俺の元に来た。

 今回のダンジョンの報酬は、なぜか精霊。


 ・・・・・・・・・・・。


 金になるもん寄越せや、金になるもんをよ!!


 泣きたい、ものすごく泣きたい。

 俺は、何のためにワイバーンを命を懸けて倒したんだ、ふざけるな。


 …………誰がなんと言おうと命を懸けたんだ、懸けたんだよ。文句は受け付けない。


 ――――ん? 羽を動かし、俺の顔辺りでパタパタと飛ぶ精霊。

 眉を下げ、不安そうに見てくる。


『あの、ご主人様』

「あ、はい」

『ご迷惑でしょうか』


 …………おい、そんな悲し気な目を向けるな。

 はたき落すぞ、無理だけど。さすがに俺の良心が痛む。


『あ、あの……』

「あぁ、気にしなくていい。ひとまず、なんで俺がご主人様なの?」

『貴方が今いる人達の中で、一番強い魔力をお持ちなので』

「うんうん」

『美味しそうです』

「誰か俺を呪いの精霊から助けてくださいぃぃぃいいいい!!!!」


 俺、食われるの? 

 え、精霊に食われるの? 嘘でしょ? 嫌だ、まだ死にたくない。


『あ、いえ。あの、力を使う時に魔力を頂ければ嬉しいのです』

「普段からはいらないって事?」

『頂ければ嬉しいのですが、そこまで強欲ではありません』


 なんだ、それなら良かった。

 搾り取られると思ったわ。


『体内にある魔力全てを、使う際に頂ければ』

「断る」


 精霊なんてやっぱ要らねえ、売り飛ばしてやる。

 何万になるだろうか、楽しみだな。


「んじゃ、他になさそうならさっさと出て精霊を売るか…………おい」


 いつの間にか俺から離れていた精霊が、先程まで唖然としていた二人に囲まれている。


 めっちゃキャッキャウフフしてるんだけど、女子会?


「かわいいです!! スピリトさん、私はリヒト=ケインといいます。これからよろしくお願いします!!」

「俺はアルカ=フェデリオ。これからよろしくな、スピリト!!!」

『よろしく、お願いします』


 よろしくすな。

 待ておい、なんで俺を差し置いて仲良くしている。


「カガミヤさん!! この子すごくかわいいですよ!!」

「体が少し光ってるんだぜカガミヤ!! すげぇよ、これが精霊なんだな!!」


 めっちゃキラキラした目を向けてくるガキ共。

 そんなことを俺に言ってどうする、適当に共感すればいいのか?


 はぁ、何を言っても無駄だろうし諦めるか。

 魔力を全て吸われないように気を付ければ問題ないだろう。


 あれ、そういえば…………。


「アビリティ。精霊という物は、契約とかそういうもんいらないのか? 魔力とかはどのように俺と繋がるんだ」

『主が卵に触れた際に魔力が注がれ、契約されております』

「つまり、魔力を注いでしまった事により、強制契約されてしまったと。それって、おめぇが触れと言ったからじゃねぇか?」

『…………』


 黙るな、取扱説明リング。

 俺が理解し納得出来るまで教えろ。


 ジィっと見てもこれ以上アビリティは何も話さない。

 これは、だんまりを決め込む気だな。


「もういいわ。ここから出る事は出来るようになったんだよな?」

『はい』

「なら、出る」


 まだ精霊と戯れている二人の頭を掴み、雑談を中断させる。すると、精霊は真っ直ぐ俺の方に移動し、髪を掴んできた。


「ほれほれ、なに残念そうにしてやがる。早くここから出て、ギルドからの報酬をもらうぞ。俺はこいつだけが報酬なんて認めない」

「それもそうだな。ダンジョンから出るか」


 言いながら、アルカが懐から一つの指輪を取り出した。

 この世界の道具は、大体指輪の形しているのか?


 アルカは取り出した指輪に魔力を注ぎ込み、唱えた。


「それじゃ、出るな。”ムーヴ”」


 指輪の石部分がアルカの声と同時に光り出す。

 そのまま俺達を包み込み、視界が真っ白に――……

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